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作品名:ココロの傷。 作者:maru

第16回   16
技術系の仕事をしていたので、転職は簡単だった。

けれど、新しい彼は同じように簡単には出来なかった。

それは当然のことだった。知り合ってすぐ付き合い始めたような人と

何年も付き合った彼とを比べても仕方ないんだ。

「何にもわかってくれない。」なんて当たり前なんだ、知らないんだから。

それでも一人が寂しいから、手頃な人と付き合っては別れたりを繰り返した。

今ならわかってるつもりだ、寂しいから誰でもいいから一緒にいたいなんて

相手にも失礼だ。

でも、その歳になっても私は自分のことばかり考える女だったんだ。

そんな事を繰り返していたある日、あの人に出会ったんだ。

本当は甘えたいのに、なかなかうまく甘えられない私が

その人にはすぐに甘えられたんだ。よりかかることができたんだ。

何を話しても全部受け止めてくれる気がしたんだ。

たったそれだけだった、理由は。

私は彼と結婚することになったんだ。

初めて彼を両親に紹介したとき、母はお風呂場で一人泣いたそうだ。

なぜお風呂場なのかとか、そんなことはどうでもよくて

彼はきっと、兄に似ていたんだ。

顔とかではなくて、雰囲気が・・・。

私は母の涙の訳を、勝手にそう解釈した。

その頃、私が家を出てもう1年が経とうとしていた。

父も母も彼に会ってとてもうれしそうだった。

もう離婚の心配はなさそうだと思った。


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