道が開けてから見えてきた、町の入り口からの眺めは、最悪だった。前もって話だけは聞かされていた状況を、改めて目にした東堂は、それでも内心が波立つのを止められなかった。 ライハート神殿からしばらく歩いた場所にある、ヴィントの町。そこは東堂の育った故郷だったのだ。王国、帝国の主戦線から遠く離れたここは、まれに魔物が出ることもあっても、日々平穏であること以外に取り柄のない町だった。それだけに、こうも荒れ果てた姿を見せられれば驚く他ない。 王都から離れた場所でこうなのだ。近くになればどうなっているものか。 東堂は、一時期庇を借りていた借家に寄ってみた。服はレウラが用意していたものを受け取っていた。炭化した梁や柱を蹴り進む。自分が出て行った後に別の人間が住んだのだろう。間取りが見知ったものと僅かに違う。 東堂を見つけたレウラが荷物を手に近づいてきた。食料などを隠してあったのだ。 「みんなはどうなったんだ?」 「分からない。ブレトラッドから戻ったらこうだったの。どこかに避難していればいいけど…」 孤児だった東堂やレウラには、この町に親兄弟はいないが、それでも心配な人間がいなくなるわけではない。それに、本当は二人とも気付いていた。公会堂前に掘られた広い穴は、遺体を焼くためのものだ。二人とも何も言わない。言わなくとも分かっているし、言いたくない。ライハート神殿で、レウラが口にしたアンネリーゼらの顛末も、最早どうでも良かった。 東堂は、材木に腰掛けて深く息を吐いた。自惚れるつもりはなくとも、東堂が招いた事態も同然だった。 皆が皆、英雄ヴォルフラムの旅立ちを引き留める中、それを快諾した賢王オスヴァルトが魔神化したというのが、何よりだ。謀られたのだ。魔王も帝国もいなくなれば、邪魔者はヴォルフラムだけなのだから。 最後まで見抜けなかった我が身の間抜けさに呆れ返るとともに、彼を尊敬していた分だけ、裏切られた憎しみは強く、ふつふつと憎悪が沸き起こる。 「アナタのせいじゃないわ」 「分かってる」 なら誰の所為だと東堂は問わない。結論が出ない問答をする余力は、今の彼にはなかった。 「寄るところがあるな」 東堂は立ち上がった。
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