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作品名:ラビリアンファンタジー Comical Memorys 作者:ディオス

第3回   第二話 新生活と新入団員

久しぶりにコンタと再会したマサシとジゼル。そして酒場でレイナともバッタリ会い再会を祝って食事をする事になった。

「注文した料理は全部きたのか?」
「ええ、それにしても凄い量ね・・・」

テーブルに座るマサシが隣に座っているジゼルに尋ねる。そしてテーブルの上を見ると、幾つもの大皿とそれにのっている料理を見て少し目を丸くした。勿論ジゼルも同じだ。そして二人が座っている反対側では笑いながら料理を見るコンタと静かに酒を飲むレイナが座っていた。

「おいコンタ、本当にこれ全部お前が注文したのか?」
「勿論、久しぶりにサンドリアに戻ってきたんだもん、お腹一杯食べるつもりだよ。なんなら二人も食べる?」
「いや、食べるとかの問題じゃなくて、これ全部の金を払うのは・・・俺達なのか?」
「そりゃそうだよ、さっきおごるって言ったじゃないか」
「で、でも、この量はちょっと・・・ねぇ?」
「ああ・・・」

苦笑いしながらマサシの方を向くジゼルと、同じ様に苦笑いをするマサシ。そんな二人にはお構い無しにコンタは料理を小皿に盛っていく。

「おい!少しは遠慮しろよ!」
「おごってもらうのに遠慮する必要は無いでしょ?それに、僕が遠慮というものを知らない事は君が誰よりも知っているはずだけど?」
「うっ・・・!」

コンタに痛いところを突かれて言葉を止めるマサシ。長い付き合いであるコンタはマサシの性格や考え方を把握しきっている。これは同じ神竜隊であった彼だからこそできる方法だ。

「・・・ハァ、分かったよ。好きなだけ食ってくれ」
「観念したみたいだな?」
「他人事だと思って・・・」

隣の席で小さく笑いながら酒を口にするレイナとそんな彼女を見て疲れたような顔をするマサシ。ジゼルも苦笑いでグラスの飲み物を口にしていた。

「ところで、何か依頼は来てたのか?」

マサシが隣に座っているジゼルに依頼の事を尋ねるとジゼルはグラスをゆっくりとテーブルに置いた。

「殆んどが他の傭兵達に取られちゃってたわ。残ってたのは一つだけ」
「そうか、それでどんな依頼があったんだ?」
「小さな村の警護と修復の依頼よ」
「警護と依頼?」

少し変わった依頼にマサシは聞き返し、コンタとレイナも飲食を止めてジゼルの方を向いた。少し考えていたマサシが再びジゼルに尋ねる。

「どんな内容なんだ?」
「ちょっと待って、内容を紙に書いてきたの」

ジゼルは服のポケットの中から小さな紙を取り出した。マサシはテーブルの上の皿を動かして紙を置くスペースを作ると、ジゼルが広げた紙を置いて説明を始めた。

「依頼主はポルランティアって言う村の村長。数日前から村の畑の作物や食べ物が仕舞ってある倉庫が荒らされたみたいなの。荒らされた跡を見ると明らかに人間の仕業じゃなかったみたい」
「村の近くに住んでいる獣達の仕業じゃないのか?」
「最初は村の人たちもそう思ってその時は深く考えなかったみたい。でも、それから数日後にまた食べ物が荒らされたのよ。そして、今度は村で飼っていた山羊や牛が襲われたの」
「山羊や牛が?」

動物が襲われた事を聞き少し驚くコンタ。マサシとレイナも驚きはしていないが表情が鋭くなっている。

「これには流石に村の人達もおかしいと思ってその日から見張りを置いて犯人を調べてみようとしたみたい・・・でも、その見張りをしていた村人達もその犯人に襲われた」
「何?」

動物だけでなく村人まで襲われた事には流石にマサシも声を出した。

「幸い、襲われた村人はみんな無事だけど全身に酷い傷を負ってたみたい。そして、村人達の目撃では、犯人は十数匹の獣のような生き物だったみたい」
「やっぱり獣の仕業だったのか・・・」
「でも、その獣達はまるで統率された兵隊みたいに正確な動きをしていたって言ってたみたいよ」
「統率された獣、かぁ・・・ジゼル、その依頼の危険度は?」

話を聞いたマサシがジゼルに依頼の危険度を尋ねる。どうやら彼はその依頼を受ける気の様だ。ジゼルは紙の一番下に書いてある危険度を指差した。

「敵の正体が分からない上に村人が襲われたから、とりあえず協会は危険度を2にしてたわ」
「危険度2か、敵の正体が分からないのに随分と低いレベルだな」

マサシは危険度の低さに腕を組みながら考える。

「報酬は160ロドル、村が出す事のできる最高金額よ」
「随分と少ないね。いくら危険度が低くてもその額じゃ依頼を受ける傭兵は出てこないんじゃない?」
「村の食料が荒らされた挙句、家畜や村人まで襲われたのだから仕方が無い」
「確かにそうだね」

