それでも彼女は眠ったふりを続けた。 男が背中を見せたとき、彼の姿を垣間見ることができた。 狐のしっぽがついている毛皮のふちなし帽と、赤茶色の長い外套を身にまとった男だった。 彼女はこの男こそ悪名高い強盗の頭目、ジャン・ド・ボールだと悟ったのだった。 男はまるで自分の家にでもいるように振る舞っていた。 大きなピストルや短刀をいくつもテーブルに置き、鼻歌を低く歌いながらワインの入ったグラスを傾けている。 ワインを飲み干すと部屋の扉の前に立ち、何やら考えている様子だ。 すると突然、シャツから笛を取り出し一気に吹き鳴らした。 森の奥の、夜の底を徘徊しているあらゆる者を呼び集めるかのような鋭い音だった。 男は笛の音がもっと響くように、階段を三段下りてもう一度かき鳴らした。 突然、ハッ、と彼は飛び上がった。 扉が! 扉が後ろでバタンと閉まったのだ! まるで風にあおられたかのように……。 彼はすぐに扉に飛びついた。 しかしそのとき、誰かが中で閂(かんぬき)を通す音を聞いた。 彼は扉をゆさぶったが、安堵のため息と笑い声を聞いただけだった。 憤った男は脅し文句を連発した。
「おい、おい、きれい子ちゃん! ジャン・ド・ボールをからかったら、ろくなことにならないぞ! 壁だって役に立たない。壊してしまう。お前さんの頭だって吹き飛ばしてしまうぞ!」
彼は扉をこぶしでドンドン叩きながら怒鳴っていたが、中からは物音一つ聞こえなかった。
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