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見えない城
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第34回
二人の城
そして金曜日の最終便で戻ってきた准一は自分のアパートには帰らず愛美のマンションに向かった。
疲れきった様子の准一は、愛美の顔をみると少し落ち着いたように見えた。
「准一、お疲れ様・・お父さんはきっと天国に逝けたよ。だからこれからは准一たちを見守ってくれるから元気出してね」愛美は、准一の為にあり合わせでピラフを作って元気付けた。
准一も通夜以来、空腹感を忘れていたが愛美の愛情で少し食欲が出た。
その夜二人はいつものように愛美の小さなベッドで愛し合った。
しかしその後数日で遠距離になってしまうお互いの寂しさは隠しきれず、いつもより激しく愛し合っていた。 ましてや通夜の夜、准一は精神的ショックで愛美を愛することが出来なかった気持ちからより一層、愛美の全てを脳裏に焼き付けておこうと全身で愛していた。 その晩、准一は久しぶりに深い眠りについた。
翌朝、一度自分のアパートに戻った准一は卒業式のスーツに着替えた。そしてケンジが他のメンバーも車に乗せて一緒に会場へ向かった。
冬樹たちも言葉少なめに准一を思いやった。男同士の友情に言葉は要らなかった。会場に着くと担当の先生が准一を呼び止めて今日の卒業式の打ち合わせをした。 以前にも何度か練習していたので心配はないが、やはり事情が事情だけに先生も気を使ってくれている。
しかし、もともと冷静な准一であったがさすがに卒業生代表の答辞となると違った。例年卒業生代表は医学部の学生が恒例であったが事は異例により准一に決まった。教授の中にも准一を医学部へ編入させてはどうか、という者さえいた。それだけ准一は信頼と熱意を買われていた。しかし准一の意思は固く大学院すらも進学せず就職を選んだ。しかも北海道の地域医療を望み地域密着型の薬剤師を目指した。心では父親が嫌いだと思っていてもDNAは酷似していた。
「准一、もし緊張したら俺のこと思い出せ」と鈴木が言った。
「なぜに鈴木を?」
「実は俺・・・ずっと前から准一が好きだったんだ・・・」
「おい!マジかよ!」とケンジが言った。
「うっそだよ〜」 鈴木は准一の緊張感を笑いで吹き飛ばした。
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