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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第19回   ブラックホールのなぞ
ブラックホール、天文学や物理学に興味のない人でもこの名前くらいは聞いたことがあるであろう。宇宙にある謎の天体で、近づくものは光でさえも飲み込んでしまう、よって真っ黒に見えるはず、だからブラックホールという名がついた。SF小説や映画ではおなじみの穴である。
ただ、光さえ飲みこんでしまうため、これまでその姿を直接とらえた観測例はなく、周辺で起きている天文現象から間接的にその存在が仮定されているにすぎない。まさに謎の天体なのである。
もしブラックホールが見えるとしたらどのように見えるのであろうか。天文学の図鑑や専門誌では、その姿は台風の姿に似せて描かれていることが多い。中心の黒い穴が台風の目で、その周囲にこれから吸い込まれる物質が渦を巻いている姿は、まさに台風の渦巻きである。ただ、台風と違うところは、中心の穴から上下の垂直方向にジェットと呼ばれる吹き出しが付け足されている点である。
ブラックホールの仕組みを簡単におさらいしておこう。ブラックホールは銀河の中心や、超新星爆発の後に出来るとされている。物質を小さな箱の中にどんどん詰め込んでいくと、その密度はどんどん高くなっていく。実際、ブラックホールの中では地球が角砂糖1個くらいの大きさまで押し縮められる。これだけ小さい入れ物の中にたくさんの物質がぎゅうぎゅうに押し込められると、その密度と重力は無限に大きくなっていき、ブラックホールは光さえも飲み込んでしまうほどに凝縮された天体となる。
ブラックホールの強大な重力にとらわれた物質はもはやブラックホールから逃れられなくなり、ブラックホールの周囲をグルグル回る膠着円盤というレコード盤上の輪を形成し、最後はブラックホールの中に落ち込んでゆく。そして、ブラックホールの中に入りきれなかった物質は、勢いよくブラックホールの上下にジェットとして吹き出される。そのジェットは時には何光年もの長さに及ぶという。
ブラックホールの最も中心には、理論上は特異点という密度無限大の特殊な点が形成される。この特異点においては、針の先よりも何十ケタも小さい1点にすべてのモノが詰め込まれるという、まさに特異な点なのである。ここまでは、すべてこれまでに積み重ねられてきた理論から導き出されたもので、実際にブラックホールの中で何が起きているのかは観測もされていないため、全く分かっていない。
ブラックホールの中に落ち込んだこれだけ大量の物質がどこへ行くのかということについては諸説ある。一つはホワイトホールと呼ばれる、物質を大量に吐き出す穴から外へ出てゆくという考え方である。掃除機の吸い込み口をブラックホールとすると、お尻の方の空気の吐き出し口がホワイトホールということになる。掃除機は、お尻の方からドンドン吸い込んだ空気を吐き出すので詰まることなく空気を吸い込み続ける。ただ、これまでのところそのような大量の物質を吐き出している天文現象は観測されていない。ホワイトホールは我々の住む宇宙とは別の宇宙へとつながっており、吸い込まれたものはその別の宇宙に吐き出されているという見方もあるが、真偽のほどは確かめようもない。
いま一つは、ブラックホールに吸い込まれた物質はエネルギーに変換され徐々に放射されて、ブラックホールは蒸発して消えるという考え方がある。質量がエネルギーに変換されるというのはアインシュタインの有名な方程式E=MC2で明らかにされているため、この考え方には説得性がある。ただ、こちらも実際に蒸発して消えかかっているブラックホールが観測されているわけではないので、やはりその真偽は確かめられていない。
さて、ここで一つ困ったことが起きる。ブラックホールが永久に物質を飲み込み続けるとすると、やがてこの宇宙にある物質はすべて飲み込まれて、この宇宙は真っ暗闇になるのではと心配する向きもあろう。確かに、そうした宇宙の未来を予想する理論もある。闇だけが支配する宇宙、そんな宇宙が遠い将来実現するかもしれない。もちろんその時には人類は誰も生き残ってはいない。ただ、そんな宇宙が来るのは1000億年ほど先のことだとされている。
(ブラックホールについてさらに詳しく知りたい方は、拙著「エクストラ・ディメンション(余剰次元)」を参照してください)


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