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作品名:ラビリアンファンタジー Comical Memorys 作者:ディオス

第8回   第六話 樹霊の都

ネリネからの依頼を受けてゼルキアスにやって来たマサシ達はハーフエルフの集落のあるペリシャムスの森へ向った。そして森の中へと入り、ハーフエルフの集落である樹霊の都へ着いたのだ。

「ここが樹霊の都か・・・」
「よく見ると全部植物でできてるみたいよ」

マサシ達は集落の入り口らしき門を見上げる。その門は柱が木で出来ており、屋根は葉で出来ていた。そしてロープの変わりに植物の蔓(つる)が使われていた。

「この先に依頼主であるハーフエルフ達が居るんだな?」

マサシがネリネの尋ねると、ネリネは頷きながら言った。

「ええ、まずはハーフエルフの長老であるノーゼルダム殿に会いましょう」

樹霊の都に入ろうと門へ近づくマサシ達。すると、何処からか声が聞こえてきた。

「止まれ、何者だ!」
「ん?何だ?」
「皆、あそこ!」


ジゼルが指差す方向を見ると、門の上に二つの人影があった。それは耳の尖った少年と少女だった。少年の方は金髪の短髪に葉と木の皮で出来た服を着て、腰には二本の短剣が収めてあった。少女の方は金色の長髪に男と同じ葉と木の皮で出来た服を着ており、弓矢を持っている。二人は門から飛び降り、マサシ達と門の間に着地した。まるでマサシ達の行く手を阻む様に。

「何だ、お前達は?」
「それはこっちの台詞だ、お前達何者だ?」
「貴方達、見たところ人間ね。何をしに来たの?」

マサシの質問に鋭い視線で問い返す二人。この二人は樹霊の都の入口を守る者、言わば門番なのだ。そして耳が尖っていると言う事は、この二人はハーフエルフ。二人は突然集落にやって来た人間に驚き、マサシ達を止めたのだ。門番としての職務を全うする為に。

「貴方達、ハーフエルフよね?」
「そうだが、それがどうした?」
「い、いいえ。どうしたって言われても・・・」

確認の為に尋ねただけなのに、再び問い返され戸惑うジゼル。すると、ジゼルの隣で今度はマサシが尋ねた。

「何だか敵意の篭った眼だな・・・ハーフエルフってのは俺達人間と交流があるんじゃないのか?」
「交流があるだけで我々ハーフエルフ全てがお前達人間をよく思っているわけではない」
「お前達にだって人間の血が流れてるんだろ?」
「関係ないわ。私達はエルフよ、人間じゃないわ」

全く警戒を解こうとしないハーフエルフの少年と少女にマサシは頭を掻きながら困った顔をする。すると後ろの方に立っていたネリネが前に出て来た。

「私は王都ロードグラン騎士団長のネリネ・クリシェールと言う者だ。私達は貴方達の長老であるノーゼルダム殿からの手紙を受け取りここに来た」
「何?ノーゼルダム様の・・・?」
「ええ、貴方達ハーフエルフとライトエルフの争いを止めるためにロードグランから来た。ノーゼルダム殿に会わせてくれないだろうか?」

いつもの態度とは違い、今のネリネは一人の騎士として、堂々とした態度でハーフエルフと向き合っている。そんなネリネを見てマサシ達は少し驚きの表情を見せる。

「ノーゼルダム様に呼ばれたという証拠、つまり手紙はあるのか?」
「手紙はここに・・・」
「貴方達、どうしたの?」
「「「!」」」

集落の中から聞こえてくる女性の声に一同は集落の方を見た。彼等の眼の先には葉と木の皮で出来た服、そして深緑のマントを纏った一人の少女が歩いてくる姿があった。耳が尖っており金色の長髪をしていた。しかし、門番である二人とは何処か雰囲気が違っていた。

「セピリア様!」

セピリアと呼ばれるその少女は門番である二人の間に入って来て改めて尋ねた。

「一体どうしたの?」
「いえ、この者達が突然私達の集落にやってきたので・・・」
「ん?・・・・・・あら、人間じゃない。珍しいわね」

セピリアはマサシ達を見て顔を乗り出した。その表情には警戒ではなく興味がある様な表情があった。

「貴方達、ここは何しに来たの?何か御用?」
「あ〜、え〜っと、君は?」

まるで珍獣を見つけたかのような視線で自分達を見るセピリアに戸惑うマサシ達。そしてマサシはとりあえずセピリアに何者なのかを尋ねる。

「ああ、ゴメンなさい。私はセピリア、ハーフエルフの長老ノーゼルダムの娘よ」
「ノーゼルダムさんの娘さん、ですか・・・?」

ハーフエルフの長老の娘だと名乗るセピリアに思わす聞き返すコンタ。その後ろでレイナが腕を組みながらセピリアに尋ねた。

「警戒心がまるで無いな、私達を見て何とも思わないのか?」
「何ともって、どうして?」
「ハーフエルフは私達人間と交流があるが全員が人間を良く思っていないと聞いたのだが・・・」
「え?誰がそんなこと言ったの?」

