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作品名:ラビリアンファンタジー Comical Memorys 作者:ディオス

第6回   第四話 帝国だった国と聖天使との再会

いつも変わらない平和で静かな日常、ユピローズ王国の首都サンドリア。マサシとジゼルはいつものように酒場で壁に張られている依頼紙を見ていた。

「今日は依頼が少ないなぁ」
「依頼が少ないっていうのは良い事じゃないの?それだけ平和だって事なんだから」

腕を組みながら依頼紙を見るマサシと依頼の少ないことに小さく笑いながら言うジゼル。するとマサシは頭をボリボリと掻きながら言った。

「確かにそうだけどよ、だけどそれじゃあ俺達傭兵は食っていけないぜ?」
「まぁ、確かにそうだけどね・・・」

マサシの言う事に苦笑いをしながら納得するジゼル。そんな時、酒場の入口の方から女性の声が聞こえてきた。

「マサシ、ジゼル」
「「?」」

自分達の名を呼ばれて入口の方を向く二人。そこには銃士隊長の服を着たレイナと地球とラビリアンのデザインを合わせた様な服を着たコンタが並んで歩いてきた。

「やぁ二人とも」
「どうしたんだ?コンタはともかく、レイナがこの時間に酒場に来るなんて珍しいじゃねぇか」
「今回は仕事で来たんだ」
「仕事?」
「ああ」

マサシの質問にいつもの様に静かな表情で答えるレイナ。今度はジゼルがレイナの隣にいるコンタに質問をした。

「じゃあコンタはレイナの仕事を手伝っているの?」
「う〜ん、そんなところ。実を言うとすぐそこでレイナと偶然会っただけなんだけど、レイナが手伝って欲しいって言うから手伝う事になったんだ」
「そう言う事だ。実はここに来たのも傭兵協会に仕事の依頼するためなんだ」
「そうなのか。でもどうしてわざわざ傭兵協会に依頼しに来たんだ?王宮の兵達なら俺達傭兵の手を借りなくても大丈夫だろう?」

さっきまで仕事が少ないとぼやいていたマサシが今度は何故依頼しに来たのかと尋ねる姿を見てジゼルは静かに溜め息をついた。

「その兵達の殆んどが別の任務にあたっていて人手が足りないのだ。なにより今回の任務は大人数では行えないんだ」
「どういう事だ?」
「話す事はできない。最もお前達がこの依頼を受けて手伝うというなら話は別だがな」
「フ〜ン、面白そうじゃねぇか。いいぜ、その依頼受けてやる。なぁジゼル?」
「そうね、レイナが依頼に来ると言う事は普通の任務じゃなさそうだし、あたしも手伝うわ」
「助かる」
「因みに報酬はどれ位だ?」

手の親指と人差し指で丸を作り報酬金額を聞くマサシにジゼルとコンタはジト目になった。

「しっかり報酬の事は聞くんだね・・・・」
「当たり前だろ、頼まれる以上きちんと聞いとかないとな」

ジト目のコンタを見ながら言うマサシ。レイナは懐から紙を取り出し仕事の内容を説明しだした。

「報酬は1000ロドル、危険度は3だ」
「依頼の内容はどうなんだよ?」
「分からない」
「「え?」」

依頼を受ける身でありながら依頼の内容を知らない。そう言うレイナにマサシとジゼルは思わず声を出した。

「知らないって、どういう事なの?」
「・・・実はこの依頼は『この国』の依頼ではないのだ」
「この国じゃないって、ユピローズ王国が出す依頼じゃないの?」
「詳しいは話はここではできない。場所を変えよう」

そう言ってレイナは酒場から出て行った。お互いの顔を見合うマサシとジゼル。そしてコンタも腕を組んでレイナの背中を見ていた。どうやらコンタもまだ依頼の内容を聞いていないようだ。三人は酒場を出てレイナの後を追った。酒場を出たマサシ達は人気の少ない空き地のやって来た。誰もいないことを確認したレイナは改めて話を始める。

