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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第31回   血液型による性格判断
国民的人気の血液型性格判断。A型は几帳面、B型は楽天的、AB型は天才肌…、等々いろいろな診断が大勢の人によって好き勝手になされている。血液型による性格判断は本当に当たっているのであろうか。識者の間では血液型と性格の間に有為な相関関係はないとするのがほぼ共通の結論のようである。ただ、こう書いてしまうとここでこのお話は終わってしまうので、敢えてそれに異を唱えてみたい。
そもそも血液型とは、赤血球の表面にある糖鎖というものの型によって決まる。糖鎖とは、さまざまな糖が鎖状に連なったもので、細胞の表面にあって主に免疫機能をつかさどっている。細胞は、この糖鎖を使って外から入ってきた異物を感知し、この異物を排除するための抗体を形成する。例えば、A型の赤血球には、A型の抗原を持つ糖鎖がくっついており、B型の血液が入ってくると抗体を形成して、血液を凝固させてしまう。だから血液型の違う血液を輸血することはできないのである。
では、なぜこうしたややこしい仕組みができたのか。その原因として、何らかの病原菌が関与したのではないかとの可能性が指摘されている。インフルエンザウイルスにもA香港型だのB型だのといった具合にいくつかの種類がある。そして、これらのウイルスに対して免疫を持つためには、その型にあった抗体を作らなければならない。
同様に、ヒトがまだ類人猿だった頃よりももっと昔に、赤血球に感染する病気が流行し、その病原菌に対抗するため、O型の糖鎖しかなかった赤血球にA型とB型の新たな糖鎖がくっついたのではないかと考えられる。その後、この病原菌が絶滅してしまい、ABOという血液型だけが残ることになったのである。
前置きが長くなったが、ここからが本題である。このABO式の糖鎖は赤血球だけではなく、体のいろいろな器官にも存在しており、特に胃粘膜や十二指腸に多いという。さらに、血液型によって感染症に罹患する確率が微妙に異なるという。O型が他の血液型よりも胃腸疾患に対して弱かったという研究報告もある。仮に血液型によって病気にかかりやすさに差があるとしたら、それが性格に影響することも考えられる。感染症に罹りやすいA型は几帳面で慎重、病気に強いB型は楽天的で社交的、といった類である。
これに対して、識者はあくまで血液型と性格には有為な相関は見られないと主張する。しかし、この「有為」という統計用語が曲者なのである。有為とは、「はっきりとわかる」という意味で、統計的に有為と言えるためには一般的に90パーセント以上という高い相関関係が求められる。大体当たっているという程度ではダメなのである。
人の性格を決定する要素は、血液型以外にも遺伝的要素、外部環境要素などいろいろなものが考えられる。これらの要素の影響度ははるかに大きいため、仮に血液型によって性格に傾向的な特徴が見られたとしても、それを隠してしまう可能性はある。よって、簡単な性格診断テストだけを実施して、血液型との有為な相関関係はないと結論付けてしまうのは早計である。これら血液型以外の要素をすべて排除し、本当に血液型の差だけで性格の違いを調べてみないとはっきりとしたことは言えない。これにはかなりの困難を伴うが、例えば2卵性の双子で血液型が異なるケースの人を対象として性格診断テストをすれば面白い結果が得られるかもしれない。
ただ、何度も言うようだが、人の性格は血液型以外のいろいろな要素で決まってくるものだから、血液型だけで性格判断するのは、いらざる差別を生み出す可能性もある。実際、戦前には就職や軍隊入隊などで血液型による選別が行なわれていた時代もあるという。結局、血液型性格判断はお遊びのレベルが丁度よいのかもしれない。ちなみに、血液型でこれだけ大騒ぎするのは日本人だけだそうである。


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