今度は報酬の少なさにコンタが首を傾げ、レイナが考えを言った。

「よし、それじゃあ、その依頼を受けるとしますか」
「それじゃあ、あたしはカウンターに行って依頼を受けてくるね」

ジゼルは小さく笑ってカウンターの方へ歩いていった。どうやらジゼルはマサシがこの依頼を受けると確信していたようだ。ジゼルがカウンターに向った後にコンタとレイナもゆっくりと立ち上がった。

「面白そうだね、僕も一緒に行くよ」
「私も行こう、仕事は全て片付いたし、久しぶりに傭兵に戻ってお前達と依頼を受けてみたくなった」
「フッ、お前達ならそう言うと思ってたよ」

コンタとレイナを見てマサシはニッと笑う。嘗て共に多くの依頼を受けて完遂してきた神竜隊の仲間、そしてその仲間と再び依頼を受けられる喜び、三人は目の前の戦友を見て傭兵としての意思を強くした。

「お待たせ、受けてきたよ」

カウンターから戻って来たジゼルの手には依頼内容などが書かれた紙が持たれていた。

「よし、行くか。確か村はポルランティアだったな?」
「うん、サンドリアとゼルキアスの国境の近くにある村よ」
「足で行くと丸一日掛かるな。車で行こう、それなら半日で着く」
「えっ!マサシ車持ってるの!?」

マサシが車を持っていることに驚くコンタ。マサシは頷いてキーを見せた。

「ああ、ユウタが物資をこっちに持ってくる時に頼んどいてな、前の物資配達の時に受け取ったんだよ。因みにエコカーだぜ」
「でも確かこっちの世界で車を走らせるには各国の許可書や免許が必要なはずだよ?それにお金だって掛かるんでしょ?」

コンタの言うとおり現在のラビリアンはまだ自動車が少ないため、ラビリアンで自動車を走らせるには各国の許可証が必要なのだ。それに物資配達とは言え、その物資はラビリアンの提供する物。手に入れるためには金が必要、だがマサシはその全ての条件をクリアし、ラビリアンで自由に自動車を走らせる事ができるのだ。

「でも、俺はこうやって車を持っている。俺達の稼ぎなら車を買う金なんて簡単に稼げるのさ」

マサシはニッと笑いながらキーを回した。コンタはホゥ〜と納得する。が、その後にマサシの「ある」言葉に気付きニッと笑いマサシとジゼルをチラチラと見る。

「『俺達』ねぇ、二人の稼ぎなら確かに楽勝だねぇ〜、息もピッタリだし」
「なっ!お、俺はそういう意味で言ったんじゃ・・・それに、ジゼルも一緒に金を稼ぐって言って・・・」
「あれ?僕、一言もジゼルの事とは言ってないよ?」

ニヤリと笑いながらマサシの顔を見るコンタ。その瞬間マサシは「しまった!」と言う顔をして顔を赤くし黙りこんだ。

「フッ、久しぶりの事だからこんな簡単な引っ掛けにも掛かる様になってしまったか」
「アハハハ、そうかもね。でも、前の手紙を見たときは驚いたよ、マサシとジゼルが婚約したって書いてあったから」
「・・・・・・バカ」

レイナとコンタからさり気なく目を反らし、マサシの方を向き、彼と同じ様に顔を赤くし小声で言うジゼル。マサシはジゼルの方を向いて無言で謝る。二人が恋仲だと言う事は神竜隊の全員は以前から知っている。だが、二人の婚約した事を聞いたのは最近の事、しかもこの事はラビリアンに居る隊員しか知らない。つまり、地球に戻ったユウタとシオンは知らないのだ。

「そういえば、手紙には書いたけど、直接言うのはまだだったね。マサシ、ジゼル、婚約おめでとう!」
「あ、ありがとな、コンタ・・・」
「ありがとう・・・」

顔を赤くしてコンタに礼を言うマサシとジゼル。そんな時、助け舟を出したのか、ただの気まぐれなのかレイナが話を終わらせた。

「話はまた今度だ、今は依頼を遂行することが先だ」
「そ、そうだったな。それじゃあ、俺とジゼルが借りてる家に行こう、車はそこに止めてある」
「へぇ〜、二人の夢のマイホームってやつ?」
「違〜うっ!」
「コンタ、何だかしばらくして性格変わってない?」

からかわれて怒るマサシとコンタの変わりようを見て苦笑いするジゼル。そんなやり取りをしながら四人はマサシとジゼルの住んでいる家に向かうため酒場を後にした。酒場を出てしばらく歩き四人は一軒家の前までやって来た。二階建てで庭も付いている、マサシとジゼルの借りている家だ。

「ここがマサシとジゼルの借りてる家?」
「ああ、本当は二つの家族が住むために建てられた家なんだけど色々ありそうだから二つとも俺達が借りてるんだ」
「相当儲かってるようだな?」
「ハハハ、まぁな」

レイナに稼ぎの事を言われて笑いながら家に入っていくマサシ。その時、四人の背後から声が聞こえてきた。

「団長ーっ!」
「ん?」

団長と呼ばれて振り返るマサシ。どうやら団長とはマサシの事のようだ、他の三人も振り返ると一人の少年が走ってくるのが見えた。緑色の短髪に腰には二本のバトルアックスが納められていた。外見はマサシよりも年下もしくは同い年に見える。その少年は三人も前までやって来て立ち止まった。

