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作品名:ラビリアンファンタジー Comical Memorys 作者:ディオス

第2回   第一話 再会と過去への振り返り

暖かい日の光が降り注ぐ春の季節、気持ちの良い風が吹く草原。丘が幾つもあり、辺りは一面緑で小さな花が所々に咲き世界の平和を物語っていた。ここはユピローズ王国の首都サンドリアの近くにある「ティンクルス草原」と呼ばれている所だ。その草原の丘で横になっている一人の少年がいた。髪は栗色でラビリアンと地球の衣服を合わせた様な長袖長ズボンの格好をしていた。そして彼の隣には一本の剣が置かれていた。そう、元神竜隊の一人、秋円マサシである。

「・・・・静かだなぁ。何時までもこうしていたいよ」

風を感じながら目を閉じて昼寝をしているマサシ。そんなマサシにゆっくりと近づいてくる人影があった。マサシは起き上がる事無く目を閉じたまま近づいてくる人影に言った。

「よくここが分かったな?」
「貴方は仕事が無い時や退屈な時はいつもここで昼寝をしているからね。家に戻ったら居なかったから、もしかしてと思ったの」
「成る程、俺の行動パターンは把握してるってわけか」

マサシはゆっくりと起き上がり声の主を方を向いた。そこにはピンク色のツインテールに長袖とミニスカートをという格好をしている少女が立っていた。

「まぁこっちに来て座れよジゼル」

そう、その少女こそ嘗てマサシと共に戦った傭兵の少女、ジゼル・アルフォントだ。ジゼルは笑いながらマサシの隣までやってきて腰を下ろし、持っていたバスケットを自分とマサシの間に置いて中からリンゴを取り出しマサシに差し出した。

「食べる?」
「ああ、ありがとう」

ジゼルからリンゴを受け取ったマサシは皮ごと被りつきリンゴの食べる。ジゼルもバスケットから別のリンゴを取り出してマサシと同じ様にゆっくりと口にした。

「今日に夕食は何?」
「トルロントのスープとアオセルマのムニエル、あとはアシナガエビのシーザーサラダよ」
「今日は豪勢だな」
「昨日の依頼の報酬は多かったからね、ちょっと奮発してみたの」
「ハハハハッ、そっか」

夕食の話をしながら笑うマサシとジゼル。ちなみにトルロントとはジャガイモに似たラビリアンの芋で、アオセルマとはブダイにそっくりな魚である。夕食の話を終えた二人は青空を見上げて何処か懐かしさのある顔を見せた。

「もう半年になるのよね」
「ああ、エクス・デストロとの戦いから半年だ」

二人はエクス・デストロが引き起こしたビッグバン大戦のことを思い出していた。かつてこの世界を破滅へと導いた悪の化身、ディアボロスとルシフェル。マサシとジゼルの負の感情から生まれた二人はラビリアンを消滅させて自分達が新しい世界の創造主になろうとした。だがマサシとジゼルがそれを阻止し世界に、このラビリアンに平和が戻ったのだ。

「今こうしているとあの時の大戦が夢みたい」
「ああ、俺もそう思う」
「もしあたし達が負けていたらこんな穏やかな日常を送れなかったのよね」
「俺達は勝った。だけどその為に多くの犠牲を出してしまった。その人達のためにも俺達はこの世界を守り続けなくちゃいけないんだ」
「うん、分かってる」

ビッグバン大戦で犠牲になった人達の為にもこの平和を守ると改めて誓うマサシとジゼル。すると、マサシは立ち上がり、リンゴをかじりながらジゼルの方を向いた。

「町に戻ろう、新しい依頼が来てるかもしれない」
「・・・・うん、そうね。一人でも多くの困っている人を助けないと、ビッグバン大戦の時の様に苦しむ人達を出さないためにも」

