20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:不可思議情報の私的考察 作者:ツジセイゴウ

第11回   日本列島は沈没するか
東日本大震災の後もなかなか余震が収まらない。そんな中、今度は首都直下型地震に火山の噴火予想と、学者の警告は日増しに強くなっている。このままだと、小松左京先生の小説のように本当に日本は沈没してしまうのであろうか。
そもそも、『日本沈没』は、あの小説が書かれた当時流行していたプレートテクトニクス理論が元になっている。プレートテクトニクスとは、地球の表面はプレートと呼ばれる巨大な岩盤で覆われていて、それが少しずつ動くことで、大陸の移動や造山運動、地震などが起きるというものである。
実際、東日本大震災はユーラシアプレートの下に太平洋プレートが潜り込むことによって起きた。薄いプラスチックの下敷きの端を指で押さえて曲げてゆく。途中で指を離せば、下敷きはビョーンと跳ね上がる。同じ原理で、ユーラシアプレートが太平洋プレートに引っ張られる形でどんどん曲げられ、ある日突然そのくっついていた場所が剥がれると海溝型の地震が発生する。実際、今回の地震で日本列島の三陸海岸側が10メートル以上も東に移動したことが計測されている。
おかしなことに、この地震があるおかげで逆に日本は沈没せずに済んでいるのである。仮に地震がなければ、ユーラシアプレートはどんどん海溝の中へと引きずり込まれ、日本は海の底へと沈没してゆく。いや正確には転覆させられるのである。日本列島を海に浮かぶ船と仮定して、その船の片側の舷をどんどん下へと押し下げてゆくと、船は次第に傾き最後は転覆する。実際、毎年数ミリ単位で、日本列島の太平洋側は沈降し、日本海側が隆起している。要するに、日本丸はマグマの力で常に傾けられているのである。しかし、その傾き加減が極めてスローであるため、実際に日本丸が転覆したり、海に沈んだりすることはない。
では日本は絶対に沈没しないのか。いや、現実には部分的に沈没した例が過去にある。鹿児島湾である。鹿児島湾は、実際は姶良(あいら)カルデラという巨大な火山の後なのである。今から2万5千年ほど前に、想像を絶する巨大噴火があったとされる。その時に噴出された火山灰が降り積もりシラス台地が形成され、その一部は関東地方にまで達したという。
この噴火により、地下にあったマグマだまりが空洞化し、そこに地殻が落ち込んで大きなカルデラを形成した。阿蘇のカルデラも同じような仕組みで形成されたが、姶良カルデラは海に近かったため、海水が入り込み湾となったのである。
では、今後日本列島のどこかで、同じような巨大噴火は起きるのか。明確にはわからないが、いつかは起きると考えるのが自然である。ただ、今は昔と違って科学が進歩し、人工的に起こす地震波によって、マグマだまりがどこにどのくらいの規模で広がっているかは、ある程度計測できるそうである。でも、予測はできても、噴火まで抑えることは今の科学技術では難しい。自然の力の前では、人間は何と小さく弱い存在か。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 7571