「今回の仕事の依頼してきたのは、ゼルキアスなのだ」
「「「ゼルキアス!?」」」

ゼルキアスの名を聞き三人は声を揃えて訊き返した。

ゼルキアス(ゼルキアス共和国)
かつてはゼルキアス帝国と言われていた軍事国家。半年前にマサシ、コンタ、レイナの三人が居た傭兵会社ライトシンフォニアの宿敵、ヘルデストロイヤーによっと帝都ロードグランが制圧され、大きな爪痕を残した国だ。皇帝は殺害され、今では軍事力が大きく低下してしまっている。しかし、皇帝が死んだ事により政治は少しずつ変わっていき、今では帝国だった頃よりも住みやすくなっていると言われている。

「ゼルキアスからの依頼ってことは、依頼主は元老院のジジイどもか?」

マサシは依頼人を想像してレイナに尋ねると、レイナは首を振って答えた。

「いや、元老院の連中がユピローズに依頼をしてくる事はない。かつてこのラビリアンでも一二を争う軍事国家だったんだ、皇帝は死んでも元老院はほぼ全員生き残っていた」
「成る程な、皇帝に仕えていた元老院が昔は自分達よりも劣ると思っていた国に依頼するなんて、プライドが許さないって訳だ」

元老院の考えを読んだマサシは腕を組みながら言った。すると今度はジゼルがレイナに尋ねた。

「それじゃあ、誰が依頼してきたの?」
「ネリネだ」
「えっ、ネリネが?」

依頼主の名を聞きジゼルは驚いた。今は忘れてしまっているが、自分の実の姉が依頼してきたのだから当然だろう。

「確かネリネは大戦の後にゼルキアスに戻ってもう一度騎士団に入ったんだよね?」
「ああ、最初は裏切り者だって周りから冷たい目で見られてたみたいだぜ」
「でも今は皆から信頼されている騎士団長になったって前の手紙に書いてあったわよ」

三人は大戦後のネリネの事を振り返りながら話している。すると、レイナが咳きをして三人の意識を自分に向けた。

「オホン、続けていいか?」
「あ、ああ、ワリィワリィ・・・」

簡単に謝り、三人は再びレイナの方を向いた。そしてレイナは真剣な表情で話を続ける。

「国が他国に依頼をする事はこれと言って悪い事ではない。だがプライドの高い元老院の連中の耳に入ったらネリネは間違いなく何らかの処分を受ける事になる」
「それに昔とは言え、ネリネは一度ゼルキアスを裏切ったんだ、今の状態で何かトラブルが起きたら大変ってことだな?」

マサシの言葉にレイナは黙ったまま頷いた。マサシに続いて今度はコンタが話し出した。

「しかもレイナ達銃士隊に依頼をする位なんだから、危険度は低くても何か重大な内容なんじゃないかな?」
「あたしもそんな感じがするわ」

コンタに言う事に同意してジゼルも軽く頷きながら言った。

「よし、三人とも早速出発だ。準備ができ次第、家に来てくれ」
「OK!」

コンタは親指を立てて街の方へ走って行った。

「レイナ、お前は他の銃士隊員達に出発の準備をさせてきてくれ」
「その必要は無い」
「ん?どういう事だよ?」
「今回の任務に行くのは私だけだ」
「・・・・・・は?」
「あ、貴方一人?」

予想していなかった言葉にマサシとジゼルは思わず聞き返してしまった。

「言っただろう、今回の依頼は大人数では行けないと」
「そ、そうだけど、せめて二三人位は連れてきても良いんじゃ・・・」
「今この町に居るのは入隊したばかりの新人だけだ。他の隊員は任務に出ている。それに今回はあまり無関係な人間を連れて行くわけにも行かない、お前なら分かるだろう」
「うう〜、確かに、な・・・」

少し納得のいかない表情をするマサシとジゼル。それから数十分後にコンタが準備を終えてマサシとジゼルの家にやって来た。そして四人はマサシの自動車に乗り込みゼルキアスに向かって出発した。





サンドリアを出発して3時間ほど、マサシ達は国境を越えてゼルキアスの首都ロードグランの北門の前に到着した。門の警備兵に簡単な説明をすると警備兵は門を開きマサシ達を通した。実はマサシ達、つまり元神竜隊の隊員達はこの世界では英雄と言われているので理由を簡単に説明するだけで他国の町や施設に入ることを許されているのだ。要するに身体検査や確認などは不要という事になっている。