ジゼルも立ち上がりマサシの方を向いて頷く。二人はゆっくりと草原を歩きながらサンドリアへ戻って行った。





町へ戻ったマサシとジゼルは市場が並ぶ大通りを歩いていた。ビッグバン大戦から半年が経ちユピローズ、いやラビリアン全ての国でも地球の物資が売られるようになったので以前より賑やかになった。ラビリアンの存在を知っているのはライトシンフォニアの人間と地球の一部の要人のみ、彼等の助力がありライトシンフォニアも次元移動装置でラビリアンへ自由に行き来できる様になったのだ。だがライトシンフォニアがラビリアンにできるのは一部の技術を知識を提供することだけ。地球の全てを提供すればラビリアンという世界そのものが変わってしまうからである。だから地球はあくまでラビリアンを「手助け」する形となっているのだ。

「ここも以前と比べて賑やかになったわね」
「ああ、地球の物や料理を店で出すようになったからな」
「休日は今以上に賑やかだもんね。買い物とかも大変よ」

大変だと言ってはいるがジゼルの顔には不満などは一切見られない、むしろ楽しそうな顔をしていた。そんな彼女の顔を見てマサシも笑みを浮かべながら言った。

「でも、俺はその賑やかな休日を過ごすのが何よりの楽しみさ」
「フフフ、それはあたしもよ」
「ハハ、さてと、これから・・・・」
「マサシー!ジゼルー!」
「「!」」

突然背後から聞こえてくる声にマサシとジゼルは振り向いた。青と白の服装に腰には二丁の拳銃、そして頭に狐の耳を生やし少年が手を振りながら走ってくる姿が見えた。その少年を見た瞬間にマサシは名を叫んだ。

「コンタ!」
「二人とも久しぶりー!」

そう、その少年はマサシと同じ元神竜隊の一員であった月本コンタだったのだ。コンタはマサシとジゼルの下までやって来ると二人を見て笑った。

「元気だった?」
「ああ、そういうお前も元気そうだな」
「うん、見てのとおりさ」
「でも突然どうしたの?前に手紙を読んだときは西のリラードル王国の復興作業を手伝いに行くって書いてあったのに」
「そのリラードル王国の復興作業が予定よりも早く片付いたから暇になってユピローズに帰ってきたんだ」
「そうだったの」
「うん」

ジゼルの質問に答えたコンタは荷物を下ろして大きく深呼吸をした。

「フゥ〜、最後にこの国に来たのは4ヶ月前だっけ?やっぱり僕にはこの国の空気が一番合ってるなぁ」
「なぁに言ってるんだか」
「フフフ・・・・あれ?コンタ、少し背が伸びた?」
「ん?」

ジゼルの言葉にコンタは深呼吸を止めて二人の方を向いた。

「確かにちょっと背が伸びたな。前に会ったときは俺の胸の辺りだったのに今は俺の肩の辺りまでに伸びたな」
「うん、まぁね」

コンタは少し照れるような顔をして頭を掻いた。それを見たマサシはコンタの頭に手を乗せる。

「よし、今日はコンタとの再会とコンタの背が伸びた事を祝って何かおごってやるよ」
「いや、別におごる程の事でもないと思うけど・・・・」

マサシの言葉にジゼルは苦笑いをしながら言う。

「ありがとうマサシ。それから、何時までも子供扱いしないで、頭から手を退けてよ」
「お前はまだまだ子供だろ?・・・・ほれ」
「・・・・何コレ?」

マサシから手渡された物を見てコンタはマサシに尋ねる。それはマサシがさっきまでかじっていたリンゴだった。

「おごり」
「こんなもんいらないよぉ!」

コンタは背伸びをしてマサシの顔に近づきツッコミを入れる。

「いや冗談だよ冗談!酒場に行ってお前の好きなもんご馳走してやるよ。ちょうど俺とジゼルも酒場に用があるしな」
「それならいいけど」

マサシが笑いながら言う事にコンタも渋々納得する。そんな二人のやり取りを見ていたジゼルは小さく笑っていた。

「フフフ、さぁ二人とも行きましょう。早くしないと良い依頼と食べ物が他の傭兵達に取られちゃうわよ」
「おっと、それマズイ!」
「行こう行こう!」

マサシとコンタは少し慌てる様子で酒場に急いだ。ジゼルもゆっくりと二人の後を追うように酒場へ向うのだった。

「ところでレイナとネリネはどうしてるの?」

酒場に向いながらレイナとネリネの事をマサシに尋ねるコンタ。マサシは歩きながら答えた。

「アイツは城の銃士隊長の仕事に明け暮れてるよ。彼方此方の国から銃士隊の編制と教育の依頼が殺到してて毎日大忙しみたいだぜ」
「ネリネはゼルキアスで騎士団長として活躍してるみたいよ。最初は色々大変だったみたいだけど、今では皆から信頼されてるわ」

