明け方の朝だった。 彼女は飛び起きた。 朝の光がやけに目にまぶしい。 急いで一階へ駆け下り、たるに汲んだ水で顔を洗う。 冷たい水が目に心地いい。 リビングに戻ると、旅支度を整えた父親がいた。 「では、行ってくる。早ければ水曜日に、遅くとも木曜日には帰って来るだろう」 「行ってらっしゃい」 彼は火曜日に開かれる、町の大きな市に行くのだった。市ではさまざまな物が売られている。 食物、衣類、家畜など、ここでは実に多くのものが手に入る。 この国のあらゆる人が、物を求めてやってくるため、商人としてこれを見過ごすわけにはいかないのだった。 父は自分の商品を馬に乗せおえると、たばこを吸い始めた。 「里へ行って、お前の従姉に来てもらうように頼んでおいで」 彼女はうなずき、窓の外を見た。 空はどんよりと暗い。 さっきまですっきりと晴れていた空は紗の幕にでも覆われたようだった。 三年前に母親を亡くし、ロズウェルは父親と二人暮らしだった。 家事は一人でこなさなければならず、大変なことばかりだった。 食事、洗濯、掃除。 やらなければならないことは山積みで、この時、初めて母の偉大さを感じたのだった。
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