20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:不妊列島 作者:ツジセイゴウ

第4回   クローン
 その3日後、お台場海浜公園。
「ごめん、呼び出したりして。」
「ううん、いいのよ。私の方はちっとも。」
 潮風が吹く中、恵子は一輝と並んで歩いた。日曜日とあって多くの家族連れや若いカップルが浜辺に繰り出し、沖合いでは少し気の早いウインドサーファーたちが色とりどりの帆を浮かべていた。そんな華やいだ景色の中でも、一輝の顔には相変わらず暗い影がのぞいていた。
 「もう会わない方が…」という一輝の一言が何となく頭の中に引っ掛って、恵子の方から声を掛けづらい雰囲気があった。しかし、今日は一輝の方から誘いがあった。何かある、何かあったに違いないという予感がしたが、敢えて聞くことはせず、恵子は一輝の少し後ろに控えて歩いた。恵子は春らしいピンク色の半袖のワンピース姿、見ているだけで長く沈鬱だった冬を忘れさせてくれるような軽快な服装であった。一方の一輝はというと、グレーのトレーナーにジーパン姿、まるで心の内を映すかのような暗い雰囲気は、この前会った時と少しも変わっていなかった。
「どう、その後精液調査の方は順調?」
「ええ、昨日研究所の先生のところに問い合わせしたら、もう2千件近く集まってるって。やっぱり新聞の威力ね。もちろん不妊問題に対する国民の関心が高まっているということはあるのかもしれないけれど、この前の研究のときはわずか5百件のデータを集めるのに半年も掛かったわ。それも薬品の納入先の病院や診療所を通じてのことだったからデータにもかなりの偏りか見られた。でも今度は大丈夫そう。」
「そうか、それはよかった。」
 一輝は一言ポツリと感想を述べた。この前から、2人の会話は恵子の9に対し一輝は1ほどの割合であった。一輝の発する言葉と言えば、短い質問と返事くらいである。大学時代はどちらかというと一輝の方が雄弁だった。スランプに陥った恵子を先輩の一輝が励ますというのがいつものパターンであった。それが今ではすっかり攻守が逆転してしまった。
 また、長い沈黙が続いた。一輝は海に面したテラスに両の手をついたまま、じっと遠くの方を見つめていた。恵子はゆっくりとそんな一輝の傍に並んだ。
「なあ恵ちゃん、子供って何だろう。子供って。」
 一輝は、恵子の方を振り向きもせず、独り言を呟くように尋ねた。
「子供?」
 恵子は突然唐突な質問を投げかけられ、思わず言葉を返した。
「ああ、子供だよ。そう、まさにいま日本国中が、揃いも揃って、子供、子供って大騒ぎをして。子供って一体何だろう。」
 恵子は何と答えていいのかすぐには返事が思い当たらず、口を噤んだ。子供の定義を求められても一口に言えるものではない。ましてや不妊の患者を目の前にして、子供のことと言われても答えようにも言葉に窮する。再び沈黙が続いた。その間にもカモメが2羽3羽と2人の眼前をかすめて何回も優雅に飛び過ぎて行った。
「そ、そうね。生物学的に言えば、子供は親と孫の間を繋ぐブリッジのようなものかも。」
「ブリッジ?」
 恵子は、回答を迫られて、専門家としての立場から学術的解答をした。
「そう、ブリッジ。橋のことね。最近の生物学会で注目されている説の一つにDNA支配説というのがあるの。」
「DNA支配説?」
「そう、全ての生命はDNAに支配されている、あるいはもっと言うとDNAに生かされているという仮説。人は自らの意思で自らが生きていると思っている。でも本当はDNAに生かされている。先輩の身体の中にも、私の身体の中にもDNAは無数にあるわ。そう人の身体を構成する細胞の一つ一つにDNAは存在している。そのDNAは太古の世界、この地球に生命が誕生してから何十億年という歳月を掛けて今日まで延々と受け継がれてきた。親から子へ、子から孫へ、そしてさらにその子へと、いうようにね。」
