実はこの時の記憶は、はっきりしている部分と不鮮明な部分が入り混じっている。
翌日、私は兄の携帯を見て彼女らしき人へ連絡した。
留守電になったので、事故のことと病院名を簡単に入れて切った。
その日の夕方、彼女が病院へやってきた。
初めて会う兄の彼女。
優しくて凛としている彼女。
私と同い年の彼女。
初めて会うのがこんなかたちでなければ・・・。
すごくつらいのは彼女も同じなのに、彼女と話をすることで私は少し元気づけられたんだ。
それから親戚やら、兄の関係の人たちが続々と見舞いにきてくれた。
しかし、兄はずっと眠っていた。
3日間ずっと眠り続けた。
そして次の日の朝、父が家の様子を見に帰っている間、看護婦が呼びにきた。
「すぐにお父様に戻ってもらってください。」
もう何となく意味はわかった。
父が病院へ戻ると私たち3人は、兄のいる集中治療室へ案内された。
医師が慌ただしく心臓マッサージを始めた。
ドラマなんかで聞き覚えのある「ピッピッピッピッピッ。」っという機械音がだんだん速くなっていく。
「ピーーーーッ。」
医師だか看護婦だかが、時刻を読み上げる。
本当に型式どおり、ドラマのまんまだ。
ドラマのまんまだから、これがどういう事を表しているのかもわかっていたはずだ。
でも、何の感情も湧いてこなかった。
だって、見た目は何も変わっていないから。
5分前も今も同じく、そこに兄は眠っていたから。
いなくなったとか意味がわからない。
私、バカなのかな?
こういうの、現実逃避っていうのかな?
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