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作品名:見えない城 作者:ながいみち

第21回   二人の絆
ようやく愛美は昼頃になってベッドから起き上がった。

「今日はどうかなぁ・・釣れてるかなぁ・・」

冬樹たちと釣りに行っても大物が釣れたためしが無い。しかし小振りなら堤防近くで十分コアジが釣れる。

そんな時は愛美が唐揚げにして皆で食べる。なかなか新鮮で十分なカルシウム補強になる。

准一はもともと釣りは趣味でなかったが、愛美と付き合い始めたあのコンパの夜から徐々に変わっていった。

「ねぇ、愛美さんはいくつ?」
「あのさぁ〜、愛美さんっていうのはよしてくれない?」

「どうして?だって先輩でしょ?」
「そりゃ先輩だけど・・・さん付けはねぇ〜・・」

「分かった、愛美さんが気に入らないのなら・・・苗字で呼ぶ?川原さんって?!」
「ちょっとぉー喧嘩売る気??」

「ごめんごめん!冗談だよ〜」
准一は友達にも見せたことの無い表情でおどけてみせた。

「愛美でいいよ・・・」
愛美はちょっと照れくさそうに言った。

「愛美かぁ・・・愛美ちゃん・・」
「だめ!ちゃん付けは!」

愛美は准一の冗談でさえも真剣に言った。
「分かった!分かった!ま・な・み」
「うん・・それでいいよ・・。じゃぁ〜准一くんは准一でいいね。」

「もちろん、それでいい」

二人は付き合い始めた深夜、准一は愛美をマンションに送り届けた。

「ありがとう、私ここだから。」
「そう、ここなんだぁ。結構僕んとち近いね。」

准一はそう言うと、バイクにエンジンを掛け、「じゃ−おやすみ!」
そう言って走り去って行った。

事実上准一にとって初めての彼女であり、愛美にとっては約2年ぶりの恋愛の始まりだった。しかしこの恋愛が人生最大の悲恋の始まりになるとは誰も気付かなかった。

そもそも人嫌いというか、人見知りというか准一には友達が少なかったが冬樹だけは唯一話せる友人だった。

大学に入ってから知り合ったのだが、何となく気が合うらしい。冬樹は中学の時から空手を習っている。
今でも時間が空くと道場へ行き体を鍛えているが、准一は中高とバスケをやっていたらしいが今はどのサークルにも属していない。

ただ分野に拘らない読書が好きで何時間でも立ち読みできる特技を持っている。学生ならではの節約術でもある。

愛美たちが付き合い始めると冬樹たちも気を使って准一をあまり誘わなくなったが、もともと気にするタイプの准一ではないので全く平気だった。

しかし、校内では学部が違うこともあり、一緒にいることはない。そういう時は男同士で和気藹々とやっているようだ。
2年から編入した愛美は医学生として必死に勉強した。一般教養や一部医療系の単位は履修してあったが専門分野は受けてないので留年だけはしないようにと必死だった。
しかも学費を稼がなければならなかったので他の学生のようにコンパは極力抑えた。

付き合い始めて1ヶ月が過ぎた初冬、愛美のマンションへ准一がバイクでやって来た。

平日なのでバイトは無い。そう分かっていた准一は4階に明かりが点いているのを確認すると階段を一歩一歩踏みしめて上がった。

「ピンポ〜ン!」

チャイムが鳴ると愛美がインターホンから返事をした。

「はい、どなたですか」
「僕・・」

「准一?!ちょっと待ってね、今開けるから!」
そう言うと直ぐにドアチェーンが開いて愛美が出てきた。

「どうしたの?突然こんな時間に?」
愛美はそう言うと准一を部屋に入れた。時間は9時を過ぎていた。

「うん・・・愛美の顔が見たくなって・・・」
「どうしたの?今日学食で合ったじゃない!」

愛美と准一の学部は学生食堂を共有している。だからできるだけ昼は一緒に食べるようにしているのだ。
それに愛美が医学部だということから勉強も大変だろうし、バイトもあるから准一は自分の気持ちを強く押し付けないでいた。