 一輝はなるほどと思った。かなり専門的な内容であったが、一輝も人の身体がDNAという設計図に基づいて造られていることくらいは一般常識として聞き知っていた。しかし、そのDNAが人の身体を支配しているとは一体どういうことなのか。
「DNAは自らが永遠に存在し続けるために私たちの身体を利用しているというのがDNA支配説。DNAは古くなった身体を乗り捨てて若く活力ある身体に乗り移るために、子孫を作るというプラグラムを自らの中に組み込んだの。DNAにとっては私たちの身体は仮の宿、親から子供に自らを運ばせるブリッジのようなものね。DNAはこのブリッジを通って、未来へと確実に運ばれていく。そして役目の終わった個体は滅び死んでゆく。」
 一輝はようやく恵子の言っていることが理解できたような気がした。
 生きているものは必ず死ぬ。人だけではない、犬や猫も、鳥や魚も、小さな虫けらだって、凡そ命あるものは遅かれ早かれ必ず寿命というものがやって来る。だからこそ全ての生き物は自らの命が尽きる前に子孫を残そうと必死になる。そうすれば、例え自らの身体が滅んで消え去ろうとも、DNAだけは確実に子孫に受け継がれていく。DNAが主で、我々の身体が従と考えると全ての辻褄が合ってくる。
「ふーん、面白い話だね。本当に恵ちゃんは博識だなー。」
 一輝は目から鱗か落ちる思いで恵子の話に聞き入っていた。
「ううん、大学の生物学の授業の受け売り。薬学や医学を志す人なら誰でも知ってるわ。」
 恵子は謙遜した。自分が特別偉いわけでもない。ただ住んでいる分野が違うだけのことである。
「答えになったかしら。子供って、自分のDNAを受け継いで、さらに遠い未来へと運んでくれる存在。」
 恵子がそこまで話を進めた時、一輝の脳裏に再びあの恐ろしい光景が浮かび上がっていた。その瞬間、一輝の鼓動は一気に高まり、背筋に冷や汗が噴き出るのを覚えた。仮に、仮に恵子の言うことが正しいとしたら、子孫を残せない自分の存在とは一体何なのか。少なくとも自分はブリッジの役目を果たしていない。橋が通せなければ、DNAはその橋を渡ることもできない。だとすれば、そもそも自分が存在している意義すらなくなるのではないか。DNAというバトンを次の世代に渡すことの出来ない自分はもはや無用なのではないか。
「先輩、先輩、どうしたの。大丈夫?」
 一輝がはっと気がついた時、すぐ傍らには恵子の顔があった。どのくらいの時間であったであろうか。ほんの1〜2分であったかもしれない。しかし、一輝はその間のことを全く覚えていなかった。
「ああ、大丈夫だ。」
 ようやく我に返った一輝は雑念を払うかのように頭を左右に振った。
「ごめん、誘っておいて。どうも体調がよくなくて。悪いけど今日はもう帰ろう。」
 一輝は一言そう言うと、くるりと恵子に背を向けた。恵子は突然帰ろうと言われて驚いた。自分の話したことが先輩の気分を害したのではないか。しかし、先程の先輩の様子にはそんな単純なことでは済まされないような何かがあった。もっと奥の深い何かが。
しかし、恵子がそれを詮索する間もなく、一輝の足はゆりかもめの駅の方に向かっていた。

 それから数日後のことである。日本列島を衝撃的なニュースが駆け抜けた。一輝も、恵子も、いや彼らだけではない、日本国中の何千万という人の目がテレビに釘付けになった。
「つい先程とんでもないニュースが飛び込んでまいりました。」
 いつになく紅潮した顔つきでニュースを読み上げる小池キャスターの声がテレビ画面から流れてきた。