「団長、探しましたよぉ・・・ハァハァ」
「アックス、どうしたんだ?」
「どうしたもこうしたも、前の依頼の結果を知らせようとしたのに、団長が見当たらないから探し回っていたんですよ」
「ああぁ、そう言えばそんな事言ったな。ワリィ、忘れてた」
「しっかりしてくださいよぉ!」

チャランポランなマサシに疲れきる様子を見せるアックスと呼ばれる少年。そんな二人のやり取りを見てコンタがジゼルに尋ねる。

「あの人誰?」
「彼はアックス・ジャルサスといって一ヶ月前にうちの傭兵団に入団した新人なの。病気のお母さんや家族を養うために入団をして来たの。あとは英雄と言われているマサシに憧れて入団したってところね」
「マサシの造った傭兵団、確か神龍(シェンロン)だっけ?今だに人気衰えずだね。まぁ英雄の造った傭兵団だから当然かぁ」
「アイツはそれだけの事をやったのだからな。それに、英雄と呼ばれて慕われているのはアイツだけではない」

レイナはそう言ってジゼルやコンタを見た。ラビリアンを救った英雄と呼ばれているのはマサシだけではない、ジゼルやコンタ、そしてレイナも今でも英雄と呼ばれて慕われている。だがマサシとジゼルの二人だけは世界を滅ぼそうとしたディアボロスとルシフェルを倒した事で他の五人よりも強く英雄と言われている。しかし二人はその事を何とも思っていないようだ。そんな時、アックスがジゼルの方を向いて軽く頭を下げた。

「どうも、副団長」
「しっかりやってるみたいね。新しい部隊はどう?もう慣れた?」
「相変わらず先輩達にこき使われていますよ。でも少しずつ俺に期待してくれるようになってきています」
「そう、それはよかったわ」

ジゼルは微笑んで小さく頷く。その隣でコンタが両手を後頭部に回してアックスを見上げながら言った。

「なかなか頼もしそうな人だね」
「ん?・・・副団長、この子は?」
「ああ、アックスは会うのは初めてよね。彼は月本コンタ、あたしやマサシ、そしてレイナと同じで元神竜隊の一人だった子よ」
「ええっ!?あの英雄と言われた神竜隊の一員?こんな子供がですか?」
「こ、子供・・・」

身長も伸びて少しずつ大人になりつつある自分を子供扱いするアックスを見てコンタは眉を動かして反応する。

「おいおい、見た目で人を判断するなよアックス。コイツは子供でも俺の相棒だったんだぜ?」
「そ、そうなんですか・・・でもとても英雄には見えませんが」
「うう〜・・・・」

マサシがフォローを入れても今一つ信じていないアックスにコンタもだんだんイライラしてきたようだ。

「だったらコイツと勝負してみろ、そうすれば分かる」
「え、勝負ですか?」
「ああ」
「?」

コンタは驚いてマサシの顔を見上げる。

「いや、しかし・・・」
「もしコイツに勝ったら部隊長にしてやってもいいぜ?」
「ええっ、部隊長!?本当ですか?」
「ああ、お前さえ良ければな」
「や、やります!」
「ちょ、ちょっと!」

ジゼルがマサシの服を掴み彼の耳を自分の顔の前まで持ってきた。

(まだ入ったばかりの新人を部隊長にするなんて、どういうつもり?)
(アイツはちょっと思い上がる癖があるからな、コンタと戦わせて自分の考え方が甘いって事を気付かせてやらないといけないと思ったんだよ。それに、コンタも子供扱いされてイラついてるみたいだからな、少し仕返しさせる機会をやろうと思ってな)
(ハァ、成る程ね・・・)
(勿論、本当にコンタに勝ったら隊長にする事は考えるさ。コンタに勝てるのなら力では合格だ。隊長としての素質もまだ未熟だけど才能はあるからな。最もコンタが負けることはないけどな)
(意地悪ね)

少し悪戯半分でコンタとアックスを戦わせようとするマサシは笑いながらジゼルを見た。ジゼルも「仕方ないわね」と言いたそうな顔をしながら小さく笑う。

「二人とも、何を話してるんですか?」
「いや、何でもない。それよりアックス、俺達はこれから依頼を受けてゼルキアスに行くんだけど、お前も来るか?」
「いいんですか?」
「ああ、その依頼が終わった後にコンタと勝負すればいいしな」
「そうですね、そうしましょう!さあ早く行きましょう!」
「「・・・・・・」」

ヤル気満々のアックスをコンタとレイナは黙ってジーっと見ていた。

「ああいう所も直した方がいいかもね・・・」
「そう、かもな、ハハハハ」

マサシとジゼルも苦笑いをしてアックスの欠点を直そうと話し合う。新しい依頼を受け、依頼主の待つゼルキアスの国境の村ポルランティアへ向うマサシ達。新人のアックスも同行する事となり依頼がやや騒がしくなりそうだが、マサシ達は一切気にしていない様子だ。


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