「ねぇ、准一、こんなに早く何をそんなに慌ててるの?」
「何って!今日は冬樹たちと釣りに行く約束をしてるって言っただろう!」
「そうだっけ?」
時計を見るとまだ6時半だった。
大学生にとって朝の貴重な睡眠時間を奪われるのは最も辛いことであり腹立たしく感じる。しかし、そんなことお構いなしの准一の態度に年上の愛美はただ呆れるばかりで寒さに震えながら再びベッドに潜り込んだ。
そんな愛美の態度も可愛らしさの一つに感じている准一は、ベッドの上から愛美に抱き
「じゃあ、行ってくるね、チュッ!」とほっぺにキスをして部屋を出て行った。
「鍵は閉めておくから!」
合鍵でドアを閉め、急いで冬樹たちの待ち合わせ場所へ原チャリを走らせた。
准一にはあまり親しい友人はいない。しかし唯一、同じ薬学部の冬樹とは入学当時から馬が合った。 運よく薬学部が6年生になる前に入学していたので4年で卒業できるのだが愛美は医学部の為、准一より2年後になる。
元々准一は大学院へは進む気が無く卒業したら就職を考えていたので愛美とはしばらく遠距離になる。だがお互いの将来を考えればたかが二年、あっという間に過ぎてしまうと思っていた。
だから一週間後に迫る卒業式を少々不安に思うが、先日行われた薬剤師国家試験が終わったことで今はほっとしていた。
そんな二人が知り合ったのは准一が大学2年の学祭の時だった。 愛美も編入してきて初めての学祭で学内の学生と交わる唯一のきっかけだった。 感じたことはどこの学祭もそう変わりないことだった。しかし一つだけ違うことがあった。
それは准一との出会いだった。
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