「今日午後七時頃、民間の不妊治療団体である『日本クローン技術研究所』は日本初のクローンベビーの妊娠を確認したと発表しました。同研究所では5年前から重度の不妊症患者に対し、クローン技術を使った不妊治療の臨床研究を続けてきましたが、このたび30台の無精子症の患者の骨髄から採取した細胞から作られた胚性幹細胞を、同じく30台の妻の子宮に戻したところ、先日着床が確認されたということです。」
 ついに恐れていた事態が起きてしまった。武沢薬品の研究がリークされて後、パニックは留まるところを知らず拡大していた。精子を全く作ることのできない、いわゆる無精子症の患者の場合、どうしても自分と血の繋がりのある子供が欲しければ、自身の体細胞から作られるES細胞を利用するしか手は残されていない。不妊という現実を目の当たりにして、倫理という壁はもろくも崩れ去ろうとしていた。
「今夜は、急遽『日本クローン技術研究所』の所長である一色修也さんにスタジオにお越しいただきました。早速、お話をお伺いしていきたいと思います。」
 恵子は、思わず身を乗り出してテレビ画面に食い入った。『切れる刀ほど時には危険な刃になる』、恵子の頭の中をいつぞやの篠原教授の言葉が何度となく駆け巡った。
「先生がおっしゃっていたのは、このことだったんだわ。」
 一色修也。恵子の脳裏に院生時代の彼の姿が鮮明に蘇った。細面ですらりとした長身の人物は院生時代から比べると少し老けて見えたが、眼鏡の奥で光る目はむしろ輝きを増していた。
「早速ですが、一色さん、クローンベビーの誕生とはまた大胆な挑戦ですね。現在、ヒトクローンは法律で禁止されていますが、その辺りのことは大丈夫なんでしょうか。」
 ヒトクローン規制法、2001年に施行されたこの法律により、胎児に成長する可能性のある胚細胞をヒトの子宮に戻すことは厳しく禁じられている。修也の行為は、当然法に抵触する。
 いきなりの核心に迫る質問に対して修也はどう答えるのか。恵子は息を殺し、聞き耳を立てて回答を待った。しかし、当の修也は平然と、そしてあたかも想定問答を用意していたかのように持論を述べ始めた。
「まず誤解があるといけませんので最初に申し上げておきます。この問題は法で禁止するとか、倫理がどうとかいう類の問題ではないということです。わが日本国の、いえそれだけではありません、恐らく人類の未来にとっても、この問題は真剣に議論されるべき時が来たということです。今から20年ほど前、既にデンマークの研究者が男性の精子数の減少について警鐘を鳴らす報告を発表していました。しかし、誰もその意味するところを理解できず、いや正確には理解していたにもかかわらず、宗教や倫理の方が前面に押し出され、この問題を議論することすらタブーとして葬り去ってしまったのです。」
 修也の言うことは正しかった。世界の男性の平均的な精子の数が長期間にわたって減少し続けているという事実は、既に広く専門家たちの間では知られていた。しかし、その原因がはっきりと証明されていない以上、対策の打ちようもなく、今日まで放置されてきた。それが、くしくも日本の一民間企業が行った研究により、明確な問題として議論の俎上に上がってしまったのである。
「お言葉ですが、不妊治療が目的であれば何もいきなりクローンまで飛躍しなくても、通常の人工受精で十分ではないですか。日本人男性の精子が全くなくなってしまったわけでもなし、顕微授精でも、ドナーによる精子提供でも、いくらでも別の方法はあると思いますが。政府も既に精子バンクの設立を発表しましたし……。」
 小池キャスターはさらに突っ込んで質問する。
「確かに今の段階ではそう言えるかもしれません。でも、日本人男性の精子数の減少は我々の予想をはるかに超えるスピードで進んでいます。そう、まさに地球温暖化問題と同じなのです。今すぐ適切な対策を行わないと、近い将来取り返しのつかない事態になるかもしれません。あの武沢薬品の研究報告よりもさらに速いスピードでわが国の人口減少が進むかもしれないです。