「さて、ロードグランに来たはいいけど、これからどうすんだ?」

運転をしながら後部座席に座っているレイナに訊くマサシ。レイナは前を指差して説明を始めた。

「あそこに見える建物に向ってくれ」
「ん?アレか?」

マサシが前を見ると、周りの建物よりも少し大きめの青い屋根の建物を指差した。

「あれは騎士団の訓練所だ。この時間だとネリネはあそこで訓練をしていると手紙に書いてあった、恐らくネリネはあそこだろう」
「OK!」

マサシはアクセルを踏み、スピードを上げて訓練所へ向かって車を走らせた。そして訓練所に着くと近くに車を止めてマサシ達は降車した。入口らしいドアの前で見張っている警備兵に事情を話すと警備兵はドアを開けて入所を許可してくれた。四人は訓練所を見学しながらネリネを探していると、広い部屋へ出た。そこは体育館ほどの広さで、木でできた人形をが部屋の隅に幾つも置いてある。その人形と向かい合って剣の練習をしている剣士や、人形ではなく人間で同士で稽古し合っている剣士も居た。

「どうやらここが一番大きい訓練部屋みたいだな」
「結構人が居るね」

マサシとコンタが少し驚いた様子で周りを見ていると何処からか女性の声が聞こえてきた。

「ここは実際に木剣を握って訓練をする部屋だからいつも人が多いのよ」

四人がフッと声のしたほうを向くと、そこには騎士の鎧とマントを纏い、腰には騎士剣を納めているピンク色の髪をした女性が立っていた。そう、かつてマサシ達と共に戦った聖天使人の末裔であり、ジゼルの姉であった女性、ネリネ・クリシェールだ。

「ネリネ!」
「久しぶりだね」
「ええ、本当に久しぶりね。特にコンタなんて最後にあったのは何ヶ月前だったかしら?」
「忘れちゃったよ」
「フフフ、そうよね」

久しぶりに再会したコンタと簡単な挨拶をしたネリネは今度はジゼルの方を向いた。

「ジゼル、久しぶり、調子はどう?施設を建てるお金は溜まった?」
「うん、少しずつだけど溜まってきてるよ。この調子ならあと1年ほどで溜まるかな」
「そう、施設が完成したらお祝いを持って行くわ」
「ありがとう」

自分を忘れてしまった姉、そんなネリネの顔を見てもジゼルは表情を崩す事はなかった。その事は既に半年前に終わらせたのだ。今のネリネはジゼルにとって大切な肉親であり、友人であるのだ。

「ところで、レイナも一緒って事は、あの手紙の事で貴方達は来たって事よね?」

急に真剣な表情になったネリネにマサシ達も真面目な顔をした。レイナは手紙を見せてネリネに尋ねる。

「詳しく聞かせてくれないか?手紙には依頼の内容が書いてなかった、それはつまり直接お前の口から聞かせたいと言う事だろう?」
「流石レイナ、鋭いわね。と言うよりこの状況だとそう考えるのが普通ね・・・」

ネリネは前に垂れている髪をゆっくりと後ろにやり四人を見て口を開いた。

「城へ行きましょう、私の部屋で説明するわ」

ネリネはそう言って訓練部屋から出て行こうとする。そんな彼女の後ろ姿を見てマサシが止めた。

「おいおい、訓練してる連中に言っておかなくていいのか?」
「大丈夫よ、今は自由時間で私も様子を見に来ただけだから」
「ふ〜ん。なんなら代わりに何か言っておいてやろうか?例えば『あと4時間訓練していったら飯をおごってやる〜』とか」
「ちょ、ちょっとやめてよ、ここに居る騎士だけでも二十人以上いるのよ?いくら私でもそんなに沢山の騎士達にご飯はおごれる余裕は無いわよ」
「ハハハ、冗談だよ冗談」
「まったく、相変わらずねマサシは・・・」

昔と変わらずチャランポランな性格にネリネも少し悩まされているようだ。しかもなぜかマサシが言うと冗談であっても本気に聞こえてしまう時があるため本気になってしまうのだ。それが何故なのかは誰にも分からない。久しぶりにゼルキアスに来てネリネと再会したマサシ達。しばしの間だけ再会を喜んではいたが、すぐに依頼の事で小さな緊張が走る。果たしてネリネが依頼しようとしている仕事の無いような何なのだろうか?


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