「今コーヒー入れるね。こんなに冷たくなって!早くコタツに入って!風邪引いちゃうよ!」

准一の体は初冬の外気にさらされジャンバーを着ていたが手は氷のように冷たくなっていた。

愛美は湯を沸かしコーヒーを入れた。

「温か〜い・・・。」
「ったくどうしたのよぉ、こんな時間に。」

「うん・・だから・・愛美に逢いたくなったって・・・」
小さなコタツに二人は座った。

そして二人の間にほんの少し時間が流れた。

「准一、私も准一が大好きだしいつも一緒に居たいなぁって思うよ。だからお昼もできるだけ一緒に食べるようにしてるし話もたくさんしているじゃない?」

「うん・・・だけど・・」
准一は愛美を困らせていることが分かっていた。

しかしそれ以上に愛美は准一の気持ちを察していた。だからこそ准一の求めに応えてあげたい・・・でも愛美の傷付いた心はソレを受け入れる勇気が出ないでいた。

「准一・・」

そう愛美が呟いた時、准一の冷たい手が愛美の頬を撫でた。
冷たかった・・・。冷た過ぎて心もこんなに冷え切ってしまっているのだろと思った瞬間、准一への愛しさが身体中から沸いてきた。

愛美はその冷たい手の上に自分の手をあてがった。
「愛美の手・・温かい・・・」 

愛美は寄り添う准一の横顔に自分の唇を近づけ頬にキスをした。准一の緊張感が伝わってきた。

准一は愛美の頬に当てた手を自分の顔に引き寄せ唇と唇を重ねた。キスというより重ねただけと言った方が正解である。愛美は「初めてなんだ・・・」と直感した。

愛美は寄り添う准一の腰に腕を回し重なった唇を少し離した。
「准一・・・唇強く重ねると痛いよぉ・・・」

「あっ・・・ごめん・・・」

愛美は優しく微笑んで准一に言った。
准一も照れくさそうに赤くなった。

愛美は少しお姉さん振るって、
「いいよ、気にしないで。誰でも初めては分からないしね。それに准一のファーストキス、私が貰っちゃったから、ラッキー!」

准一はその場がとても楽になり緊張していた体がスーッと楽になるのを感じた。そして愛美への愛情が最頂に差し掛かったその時、

「愛美・・・」
准一の唇が再び愛美に重ねられた。

しかし今度は違っていた。准一の優しさが唇から入り込みまるで唇と唇が会話でもするように重なり合ったり離れたり吸い付いたり、キスだけでこんなに感じ合うなんて愛美は久しぶりに男の腕の中で溺れた。

愛美は初めてでも必死にリードしようとしている准一が愛おしくて可愛くて全身で愛を表現したいと思った。

狭い部屋で抱き合うには愛美のベッドしかない。しかも規定より少々小さめのベッドである。しかし愛し合う二人にとってそんなことは関係なかった。

きしむベッドで准一は愛美の少々小振りの乳房に吸い付き、教科書通りに体を重ねた。

愛美は二年前を思い出していた。二度と恋愛はしないと思ったのに・・・と。

しかし若い男の行為には愛美が知らない力強い激しさがあった。
准一は愛美の聖地に彷徨った。愛美はそれに気づくと軽く腰をずらし准一のソソリ立つモノにそっとあてがった。准一は勢いよく聖地に突進した。愛美はその太さと激しさに脳天を突かれるような快感を浴びた。

「あっ・・・・」准一は激しく腰を振った。数秒後准一はそのまま愛美の聖地で尽き果ててしまった。

「准一・・・」

愛美ははっきりと二年前の行為との違いに気付いた。

「ごめん・・・どうしても我慢できなくて・・・」

愛美は願った・・・。どうぞ・・・妊娠しませんようにと・・・。


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