 もし、政府の設立する精子バンクに十分なドナーの数が集まらず、同じ人の精子が何百、何千という不妊症患者に使われたとしたら、将来遺伝子の同質性という深刻な問題を引き起こす可能性があります。」
「い、遺伝子の同質性? ですか。」
 小池キャスターは、いきなり難しい専門用語を持ち出されたので、少しひるむように尋ね返した。
「はい、遺伝子の同質性です。仮に1人の人間が提供した精子を10人が貰い受けたとします。この10人の遺伝子はその50パーセントが全く同じ形質を供えたものとなります。もしこれらの人が新たな遺伝子の提供者になれば同質性はどんどん進んでいきます。やがて、いつかはハッキリとは分かりませんが、遠い将来私たちの遺伝子は全てが似通ったものとなってしまう。それが遺伝子の同質化なのです。」
「そうしたことが起きると何かまずいのでしょうか。」
「遺伝子の同質化が起きると遺伝病に罹患する確率が高くなります。そればかりか、様々な外部環境の変化、気候変動、病原菌、化学物質、数え上げれば切りがありませんが、これらに対する抵抗力が落ちていきます。
これまで、日本が豊かに繁栄してこれたのは遺伝子の多様性のお陰なのです。一億人の人間がいれば一億通りの遺伝子が存在します。これだけ多様であるが故に、早死にする人もいれば長生きする人もいる、ガンに罹りやすい人もいれば罹り難い人もいる、いろいろな人が混じりあって生きているからこそ日本人という人種が生き延びてこられたのです。政府は、今精子バンクの設立でそうした遺伝子の多様性を奪おうとしているのです。」
 恐らく修也の言うことは正しいであろう。恵子は直感的にそう思った。日本人の気質から言っても、献血ならともかく、献精子となると二の足を踏む人は多いであろう。血筋にこだわる日本人が、法律的には赤の他人でも、自分と同じ遺伝子をもつ人間が多数いるという状況に果たして耐えられるのであろうか。恵子の脳裏に先日の記者会見の模様が鮮明に蘇った。もし十分なドナーが集まらない場合、同じドナーの精子が大勢の患者に使われ…。恵子は、その恐ろしい帰結を振り払おうと目を閉じて耳を塞いだ。
しかし、テレビ画面の方は、恵子の意に反して最悪の結論へと進んでいく。
「そ、それでは、一色さんは、クローンの方がまだましだと。」
「その通りです。クローンであれば親の形質がそのまま子に受け継がれます。1人の人の精子が多数の人に使われるわけではないので遺伝子の多様性は維持されます。少なくとも1億通りの遺伝子はそのまま子孫に受け継がれていきます。
そして、全ての人に自分と同じ血が通う子供が生まれるのです。誰しも、人の子ならば、どこの馬の骨か分からないドナーの精子を使うくらいなら、自身と血の繋がった子供を持ちたいと思うのは当然の道理です。そんな人々の夢を実現できる技術を手にしておきながら、それを使わないというのは、それこそが人道に外れます。
精子バンクの制度は間違いなく失敗すると思います。そして、皆さんは、いえ実際は皆さんではありません、私たちの子孫になる人たちは、です。遠い将来、私の選択が間違いでなかったことを知ることになるのです。」
 修也は、自信たっぷりに自説を締めくくった。不妊による民族の衰退か、クローンによる繁栄か。この国は、いま大きな岐路に立たされていることを、恵子は改めて実感した。

 翌日。東都大学薬学部臨床科学研究所。
「津山君、えらいことになってしまったよ。」
 篠原教授は、恵子を前にして頭を抱え込んだ。
「以前先生がおっしゃっていたのは、このことだったんですね。『切れる刀ほど時には危険な刃になる』というのは。」
「ああ、やはり彼はとてつもない野心家だった。薬学者としての使命を忘れ、21世紀のフランケンシュタインになろうとしたんだ。1年前、彼は私の反対を押し切って、ある男性不妊患者の体細胞から培養したES細胞をその奥さんの子宮に戻そうとした。学内の倫理委員会でも大きな問題となり、あの時は寸でのところで着床を制止した。
