真夜中のリーディング セッション2☆星のささやきにのる人々。
春。 花も草も芽吹く季節。 森羅万象すべての雄雌が引き合うこの季節は 人の心も引き合うのだろうか、 2008年3月4日から火星が蟹座に。 2008年313日から金星がうお座に入って来る。 競争・闘争といった攻撃性。 あるいはその人の持つ開拓精神を示す火星(マーズ)は、 男性の恋愛傾向を観る星であり、 女性から観る場合は嗜好する男性のタイプを示す。 調和・快楽という美的感覚や品性、 あるいは経済感覚を示す金星(ビーナス)は、 女性の恋愛傾向を観たり、 男性から観る場合は好む女性のタイプをあらわす星として 西洋占星術は扱ってゆく。
もちろん火星や金星が、恋の魔法をかけるわけではないし、 特殊な電波を発しているわけではない。 そこにあるのは傾向と確立であり、絶対はない。 ましてホロスコープはみんな違う。 総ての人にとって恋愛吉ではないとは思うが、 ホワイトディ直前も手伝うのか、 いつにましてここ数日、恋愛のご相談が増えている。 おそらく今夜も・・・・。
「伊藤愛子さんですか? はじめまして、ムーンティアラのスピカです」 「はじめまして、愛でーす。 よろしくお願いします」 「えっ、愛さん? 私、聞き間違えたかしら?」 オペレーターから聞いた伊藤さんのデーターと、名前が違う。 お客から店に電話が入り、そこで住所・氏名年齢(会員なら会員ナンバー) を告げ、相談内を簡単に話して鑑定師を選ぶのが一般的な電話鑑定の流れになる。 その際鑑定師は、オペレーターから聞いた依頼者の情報を、 顧客シートやノートに書き込むのだが、思わずそれを観ながら聞き返した。 「ううん、先生。ゼンゼン間違ってないですよぉ。 だーって『愛子』なんて、ダサイでショ。 だから名乗るときは『愛』にしてるの♪」 22歳の若さもあるのか、テンションの高い女の子である。 「じゃあ、愛ちゃんて呼んでいいのかな?」 「はーい。」 「時間は今22時25分。 鑑定内容は・・・・お仕事が早く終わるかと、お客様のこと。 内容が違うから分けてカード切るけどいい?」 「いいでーす。 それじゃあ、お仕事のことなんだけど、私劇団に所属しているの。 先生『賛成の恋と反対の結婚』ってドラマ知ってるよね?」 「観たことはないけれど、あの美人女優岡崎亜美が主演のドラマ?」 「そう!そのドラマのロケに、来週の金曜日参加するのが今日決まったの。 だけどよくよく思い出したら、その日は3月14日。 ホワイトディでしょ? 彼とデートする約束してたんだ。 収録が早く済めば、7時に渋谷間は合うと思うんだけど・・・」 「相談内容は、ロケが早く済んで約束に間に合うかってこと?」 「そうでーす」 愛ちゃんにとっては、一つの事柄なのだけれど タロットは、1問1リーディングが基本。 「この依頼内容だと、ロケが終わるのと、 デートの時間に間に合うかは別要素だから、2回に分けていいかしら?」 「えっ?時間かからなければいいけど・・・」 「じゃあ1枚引きを2回。もちろんデッキも換えますね」 この程度の質問なら、当てることさえ重視しなければ その日一日運として出すのも可能だし、 占う側としても手っ取り早いから、ごっちゃに占う人は多いだろう。 愛ちゃんの承諾と同時に時間を確認。 2008年3月4日22時35分。 すべての数を一桁にして足し算。 結果29という数が出る。これをさらに2+9=11。 1+1=2まで出す。 「3月13日のロケが早く終了するか」 一つのデッキをよくシャッフルとカットして、まとめたカードから2枚目を引く。 続けて別のデッキをシャッフル&カット。 「デートの時間に間に合うか」 に対して、同じようにまとめてやはり2枚目を引いた。 「お待たせしました」 「うわぁドキドキ!先生ちゃんとシャッフルしてるんだね。 カードの音、よく聞こえる」 ・・・・・・今時、カードをシャッフルやカットするのではなく、 キィボードを叩くタロッターもいるとは聞いてたけど・・・・・。 TV電話でない限り、電話の向こうはわからない。 