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作品名:見えない城 作者:ながいみち

第15回   15
時計が12時に近づいていた。

「シャワー浴びていいよ」

平柳が言った。

「あっ、ありがとうございます。でも、自分の部屋に戻って浴びますから・・・」
愛美は微笑んで身支度をした。

まだ何となく湿っている聖地に心地よい感触が残っていた。

「愛美ちゃん、私は今日のことは出来心とは思っていない。だから私を信じて欲しい。」

「えぇ・・分かってますから。私も先生のこと大好き。」
二人は再び抱き合ってキスをした。平柳は離れることを寂しく感じた。

「じゃぁ、おやすみなさい」

愛美はそーっと、部屋のドアを開け外に誰もいないのを確かめるとエレベーターに向かった。

都合よくドアが開いた。そして下へと向かった。誰も廊下にはいなかった。
愛美は自分の部屋に入り込み、ため息をついた・・・。

「これでよかったんだ・・・」

愛美は先ほどの余韻を感じながらシャワーを浴びた。

身体には平柳が愛撫した感触がはっきり残っていた。その証拠に右乳房上には薄紫色になったアザがあった。

「キス・・・マーク・・?」

愛美は初めてのそれにさえも絶頂感に似たトキメキを感じた。
聖地を極めた陰部はまだ火照りが残っていた。シャワーで滑りを洗い流しバスローブに着替えた。

その夜、思い出すたび繰り返されるアノ場面に初めての経験の興奮があった。






「♪♪♪・・・・」携帯が鳴っている。

「あっ!・・・」

それはよー子からの着信だった。

「もしもし、よー子!」
「愛美おはよう!起きてる?!」

「うん、今起きた・・・」
「やだ〜もう8時だよ!そろそろ朝食バイキング行こうよ!」

「うん、分かった。支度するから待ってて・・・」


そう言って携帯を切った。
眠れない夜をウトウト過ごして寝坊した・・。

まっ、今日は10時にチェックアウトして横浜へ帰るだけだからいいかっ。
愛美は慌てて着替え薄化粧をした。

バイキングには、既に先輩たちが朝食を食べていた。
よー子と愛美もトレイを持って思い思いのメニューを乗せた。

「ちょっと、よー子、朝からそんなに平気?」

「当たり前よぉ〜!これくらい、昨晩なんかあれら梅田まで行ってたこ焼き食べてお土産まで買ってきちゃったぁ」と、元気満々のよー子だ。学会の緊張感なんて既になかった。

「ちょっとぉ、愛美〜、もっと食べなきゃだめよ!サラダとコーヒーなんて!!」
よー子が言った。

さすがに今一食欲が無い。と言うより恋わずらい?ってか・・・。もちろん昨晩のことは秘密である。

大学も同じだったよー子にさえも言えない。これが普通の恋愛なら思う存分聞いてもらえるのであろうが・・・。

「うん、昨晩少し飲んだでしょう〜、それが効いたみだいで、やっぱり学会疲れ?な〜んちゃって!」と、わざとらしくおどけて笑顔を見せた。

「まっ、いっか、それよりここのアップルパイ有名らしいよ!せっかくだから食べて行こうね。」とよー子が言った。

愛美は上の空で、平柳の姿を探した。一番奥の席で若手の医師と食事をしていた。
もちろんこっちを気にしてる様子はない。むしろ知らない素振りだ。
何も無かったように愛美もよー子と一緒に平柳から少し離れて座った。

口にしたアップルパイは評判通り美味しかった。朝から食べられるようにあっさりした甘みで、シナモンの香りが食を進めた。

「ねぇ〜?愛美?」
「うん?」

「昨日の夜、どこか行ってた?」
「えっ?!どうして??」

「うん、別になんでもないけど、私が11時半頃帰ってきた時、灯りが消えてたし一度ノックしたんだけど返事が無かったから・・」

「そう・・・?部屋にいたけど・・・もう寝てた・・。」
「そっかぁ!たこ焼き買ってきたから一緒に食べようと思ったんだけどね。後で全部食べちゃった。」

よー子は何の疑いも無くそう言った。

「おはよう、昨晩は眠れましたか?」と平柳が挨拶してきた。

「はい!梅田まで出かけましたが、ぐっすり!アップルパイもいただきました!」
とよー子が挨拶をした。

振り向くと笑顔で平柳が愛美にも微笑んだ。

「あっ・・、おはようございます。昨晩は豪華な会食ご馳走様でした。学会も勉強になりました。」

愛美も昨晩は何も無かったように振舞った。

「そうですか、それはよかった。10時には帰りますので遅れないように。」
そう言うと、平柳医師らは部屋へ戻った。 

愛美は心臓がバクバクして顔が真っ赤になった。

「ちょっと、愛美?どうしたの??なんだか慌てて??」

「いえ!そうじゃなくて、やっぱり医科部長じゃない?緊張するでしょう!」

「まぁ〜ね。でも平柳部長は気さくだし優しいし、看護師にも人気あるから私は結構いけるかも!」

「えっ?!!!よー子部長のこと好きなの?!!」

「好きっていうより、尊敬ね。だってさぁ〜年が年よ?父親くらいじゃなぁ〜い?やだ〜愛美、変なこと考えないでよ!」

「そうだよね??・・・ごめんごめん・・・」

よー子は愛美が平柳のことを想っていることを全く気付くことはなかった。



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