そうだったんだと思う。だって私にはあまりにも受け止めがたい現実だったから。
あまりこんな事ちゃんと考えたことなかったけれど、私の中で何となく想像していたのは
兄が結婚して、私が結婚して、それぞれの家に子供が生まれたりして
子供が大きくなって、その子供が結婚して家庭を築いて、そしていつか父や母は亡くなり
自分も「おばあちゃん」とか呼ばれるようになって・・・って事。
うまく言えないけれど、年子の兄は私の人生の中でかなりの年月を共有できる肉親のはずだったんだ。
当たり前に、私の人生の中で存在し続ける人物だったんだ。
おかしい、間違ってる。
だってありえないから。
だから受け止める訳にはいかないんだ。
甘ったれのまま24歳まで生きてきた私が、急に兄がいなくなったからしっかり出来る訳がない。
突然、大切な息子を奪われて悲しみに打ちひしがれている両親から目を背けることしかできないだめな私だ。
生まれて初めて父の涙を見てしまった。悲しみの涙だ。
兄がこん睡状態の間ずっと泣きながら祈り続けていた母が、気丈にふるまう姿が余計に苦しかった。
私はそんな時、心の中は怒りばかりだった。
兄の命を奪った、飲酒運転の男への怒り。
父が病院に戻ってきてタイミングよく心臓マッサージをはじめて終わらせた医師や看護婦の茶番劇。
無神経に墓石の案内の電話をしてくる人々。
何の連絡もなく突然家にやってきて、罪が軽くなるようにしてくれと頼んで母を苦しめた飲酒運転の男。
兄の命を金勘定する親戚。
人間なんてみんな最低だ、私も最低だ。
ヤケクソになった。
消えてしまいたかった。
でも、どんなに私が最低でも、私は両親より先に死ぬことだけは絶対許されない。
バカだけどそれだけはわかっていた。
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