「まずロケの方だけど、大アルカナの星。 力強いカードではないけど、見通しは明るいわね。 楽しく仕事が進んで終わると観ていいでしょう」 「やったーッ!」 「だけど、もう一つの方はソードの1R(Rは逆位置の略)。 小アルカナだから強烈ではないけれど、 気まぐれな意味があるから、デートの時間に間に合うかは難しいわ」 「え〜っ、せっかくのホワイトディなのに・・・。 まぁいいわ。 それじゃあ、もう一つ。お客さんのことなんだけど、私ね、 六本木のパブでバイトしてるの。 結構プロスポーツ選手なんかも来るお店なんだけど、 昨日ね、Kー1で有名な人が連れてきたメンバーに、 高橋さんて男の人がいたの。 今月中にまた来てくれるか観てくれる? 来たら指名とボトル約束してくれたんだぁ」 「一枚引きでいい? 「うーん、もう少し詳しく先が知りたいな」 「じゃあ3枚で観るね」
2+8+3+4+2+2+5=26。 2+6=8。 シャッフル&カットの後、まとめた78枚のカードから 三枚引きに採用するのは8枚目のカードとなる。 何枚目のカードを引くのか、 特に決まりはない。 お客に好きな数を選ばせる、あるいはカードを選ばせるのもアリ。 客に選ばせればサービスにはなるし、占い師が決めるのもアリ。 しかし客も占い師も人間。 選ぶ限り、そこには欲目や迷いが生じるだろう。 だから客や占い師の意思が介在しない方法として、 私は時間計算を使っている。 「お待たせしました。 過去がカップの10。 昨日の出会いは彼にとってもすごく楽しかったようね。 現在がコインの9。 彼は今仕事の人間観家が好調なのかな。 大きくはないけど昇進とかのチャンスがあるみたい」 「じゃあ、やっぱり営業実績あがったのかも。 新しくスポンサーになる予定の企業から、今日は返事もらう日なんですって。 でも実はそれはもうほぼ確定だったのと、昨新人くんがデビュー戦勝ったから、 お祝いで店に10人くらいで飲みに来たのよ。 高橋さん、すごく上機嫌で舞(源氏名)の事、今度指名してくれるって、 みんなの前で言ったんだ!」 「未来がコインの1。 富と繁栄が約束されたカードだし、 コミニュケーションの意味も含まれるコインのカードが2枚も続けて出ている ので、あなたの所に彼は来るでしょうね」 「やったー! 彼のことは今一つだったけど、高橋さんのことがいい感じに 出てくれたからよかったーッ、ありがとうございました。」 ガチャリと受話器を切る音が耳に響く。 23時ジャスト。35分間の鑑定になるから7000円だ。 後ほどオペレーターから時間と金額の確認は行くが、この手のお客も結構多い。 事務連絡をすませて24時を回る頃、指名が入った。 ここ2ヶ月、ほとんど週一で相談をしてきた鈴木さんである。
「こんばんわ、鈴木さん。ムーンティアラのスピカです どうしたの、また眠れないの?」 「こんばんわ、先生。 うん。また山崎さんといろいろあって、それが引っかかって眠れないの。 だから電話しちゃった」 三十路に大手の鈴木さんは、某食品会社のOL。 山崎さんというのは彼女の後輩に当たる同年の女性。 人材派遣会社経由で入ってきて、仕事のスキルと語学力の高さから、 一年ほどで正社員登用されたやり手である。 牡羊座という性質も手伝っているのか、 山崎さんは、かなり勝ち気ではっきりした性格。 大学卒業後からずっと同じ会社に勤めて、のんびりとその日の仕事をして、 お給料さえもらえればいい鈴木さんは、そんな彼女を苦手としていたし、 同僚や先輩から、彼女と比べられるのをすごく気にしていた。 「先に時間確認するね。2008年3月4日24時5分。 スタート時間よろしいですか?」 「はい」 「それじゃあ、鈴木さんのあなたに対する思いをみればいい?」 熱心な勤務態度の山崎さんと、マイペースな自分を比べる 職場の人たちに悩み、勤務を続ける自身をなくした鈴木さんが、 転職相談をしてきたのが二ヶ月前。 深夜何人もの占い師(店も同じだったり違ってたり)に、日数的間隔もあまり開けずに、観てもらう生活を続け、その占い師の一人に私もいたのである。 やっと気持ちが落ち着いたのか、結局今までのところで 仕事を続けると決めたのが先月の話。 さて今回はどうなる事やら・・・・・。
