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作品名:カクテルのススメ 作者:イリヤ

第2回   2
スクリュードライバー Screwdriver

別れよう。その言葉を理解するのに、数秒を要した。
彼とは上手くいっていたはず。浮気はしていないし、デートもしていた。
彼に一目惚れして、彼好みの女になろうって頑張って。
人生でこんなに努力したことってあったかな?あったとしても、片手で数えられるほどのはず。

それなら、尚更どうして?
他に好きな人ができた?私のこと嫌いになった?

「…そういうのが…重たいんだよ…」

そう言った彼の顔は、どちらかといえば悲しそうな顔だった。

私の混乱は最高潮に達した。同時に、怒りが湧き上がったきた。

なんでよ!あなたは私に何度言った!?俺の事嫌いかとか、浮気してないかとか!!
あなたは束縛する人だった…。でも、私はうれしかった。大事にしてくれてるって思ったから。
それが、いきなりこれ!?ふざけないで。私を何だと思ってるの!?

一通り怒鳴り散らしたあとに、小さく、嘘じゃなくて、本当のことを言ってと、言った。

彼は最初、普段は…今まで一度も見せたことのない私の一面を見て戸惑っているようだった。
しばらくすると安心したように笑って、そして泣き出した。

「……俺、遠くに行かなきゃいけないんだ」

遠くってどこ?

「……シンガポール…」

シンガポール?留学?

「うん…勉強しに…」

それならそうで、言ってくれれば良いのに。

「だってお前は…仕事があるし…」

そんなの、関係ない。
私は、あなたが好きなの。
シンガポールだってどこだって着いていく。

「そう言ってくれると思った…。でも、お前の人生までめちゃめちゃにする理由もない」

じゃあ、別れよう?その後私は仕事をやめて、シンガポールに行って、もう一度あなたと出会う。

「…後悔するかも」

そんなの、してもしなくても私の勝手。

「……しょうがねーな…」

最後にそう呟いて、彼は笑った。
日が傾いてオレンジ色の空に、2人の幸せな笑い声が響いた。
そして最後に、私は言った。

結婚してください、と。


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