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作品名:サニーサイドアップ物語(sunny-side up tales) 作者:ブナ

第9回   9
「私を置き去りにしておいて、よく言えたものね」
「無駄口はいいから、はやく降りて!」

手下達が駆け付けた時には、すでに二人の姿はなかった。
彼らは地面に横たわっている自分たちの頭目を見つけると、手を延べあって輿を作り、
森の奥へと運んでいった。
「誓って、誓って」
彼はなおも周囲を震え上がらせるような声で叫んだ。
「お前にジャン・ド・ボールを思い出さずには置かないぞ!」

三日目に、商人は銀貨をつめこんだ袋を携えて、帰って来た。
坂を下ったところで、馬をゆっくり歩かせ、村の広場で停めた。
娘の従姉であるキュアリーが緑色の壺をもって、水を汲みに行くのが見えた。
「へーい、お前はうちの娘といっしょにいてくれなかったのか?」
「叔父さん! それが大変なことになってしまったんです。今頃、叔父さんの家はめちゃくちゃです」
「なに、一体どういうことだ?」
彼女は、昨晩起きたことをなるべくあやふやに説明しようとした。
「怪しい人影が叔父さんの家に忍び込んで、ベッドの下に隠れていました。私は怖くなって逃げ出したんです」
「それじゃあ、わたしの娘はどうなったのだ? 今すぐ助けに行かねば!」
今にも駆け出しそうな叔父を前に彼女はこう言ってのけた。
「それがロズの彼氏だったんですよ。もうわたしびっくりです。もうサヨナラ、サヨナラ、きれいなおねえさん!ってわけ。それで私は家に帰りました!」

「お前、自分がどんなことを言っているのか、分かっているのか?」
彼女はロズウェルが言った言葉を思い出していた。昨日起こったことを絶対に悟られちゃだめ、とロズウェルは懸命に彼女に頼んだのだった。
ここでびびってはいけない、と彼女は思った。


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