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作品名:サニーサイドアップ物語(sunny-side up tales) 作者:ブナ

第8回   緊迫
彼は一息ついて手で顔をこすると、声の調子をガラッと変えて言った。
「お聞き、カワイイ子ちゃん。私はもう行ってしまうよ。だけどお前さん、私の武器を返してくれよ。もし返してくれないとねえ、カワイイ子ちゃん、そいつは泥棒になるよ。
もし武器を返してくれたら、私は出て行く。約束だ! 誓うよ! ちょっとだけここを開けないか?指切りげんまんしよう!」

「いやよ! 開けるもんですか。もし指切りげんまんしたいのだったら、扉の下から手を出したらいかが?…」
彼は言われたとおりに手を差し込んだ。
「もしお前の白い手をつかんだら最後、なにが起こっても放しはしない!」
彼は心の中でほくそ笑んだ。

ギャーッ――という叫び!
彼はあわてて手を引っ込めたが、手首から先がない。
そして手首からは血が泉のように溢れ出していた。

「ハッハッ、この罰あたりめ! この仕返しは絶対にしてやる、血にかけて! いつかお前がお慈悲を乞うときがやって来る。しかしそれは効かないんだ。商人の娘よ!」
彼は手首を赤の外套で包み、痛みに耐えた。
「もうすぐ俺の手下達が獲物を求めてやって来るだろう! その時がお前の最後だと思え!」
彼はまるで酔っ払いのようにふらふらしながら階段をおりた。
降りた拍子に樽につまずき、地面に転んでしまった。

状況は変化したものの、ロズウェルにはこれ以上なす術がなかった。
使えそうなものがないか部屋の中をあちこち探し回ってみたが、血で真っ赤に染まった短刀とピストル以外なにもない。
ピストルで彼のとどめを刺そうか、と彼女は思ったが、相手は負傷してはいるものの、やり手の強盗だ。簡単に倒せるとは思えない。
ふいに後ろの窓に石が当たる音がした。
急いで駆け寄り、窓を開ける。
「ロズ! そっちに梯子を渡すから強盗さんに気付かれないように登って!」
開け放った窓の下には、逃げたはずの従姉が体を震わせながら立ち尽くしていた。


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