マサシ達はセピリアの隣に居る門番の少年と少女を見た。マサシ達の視線の先を見たセピリアはハァ〜と溜め息をついて二人の方を見た。

「もう!貴方達、そう言う事を言うから人間達との関係がこじれるんでしょう!」
「で、ですが、ハーフエルフ全てが良く思っていないのは事実です」
「良く思っている者が居るのも事実でしょう、どうしてそうやって関係を悪くするような言い方をするの!?」
「す、すみません・・・」

セピリアに怒られて凹む門番の二人。セピリアは再びマサシ達の方を向いて小さく頭を下げた。

「ゴメンなさい、この子達は門番の仕事柄外から来る人達に対して警戒心が強いのよ。でも決して悪気があるわけじゃないの、だから許してあげて」

二人に変わり謝罪をするセピリア。だがマサシ達は怒る様子は見せなかった。

「別に怒っちゃいないさ」
「うん、突然来たんだもん、警戒して当然よ」
「そう言ってくれる助かるわ、ありがとう」

マサシとジゼルの言葉を聞き笑って安心するセピリア。そしてセピリアは改めてマサシ達が樹霊の都に来た理由を聞いた。

「そう、貴方達がお父様の依頼を受けてきた人達だったの、そうとは知らずに本当にゴメンなさい」
「だからもういいって、それよりもノーゼルダムさんの居る所に案内してくれないか?」
「分かったわ、ついて来て」

セピリアはマサシ達を連れて樹霊の都の門を潜っていく。門を潜ると大きな広場が目に飛び込んできた。周りを大きな木で囲んでおり、その中に木で出来た無数の一軒家、広場の端に出店、とても静かで平和な所だ。そんな穏やかそうな都にマサシ達が入った途端、彼等は注目の的となった。それもそのはずだ、エルフの集落に人間が来るなんて事は今まで一度もなかったのだから。セピリアの後ろをついて歩くマサシ達は自分達を見つめるエルフ達の視線に少し戸惑いを見せていた。

「ね、ねぇマサシ、あたし達さっきからジーっと見られてるんだけど・・・」
「そりゃそうだろう、エルフの住んでいる集落に人間が来るなんてないからな。驚いてるんだろう」
「でもハーフエルフは人間と交流があるんでしょう、だったらそんなに驚く事もないんじゃ・・・」

マサシとジゼルが話していると後ろにいるレイナが話に加わってきた。

「ハーフエルフはこの樹霊の都から出て人間の村に行く事はあっても人間が自分達の集落に来ることはなかったのだ、例え交流があっても驚くのは当然だろう」
「そうなの?」
「あくまで私の推測だ」

マサシ達が小声で話をしているとセピリアが立ち止り振り返った。

「着いたわ、ここが私の家」

セピリアがマサシ達に自分の家だと言って一軒の家を見せた。その家は他の家と違い二階建ての大きめの家だった。屋根や窓には緑の葉が沢山つけられており、丸太でできた階段、そして入口の両端に立てられた松明。集落の長が住むに相応しい家と言える。

「ここにノーゼルダム殿がいらっしゃるのですね?」
「ええ、お父様は二階の長老の間にいらっしゃるはずよ」

ネリネの質問にセピリアは丁寧に答える。そしてマサシ達はセピリアに連れられて家の中へ入って行った。二階へ続く道を進んでいき、マサシ達は二枚扉の前で立ち止まりセピリアが扉をゆっくりと叩くいた。

「お父様、王都ロードグランからの使者が参りました」
「お通ししろ」
「失礼します」

扉の向こうから年配の男の声が聞こえ、セピリアは静かに扉を開けて中へ入って行き、マサシ達もセピリアに続いて入室した。部屋に入ると、部屋の奥で大き目の椅子に座りこちらを見る高齢のエルフがいた。髭を生やしセピリア達と同じような枯葉と木の皮で出来た服を着ている。彼こそがハーフエルフ達の長老ノーセルダムだ。マサシ達は少し離れた所で立ち止まり、セピリア一人がノーゼルダムの近くまで歩いていき一礼をした。

