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作品名:サニーサイドアップ物語(sunny-side up tales) 作者:ブナ

第10回   赤目の逆襲
「私は自分の目の前で起こったことを言っているだけだわ。私はこの目で、ベッドの下にいた男の目を見たの。兎の目のように真っ赤で、けだものの目のように光ってた」

「その男が私の娘といちゃついていたと言うのか?!」
「信じられないなら、確かめに行けばいいじゃないですか」

商人は自分の家に向かって馬を大がけさせた。
この時、彼は持ち得るすべての理性を失っていた。
彼はひょうが降り、雷がとどろく嵐のような勢いで馬を走らせた。
家に着くと、三段跳びで階段を駆け上り、荒々しく扉を開けた。
ロズウェルは、いつも父が旅から帰って来た時にしていたように、膝をおってスカートを広げ、お辞儀をしようとした。
しかし、今にも蒸気を吹き出しそうに顔を真っ赤にした彼は、こぶしで娘を床にうち倒し、長靴をはいた足をあげて、綺麗に整った娘の顔を足蹴りにしようとした。
「このろくでなしめ! お前の従姉が言ったことは本当なのか? いい男が来て、ベットの下に隠れていたってのは?」
「ハー、そうよ、本当だわ、お父さん。いい男がやってきて……」
「この恥さらし! お前は私の顔に泥をぬったんだ! 村中のうわさになるぞ。
もうだれもお前にお前の手を求めに来ないぞ」
「そんなのお父さんには何も関係ないじゃない。わたしは一生、一人で結構よ」
彼はその言葉を聞いて愕然となった。
今まで手塩にかけて育ててきた自慢の娘が一生結婚しないだと?!
彼の顔は色を失い、しまいにはオイオイと泣き出してしまう始末だった。
彼に同情したのか、ロズウェルはしぶしぶこう言った。
「そんなに男の人の手がほしいなら、わたしはそのいい男の手をお父さんに差し上げるわ」
そういってあの血だらけの手と、ピストルと、テーブルと、短刀をテーブルの上に置いたのだった。


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