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作品名:見えない城 作者:ながいみち

第2回   2
これと言って大捜査本部が置かれるような事件が発生する町ではない。
あるとすれば、愛美がちょっとした買い物に原付バイクで外出した際、住宅街の十字路で左わき道から右折して来た軽自動車に接触され、バイクの一部が破損したことと、右大腿部が軽い打撲になったことぐらいである。

相手は20歳の女性でしかも一歳に満たない赤ちゃんを乗せていた。
幸い保険には加入しており、一旦停止していた愛美に過失は見られなく全額相手が負担することになった。

この話を愛美の姉に話したところ、「私なら病院代や修理代はもちろんだけど、通院や通学用のタクシー代もしっかり貰っちゃうよ!こういう時にこそ、取れるものは取らなくっちゃね。」と、あっけらかんと言い放った。
愛美はそういう姉の性格とは違い、あまり物事にこだわらないタイプであった。

しかし、姉から譲り受けたバイクは修理され以前より調子がよくなり、保険会社から少しではあるが見舞金も貰った。

実は高校生の時にもT字路の横断歩道を自転車に乗って渡っている時、青信号で右折してきた乗用車に跳ねられたことがある。
たまたま当たった箇所が自転車の側面だった為、大事には至らなかったが、当たった衝撃で自転車から弾き飛ばされ車のボンネットの上に転がり落ちたらしい。
本人は事故が起きた瞬間から地面に落ちるまで記憶がなかった。
たまたま角にあったガソリンスタンドの店員が一部始終を目撃していた。
加害者は車を脇に止めた。しかし直ぐには降りて来ようとはせずにじっとしていたらしい。

スタンドの店員は慌てて近寄り「大丈夫ですか?」と声をかけたところ、

「はい!大丈夫です。私平気ですから、帰れますから!」と、立ち上がって言ったらしい。
愛美は、何か自分が悪いことをしてしまったかのように逆に罪悪感を抱いた。
それに普通に立つことも出来たし、これといって痛む箇所はなかった。
しかし、自転車の芯は曲がり動かせる状態ではなかった。
この時初めて事の大さを感じ心臓が弾けんばかりにドキッドキッ波打ち始めた。今まで立っていた腰は抜けその場にしゃがみ込んでどうしてよいか分からなくなった。

「あなた学生さん?」

「はい・・高校生・・」愛美は振り絞る声で言った。

「ご両親は?携帯持ってる?電話した?」と、店員は優しく問いかけた。

愛美は、「はっ・・」と我に返って「はい、母に・・します」そう言うと鞄から携帯を取り出し母に連絡を取った。
その時、誰が呼んだのか救急車のサイレンの音が近付いて来た。

事故現場は事故のせいで渋滞が始まり、近場の住宅街からは野次馬らが見物に来ていた。

「大丈夫?お嬢さん!」
「あら?運転手は?」ガヤガヤ騒がしく人だかりになっていた。

その時やっと運転していた加害者が車から降りてきた。
30代前半って感じの極普通の男性であった。その男性は言葉少なめに「すみません・・・大丈夫ですか・・」と、ぼそぼそ小声で言った。


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