「ううん、それもあるんだけど先生。 その前に転職を観て」 「あれ、この前やっぱり今の所にいるって・・・・」 「今日ね、実は有給使って一社面接してきたの。 私だって、これでも資格は持っているし、生かせる方がいいかなって思って。 今の会社と今日面接したところと、どっちがいいか観てもらえますか?」 受話器から聞こえる声のトーンが下がって来る。 「わかりました。今の勤務先と今日面接をした会社、 どちらが鈴木さんにとっていいのか、見比べればいいのですね」 「はい」 返事を聞きながら時計を確認。 1時12分。だから 2+8+3+4+2+4+1+2=26。2+6=8。 今日の年月日と今の時間をすべて一桁にして、 足し算した合計数をさらに分けて足し算。 出た数は8。 これが今の鈴木さんの鑑定に際し、シャッフルして束ねた タロットカードを戦術に合わせて並べる時、めくる数である。 「お待たせしました。 二者択一なので、3枚のカードを上下に2段。 合計6枚をテーブルに出しています。 上の3枚が今の会社。 下のカードが今日面接した会社です。いい?」 「はい」 「まず今の会社から観るね、過去がカップの3。 人間関係円満。結構楽しくやってたのが、まるで今はツキが落ちたみたい。 現在が運命の輪R。 何か邪魔が入って、物事がすべて裏返ったような状態」 「そう、そうなのよ。やっぱり山崎さんは邪魔。 これだけはね、どの先生に観てもらっても同じ! スターレインの由岐禰先生(業界有名人)も、 同じ事言ってたんだから!」 毎週一回はこうして鑑定する鈴木さん。時間も軽く一時間はかかる。 他の人にもこの調子で観てもらっている上のだから、 月10万前後は鑑定につぎ込んでいる事になる。
「そう・・・で、未来なんだけどソードの3R」 「やっぱり失恋するの?」 占い好きなら、ソード3がなのは、わかるのだろう。 思わず口から漏れる本音。 「失恋?」 「あッ・・」 押し黙る鈴木さん。 この二ヶ月というもの、毎週一回は私に鑑定を依頼してきた。 社内の人間関係を観る都度、大アルカナの『悪魔』や『審判』が頻発。 彼女は恋愛を否定したが、どうしてこんなに色の情が深いカードが出るのか、 釈然としないまま時間が過ぎて来たのであった。 「彼女が・・・山崎さんが来るまでは、 同僚とも先輩とも、うまくいってたし、 山田課長とだって、私はうまくやってたのに・・・。 一昨日だって、ちょっと書類をミスっただけ。 なのに課長、怒鳴るなんて! 前はあんなに優しかったのに!」 「ねぇ鈴木さん。 単に対人摩擦にしては、以前から色の絡んだカードが多いの。 ケルト十字の時、キィカードが『女帝』だったりね。 あなたは違うって言っていたけど、やっぱり、 山田さんの事、好きだったんじゃない?」 受話器から漏れる吐息。 「彼女のせいで、山田課長、あんな人信じて あたしのこと話したから、みんなに付き合ってるのがばれちゃったの! うちの会社、社内恋愛は御法度なのに」
「下の段を読みますね。 過去カップ8。一つの物事が終わる時。 現在ソードN・R。劇的な出会いではないけれど、 今日の面接は双方にとって悪くないみたいね。 未来ワンド9。先方はいい回答をくれるし、 あなたからのよい返事を待っているわ。 比べるなら、新しい会社の方が」 「ねぇ先生、今の山田さんの気持ち、観てッ!」 『いい』と、結論を言い終わらないうちに、鑑定を即す鈴木さん。 悲しみ、それとも怒り? 感情の昂ぶりに声音が濁る。 「わかりました。それじゃあ1枚引きで観ましょう。 複雑に観るより、その方がわかりやすいし」 「はい。お願いします」 。 1枚で、鈴木さんに対する山田さんの気持ちを観ることにした。
続く
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