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作品名:Parfum noir 作者:aqua

最終回   1
この瞬間が切ない。

さっきまで私の喘ぎ声が響き、

いやらしい音を立てていた部屋が急に静まり返る。

神崎潤一が私のマンションのドアを閉め、

自宅へと帰った後の一人残された部屋。

2つのワイングラスと、食べ残したチーズの皿を

キッチンに片付けて私はシャワーを浴びた。

神崎潤一と知り合ったのは1年前。

私の経営する飯倉の小さなランジェリーショップ

【Parfum noir】に神崎が経営する会社の商品を

納入したことがきっかけだった。

神崎の会社はヨーロッパのブランドランジェリーの

総代理店になっており、世界的に名の知れた下着ブランドは、

ほとんど神崎の会社が扱っていた。

神崎と知り合いだという、私の友達の裕美が

アポイントを取り付け3人で会うこととなった。

彼の行きつけのフレンチレストランで

その時初めて神崎潤一に会った。

ヨーロッパには展示会がある度に出掛けている神崎は、

フランス語とイタリア語が堪能で、

180cm以上ある身長に上質なスーツを着こなし、

少しくせ毛でウェーブのある白髪交じりの髪を

きっちりと整えていてクールな印象を受けた。

きっと、ヨーロッパの男性に混じっても

見劣りする事などないだろうと思われた。

それから程なく、私は神崎の会社と契約を交わし、

ホテルで行われる春夏の展示会の招待を受けた。

そして、とても優秀な営業の男性を

私の店の担当として選んでくれた。

商品はどれも素晴らしく私が迷っていると、

神崎は売れ筋や私の店に合った品数をアドバイスした。

それから1週間後に最初の品物が納品され、

残りは徐々に6月位までに納品され、

サイズ切れが出たらその都度発注することになる。

飯倉と言う場所柄、ヨーロッパの高級ランジェリーは飛ぶように売れた。

昼は界隈に住まうマダム、

夜は高級クラブにお勤めする女性が

出勤前に立ち寄ってくれた。

それに加えて、私のフッティングと顧客管理が受けて

女性雑誌の取材を何件か受けた。

【小嶋奈々が教えるバストアップ術】とか

【若きカリスマ小嶋奈々のボディの秘密】とか

恥ずかしくなるようなタイトルを付けられた。

そんなある日、そろそろ閉店準備をしようかと

思っていた頃に神崎は店にやってきた。

「お久しぶり、どうかなお店のほうは?」

「あっ!神崎さん、すっかりご無沙汰してしまって、

おかげ様で売上げも順調です。

本当にありがとうございます」

「ご活躍、色々なところで拝見していますよ」

「いやだわ、お恥ずかしいです。こんな小娘が・・」

「小娘だなんて・・立派な経営者ですよ」

「神崎さん、今からお時間ございます?

宜しかったらお礼にお食事でも?

そろそろ閉店しようかと思ってたので・・」

「あっ、失礼。僕から誘おうかと思って、

実はこの時間を狙って来たんだけどね」

神崎は笑った。

「じゃ、少し表でお待ち頂けますか?すぐに参ります」

「あぁ」

急いで店を閉め、私達はそれから神崎が通っているという

パルマ産の生ハムが美味しい

外苑西通り沿いのイタリア料理の店に入った。

その時初めて、私達はプライベートな事も話した。

神崎は家族の事や海外での失敗談、

私は故郷の事やショップを立ち上げるまでの事などを・・・。

神崎は饒舌に話しても、どこか冷たい印象がある。

今年で56歳になったという神崎は私の父より1つ下だ。

私は父と同じ位の年齢の神崎を

異性として意識している事に気が付いた。

「奈々さんは、お幾つなの?」

いつの間にか神崎は私の事を、

小嶋さんから奈々さんと呼び名を変えていた。

「27歳です」

「そう、じゃ僕の息子より1つ下だ」

「神崎さんも私の父の1つ下です」

「そうか、お父様と同年代なのか。

それは参ったな、奈々さんの事を口説けなくなちゃったな」と笑った。

それから神崎とは何度か食事をし、

私達が男女の関係になるまで時間は掛からなかった。

私は、神崎を尊敬していた。

企業家として、日本ランジェリー協会の役員として、

親善大使として、日本の下着業界に貢献した神崎と

そうなれた事を誇りに思っていた。

私は白金の自宅マンションのスペアキィを神崎に渡してあり、

逢瀬はいつも私の部屋だった。

いつも、神崎はシャワーを浴びた私に、

もう一度下着を付けるように指示する。

神崎曰く、女性の肢体は全裸より

ランジェリーを付けている時の方がよりセクシーだと言う。

それも、高級なレースのランジェリーであれば尚更良いと言うのだ。

その日も私は、淡紫の薄いレースのブラジャーに

Tバックのショーツを身に着け、シルクのガウンを羽織り、

Parfum noirという店の名前の由来にもなった黒い香水を纏った。

Parfum noirの甘く危険な香りを神崎は好んだ。


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http://ameblo.jp/puri-aqua/entry-10072626558.html


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