いったいどこで間違ったんだ? 僕の住む村、ここ、ハル国のロッコ村。他の村より2倍くらい歩行スピードが遅いと噂される、穏やかな空気が特徴の村だ。森の中にちっちゃく寄せあうように存在するこの村は、村人40名という本当に小さな村である。運命の日、3月初めでまだ少し寒さの残る空気の中に、暖かい陽が僕の部屋いっぱいに射し込んでいた。空でゆっくり歩みを進める雲。木の葉はかすれあい心地良い音をたて、鳥達はチュンチュン、ポッポと楽しそうに歌っていた。いつもと同じ、はずだった。 再度問おう。いったいどこで間違ったんだ? PM12: 00。いつも通りの遅過ぎる僕の起床である。それから僕はいつも通り素早く着替え、いつも通りぼさぼさ頭で部屋を出た。トン。トン。僕は跳ねるように階段を降りる。それから僕は物置へと向かった。いつも通りリュ―兄が物置に居た。赤茶色の髪と同色の目をもつ面長な顔。ひょろりと細長い体をした人の良さそうな彼は僕の兄だ。 リュー兄が僕を見て「サンは女の子らしくないな」と笑った。これもいつも通り。あぁそう、僕は女の子だ。僕という自称のために僕はよく男の子に間違われるけれど、正真証銘女の子で女の子をやめたつもりもない。その割には外観が女の子らしくないと決まって言われるんだけど――僕は物置にかけられた立ち鏡を見てため息をついた。寝癖が跳ね上がった長めのショートカットに、大きなポケットが両脇についたカーキの半ズボン。白の五分丈のタートルネックセーターと、同じくタートルネックの深いベージュベストを上にはおった、少年のような女の子が鏡を通して僕を見ている。もちろんアクセサリーはつけていない。まるで女の子らしくない僕。 「よし、寝坊の罰だ」 閑話休題。リュ−兄が僕に優しく微笑む。 「小麦粉買ってきてくれ」 リュ −兄、小麦粉は3日前に買ったばかりだってば。相変わらずのハイペース消費だと思いながら、僕はクルーと道具屋のおじさんを訪ねることとなった。ちなみにクルーは僕の親友でカーバンクル。カーバンクルだからクルー。単純だ。ちなみにカーバンクルとは猫科に属する生物のことだ。ふわふわの毛並みや完全猫の顔つき体つきは猫と何が違うのかわからないけれど、額にあるルビーのような紅い宝石はあるところが特徴である。クルーは金色の毛並みが奇麗なべっぴんさんでもある。背は80センチとちょっと大きめな女の子。体重はひみつ。女の子だから、内緒だ。 「おはようございます。おじさん、小麦粉ください」 「くるっぷー」 ちなみにくるっぷーはクルーの鳴き声。 「おう、サン、クルー。リューの奴、また掃除してんのか」 道具屋のおじさんは大口をあけて豪快に笑った。いつも爽快に笑う人なのだ。一方で僕は苦笑いを返した。おじさんの言葉どおりリュー兄は掃除になぜか小麦粉を使う。更に掃除大好き、キレイ好き。おかげでこの村の家庭内小麦粉消費率はうちがトップだ。うちは3人暮し――クルーもいれてね――なんだけど。僕はお金を渡し、おじさんから小麦粉を受け取った。小麦粉はいつも通りの値段だった。しかし僕が道具屋を出ようとした、その時だった。 「あぁそうだ、お前にいいものやるよ」 とおじさんが言い出したのだ。 これだ! これがまず一つの間違いだったのだ。だいたい豪快なくせしてケチなおじさんが、僕に物をくれるなんておかし過ぎる。――本人の前じゃそんな事言えないけど。僕はおじさんから差し出された紙切れを受け取った。それは名刺サイズの薄い紙切れだった。
「福引き券?」
まさかこの、福引き券と言う名の紙切れが、あんなものに変わるとは。
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