彼女の母は厳しかったが、良いことをすると、とびきりのやさしい笑顔で、褒めてくれる人だった。 彼女はそれがうれしくて、いつも自分が良かれ、と思うことをやった。 その結果が裏目に出て、母親を困らせることも多々あった。 そんな時、母親はいつもこう言うのだった。 「あなたは調子に乗ると、ブレーキがきかないんだから。人の気持ちを考えられるように努力しないとだめよ」
父親が旅立つと、ロズウェルは牛に餌をやり、家を出た。 家の前方に広がる緑一色の牧草地を越え、一年中枯れることのない泉のそばまで来ると、 三本のナナカマドの木があった。 枝にはツグミが止まり、何やらにぎわっている。 彼女はここで一服いれることにした。 ナプザックから朝焼いたばかりのパンをとり出し、口に入れる。 口いっぱいに香ばしい匂いがひろがった。 おいしそうな匂いに気付いたのか、鳥たちが次々と寄って来た。 彼女と一定の距離を保ちながらも、ものほしそうにこちらを見つめている。 「しょうがないわね、これしかないけどあげる」 バンの切れ片を宙にほうると、地面につくより前に、一羽の巨大な鳥がそれをかすみ取った。 「なんて大きい鳥……。こんなの見たことないわ」 呆気にとられた彼女は、開いた口がふさがらなかった。 また鳥たちが騒がないうちにこの場を離れることにした。 見晴らしのきく青い尖った峰まで登ると、そこから先は至る所、森、森、森だった。
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