「お父様、この者達がロードグランから来られた使者の方々です」
「そうか、ご苦労だったなセピリア。お前は下がりなさい」
「ハイ」

セピリアは部屋の端まで行き腕を背中に回して目を閉じる。それを確認したノーゼルダムはマサシ達の方を向き挨拶をする。

「よくお越し下さった。私が長老のノーゼルダムと申します」
「ロードグラン騎士団の団長、ネリネ・クリシェールです」

二人の挨拶が終わると、ネリネは自分の後ろにいるマサシ達を見て彼らの紹介をしだした。

「彼等は私と共に今回の一件をお手伝いする者たちです」

紹介をされたマサシ達は順番に名を名乗っていく。

「傭兵団神龍(シェンロン)の団長、秋円マサシです」
「神龍の副団長のジゼル・アルフォントと申します」
「月本コンタです」
「ユピローズ王国サンドリア銃士隊長、レイナ・スズキです」
「よろしくお願いします。・・・しかし、傭兵だの他国の騎士だの構成がバラバラですな?」

ノーゼルダムの言葉にネリネの表情が曇る。何もできないことに罪悪感を感じているのだろう。

「今回の件に我が国の重役たちは関わる事を強く否定しました。その為我が国の戦力を大きく動かせなかったのです・・・」
「・・・・・・そうですか、やはりハーフエルフの頼みを快く引き受けてくれる者は少ないのですな」

落ち込むような表情をするノーゼルダム。部屋の端では同じような表情をするセピリア。そんな二人を見たネリネは更に罪悪感を感じてしまっていた。

「申し訳ありません・・・」
「いや、貴方が謝る必要はありません。これは仕方のないことです。我々はエルフと人間の二つの血を持つ存在、すべての人間に受け入れてもらうのは無理かもしれません」
「そんな事・・・」
「そんな事ありません!」
「「!」」

突然聞こえてくる声。一同は声の主の方を見ると、マサシが真剣な眼差しでノーゼルダムの方を見ていた。

「お互いを理解するのに純血や混血、種族も関係ありません。お互いを理解しようという気持ちがあればそれでいいんです。俺達地球から来た人間も、ジゼル達ラビリアンに住む人間と住む世界も環境も違います、ですが俺達はこうして手を取り合うことができました。それはお互いに相手の気持ちを理解しようという意志があったからです。あなた方ハーフエルフも必ず人間と共に生きることができます。必ず・・・」
「・・・・・・」

マサシの強い思いの籠った言葉を聞きノーゼルダムは目を閉じて何かを考えている。そしてしばらくして目を開き小さく笑った。

「フフフ、貴方のような事をおっしゃる人間がいるとは思しませんでした」
「あ、い、いや・・・す、すんません、つい熱くなって」
「いやいや、貴方のおっしゃる通りだ。諦めたらそれで終わりです。時間は掛かってもいつかは分かり合える日が来る、理解し合う心が大切だ。その日まで決して諦めてはいけない、と言うことですな・・・」

心を打たれたのかノーゼルダムからさっきまでの曇った表情はなくなっており、セピリアも少し嬉しそうな表情をしていた。そんな二人を見たネリネも嬉しそうな顔をする。

「それにしても・・・」

今度はコンタがマサシを見上げて話し出した。

「マサシがそんな事を言うなんて思わなかったよ」
「ああ、普段のお前なら熱くなって言う言葉ではない」

コンタに続いてレイナが腕を組みながら言う。そんな二人の言葉にマサシは眉をピクッと動かして二人の方を見た。

「ちょっと待て、それじゃあまるで俺は交流や和解の事に関して無関心みたいじゃねぇか!」
「違うのか?」
「当たり前だ!」
「まぁ私達地球の人間とラビリアンの人間が共に生きる事ができるようになったのはお前のおかげでもあるからな。そういう事にしておこう」
「何か癪に障る言い方だな・・・」

納得の行かない表情でレイナの顔を見るマサシ。彼の隣ではジゼルが優しそうな笑顔でマサシ達のやり取りを見ていた。

(レイナはそんな風に言ってるけど、あたし達と貴方達が手を取り合う事ができるきっかけを作ったのは紛れもなく貴方よ。皆貴方に感謝してる、勿論あたしもね)

ジゼルは心の中でマサシに感謝をする。実際ジゼルの考えている通り多くの人々はマサシに感謝をしている。当然コンタやレイナ、ネリネもその一人である。しかし当のマサシは全く気付いていないようだ。

ハーフエルフの長老ノーゼルダムとその娘セピリアに出会ったマサシ達。この後一体どんな出来事が待ち構えているのか、それはまだ誰にもわからない。


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