夏休み中、准一も愛美も研究室やレポートに追われた。
ましてや愛美は残り二年の医療実習の為バイトが出来なくなることを想定し、できる限りバイトを入れていた。
准一はそろそろ就職活動をしなければならない時期になっていた。普通の学部なら3年の末にはエントリーして4年には内定している場合が多いが、医療系は募集が遅い場合が多い。
特に市、県立病院は6〜9月に採用試験というところがほとんどだ。准一の意思は決まっていたがそこへ応募するには容易いことではないと踏んでいた。
ある日、准一は愛美に相談した。「北海道の病院を受けようと思うんだけど・・」 愛美は驚いたが、「准一がそうしたいのならそれがいいと思うよ。自分の人生だもの、自分で決めるのが一番。」
愛美は、いい加減ではなく自分が看護師を辞めて医学部に入学した経験を踏まえた上で准一に言った。
准一もどんな回答が戻ってくるか大よそ見当していたが、いざ決めるとなるとやはり迷った。しかし、一度決めたことは曲げない自分の性格を本人が一番分かっており、後日担当の先生に話をした。
採用試験の為准一は1泊で北海道へ向かった。
試験を受ける病院は函館にあるため今度は函館空港に降り立った。そこには若干の採用人数に十人ほどの学生、または有資格者が訪れ准一も久しぶり緊張感を味わった。 数週間後、一次の合格通知が届いた。
「よかったね!准一!これで一安心。」 「うん、でも、二次試験がまだあるからそれが受からないとね」
准一はさほど喜んだ様子もなく淡々と答えた。 そして二次試験の為、今度は日帰りで再び函館へ向かった。二次試験は適性検査と面接だった。准一がどう答えたかは知らないが、准一なら大丈夫と愛美も安心していた。
やはり数週間が過ぎた頃、採用合格通知が届いた。面接では地方医療についてかなり問い詰められて聞かれようで准一もその点は熱く愛美に語っていた。
早速准一は採用の手続きを行いその後、3月の国家試験に向けて意欲を見せた。
愛美は、よー子からあの事実の話を聞かされて以後、准一への愛と自分自身の医者への意欲を今まで以上に募らせ毎日を充実させていた。 しかし4月から准一が北海道へ行ってしまうことは間違いない。その寂しさは准一も同じである。しかしお互いの志す医療の精神は同じである為、遠距離恋愛になろうがそれは全く障害にはならなった。 むしろ愛美は二人で旅行した北海道を気に入り、准一がそこを選んだことをとても嬉しく思っていた。そしていつか自分も同じ大地で医療の職につきたいと思っていた。
3度目のイブを迎え、年が明けいよいよ国家試験の日が訪れた。准一たちは受験会場が近い為、気分的に楽だった。愛美はできるだけ准一の体調を労わり試験の数日前から食事にも気遣いをして差し入れしていた。
そして無事二日間の試験が終わり准一たちは緊張感から解放された。自己採点はしたものの結果は4月に入ってからなので正式な薬剤師としてはまだ先になる。
とりあえず、准一たちは卒業し合格を手にするまでは冷や冷やが続くのである。
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