そのすぐ後だったよ。彼の方から辞表を提出して。その後、どこでどうしていたのか。風の噂で、不妊患者たちで結成するNPO団体の後援を受けて研究を続けているらしいことは耳にしていたんだか、まさか、こんな大それたことを考えるなんて。」
「す、すみませんでした。私たちがあんな研究報告をしてしまったばっかりに。」
 恵子は、篠原教授に向かって深々と頭を下げた。
「いや、君が悪いわけじゃない。あの武沢薬品の報告は、日本の男性不妊の実態を明らかにし、世に警告を発していくという点でとても意義深いものだった。それをヒトのクローン造りの口実にしようなどと、全く馬鹿げている。何としても止めさせなければ。」
 教授は、大きなため息とともに、ソファに背をもたれかけさせた。
一方、恵子の心の内は複雑に揺れ動いていた。倫理を犯してクローンベビーの誕生に挑戦した修也の行為は当然に許されるものではない。しかし、先日来、不妊に苦しむ一輝の姿を見てきた恵子にとって、「自身と血の繋がった子供を持ちたいと思うのは当然の道理」と主張する修也の行為を一途に責める気持ちにもなれなかった。
2人の間に重苦しい沈黙の空気が流れた。
「ところで例の研究の方は、その後どうなった。何かわかりそうか。」
 教授は、その沈黙を破るかのように話題を変えた。
「ええ、お陰さまで、サンプル数は3千件を超えました。まだ中間集計の段階ですが、不妊に地域的な偏りはなさそうです。北海道から沖縄まで、ほぼ同じような割合で精子数の減少が起きています。問題は年齢別の方ですね。武沢薬品での調査と同様、若い層ほど精子の数が少ないという結果になりました。特に25歳以下の層で顕著な乏精子症が見られました。」
「そうか、25歳以下ねえ。」
 教授は、考え込むようにあごに右手を当てた。
「まず地域的な偏りがないという点から考えると、少なくとも不妊の原因物質は全国に万遍なく広がっているものということになるな。水か、それとも主食である米、が怪しいか。だとすれば、残留農薬の可能性が高い。工場排水とかだとその地域に限定されるからな。」
 恵子は、なるほどとばかりに頷いた。
「でも先生、農薬は農水省が厳しく基準値を決めていて、危ない可能性のあるものは全て使用禁止になっているのでは。」
「確かに君の言うとおりだ。ただ、基準値といってもそれは現時点で安全と思われるレベルだ。君も知ってのとおり残留農薬の中には何年もかかって人の体の中に蓄積して影響を及ぼすものもある。その基準値が本当に安全かなんて誰にも確信を持って言えるものではない。」
 恵子は、すぐに先日一輝にも説明したダイオキシンのことを頭に思い浮かべた。色も匂いもなく何年もかかって人のホルモンバランスを崩していく物質、それはダイオキシンに限ったものでもない。候補となる物質は無数にある。恵子は途方にくれた。
「とにかくカギは25歳という点にありそうだな。人の生殖機能が最も発達しやすいのは10歳から15歳くらいだ。25歳の人が丁度その年齢に当たっていたのは今から10年から15年くらい前、その頃に新たに認可された農薬はないか。それと水道水への添加薬剤も調べた方がいい。塩素系の消毒剤に変更はなかったか。調べることは山ほどありそうだな。」
「はい、とにかく可能性の高そうなところから調べてみます。アドバイス、ありがとうございました。」 
 恵子は、ようやく調査の糸口が掴めたことで勢い込んで立ち上がった。しかし、この後恵子の調査は予想以上に難航することになることを、恵子はまだ認知していなかった。


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 3146