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作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第16回   心霊写真のウソホント
夏場になると毎年必ず繰り返しテレビで放送されるのが心霊写真に関する番組である。スタジオのスクリーンに写真を写し、全員で「キャー」と叫んで、というのをよく目にする。ただ、そのほとんどはトリックによるものだと言われており、最近は逆にそうした心霊写真がどうやって撮られたかのタネ明かしをする番組も増えている。
まずは心霊写真について科学的に検証する前に、論理的におかしいと思われる点をいくつか示しておこう。
@心霊写真が霊や怨念によるものだとすれば、長い歴史の中で幾多の戦乱と殺りくが繰り返されてきた京都において、特に心霊写真や心霊現象、心霊スポットが多く見られるはずだが、統計的にそうした突出した傾向は見られていない。
A心霊写真に写る人物は、その大半が長い髪の女性と決まっている。もし霊というものが本当にあるのなら男女比は半々に近くなるはずである。それとも霊界では特別女性の比率が高いのであろうか。またショートカットの幽霊というのもあまり見たことがない。
B写真に写ったとされる霊はどうして服を着ているのか。霊界でも服はあるのだろうか。そもそも霊にファッションは必要なのだろうか。
C心霊写真に写るのは人だけか。犬や猫には霊はないのか。人以外の動物が写った心霊写真はついぞ見たことがない。
以上、心霊写真につき論理的におかしいと思われる例をいくつか列挙してみた。
では、心霊写真はすべて偽物あるいはトリックなのか。この点についてはもう少し科学的検証が必要であろう。一部は、すでにテレビのタネ明かしでも紹介されているかもしれないが、改めて考えてみたい。
まず、写真に写っているということは、それが人に見えるものであるということがある。ところが人の目に見える、いわゆる可視光の範囲は極めて狭い。可視光の範囲はおよそ400〜800ナノメートル(ナノは10億分の1)だが、実際の光の波長は1万分の1ナノメートルから100メートルくらいまでとかなり幅がある。人は、いろいろある光のうちほんの一部しか見ていないことになる。この波長の違いは、光の色の違いとして認識される。つまり波長の長い方が赤、短い方が紫である。
人に見えない光で特に馴染みがあるのは、波長が長い方の赤外線と短い方の紫外線がある。それ以外にももっと波長の長い電波や、もっと波長の短いX線やガンマ線もある。これら人の目に見えない光が、特殊な条件下でカメラにとらえられる可能性は考えられる。実際、天文観測の世界では、可視光以外の光を使って見えない天体を写真に撮るということは日常的に行なわれている。
たとえば、人の体は温かい。温かいということは赤外線を放射している。このことは赤外線カメラで人の体を写せばすぐにわかる。真っ暗闇でも、赤外線カメラは人の体から出る赤外線を感知して、特に衣服の外に出ている顔や手は赤く写る。誰もいないはずの暗闇に人影が写る最も単純な例である。但し、通常のカメラでは赤外線はとらえられないので、心霊写真ができるにはもう少し手の混んだ物理現象が必要となる。
それがエネルギー変換である。エネルギーはしばしば簡単に姿かたちを変える。例えば電灯は電気エネルギーを光と熱のエネルギーに変換したものである。同じように人が持つ熱エネルギーが電気エネルギーや磁気エネルギーに変換されると、それが原因で様々な超常現象が起こり得ないとも限らない。
たかが人肌のぬくもりぐらいでと思われるかもしれない。確かに人が発する熱エネルギーのほとんどは空中に放出されてしまい、人は通常であればそれすら感知できない。ただ、狭い部屋に10人も入ってしばらくいるだけで、部屋の中は蒸すほどに温度が上がる。人の持つエネルギーは室温を上げるほどに大きいのだ。これが、何らかの誘因により、増幅もしくは集積させられて、電気エネルギーに変えられれば思いもよらない発光現象が起きたり、あるいは磁気エネルギーに変えられれば動くはずのない物が動いたりという超常現象が起きるかもしれない。
実際、以前テレビの心霊番組で、墓石などによく使われる花崗岩が磁気の乱れを起こし、それが人の脳に影響して幻覚を生じさせることもあるという報道がなされていた。ただ、それが事実としても、これではその場に居合わせた人が心霊現象をその場においてのみ、しかも頭の中でのみ体験するのであって、後日現像した写真に何らかのモノが写っていたということにはならない。心霊写真を写すためには、その場においてカメラでも感知できる現象を生じさせる必要がある。
いずれにしても、写真にありもしない人の顔が写るというのは、やはり何らかのトリックと考えるのが自然なように思う。幽霊の正体見たり枯れ尾花である。


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