マサシの隣にやって来たジゼルがネリネの事を話しだした。ビッグバン大戦終結後、ジゼルはネリネの事を例え本人のいない時でも「姉さん」と呼ばないと決めたのだ。それは自分自身の過去と決着をつけた彼女自身の決意なのだ。

「あの二人も大変だね。君達はどうなの?最後の手紙には傭兵の仕事をしながら孤児院を建てるお金を稼いでるんでしょ?」
「ああ、毎日忙しい日が続いてるよ。と言ってもレイナやネリネ程じゃないけどな」
「アハハ、そうだね」

二人は笑いながら楽しそうに笑っていた。先の大戦後、二人の絆や愛情は以前にも増して強くなった。今では婚約し、同居しながら傭兵としての仕事に励んでいるのだ。そんな二人をコンタは笑いながら見ていた。三人が話しているといつの間にか酒場の前に着いていた。

「あれ、もう着いちまったのか」
「話しているとあっという間に着いちゃうんだね」
「それだけ話に夢中になってたって事だよ」
「そっか、それじゃあ、入ろうぜ」

三人が酒場に入ると中はいつもどおり多くの傭兵達が集まっていた。三人が中に入っていくと、奥の方で人が集まっていた。不思議に思った三人が近づいてみると、なにやら聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「フルハウスだ」
「クッソ〜ッ!また負けたぁ!」
「約束だ、一杯おごって貰うぞ」
「わ〜ってるよ!」

一人は若い女でどこかクールな声。もう一人は若い男だった。三人が人混みの隙間から覗き込むと、三人は少し驚きの表情を見せた。若い女は金髪のロングヘアーでユピローズ王国の紋章が刻まれている鎧を着ており、腰には二丁の拳銃が納められていたのだ。女は椅子に座り、テーブルの上に並べてあるトランプを相手の男に見せて腕を組んでいた。その女を見た瞬間三人は声を揃えて名を口にした。

「「「レイナ!」」」
「ん?・・・・っ!お前達」

レイナはマサシ達に気付き立ち上がった。三人も人混みの間からレイナの前までやって来た。

「よう、今日はどうしたんだ?最近仕事が忙しいって前に言ってたじゃないか」
「今日は予定より早く仕事が片付いてな、退屈になりこうして城下町に下りてきたのだ」
「そうだったか。・・・・あっ!それよりも・・・・」

マサシは自分の後ろを指差して「見ろ」と合図を送った。レイナがマサシの後ろを見ると、コンタが笑いながら手を振った。

「久しぶりだね、レイナ」
「コンタ!いつこっちに戻ったんだ?」
「ついさっきだよ、そこでマサシとジゼルに会ってね。それにしても久しぶりだね、4ヵ月前にここに戻って来た時は君は忙しくて会えずに町を出ちゃったんだもん」
「それは仕方がないだろう、私も銃士隊の隊長としての仕事で忙しかったのだ」
「相変わらずクールだね」

苦笑いしながら少し高いレイナの顔を見上げるコンタ。すると、レイナはさっきまでのクールな表情から小さな笑顔へ変わってコンタを見下ろした。

「だが、こうしてまた会えて嬉しいぞ」
「僕もだよ」

そう言って二人は再会の挨拶代わりとして軽く抱き合った。マサシとジゼルもそんな二人を見て小さく笑った。

「それよりも、お前達はどうしてここに来たのだ?」
「俺とジゼルは新しい依頼がきてるか見に来たんだ。その途中にコンタと会ってな、なにかおごってやるって話になったんだ」
「そうか、では再会を祝って今日ははしゃぐ事にするか」
「おおっ!お前にしちゃ珍しいな。こういう騒ぎ事は好きじゃなかったんだろう?」

珍しく自分から参加してきたレイナにマサシは少し意外に思った。

「私だって変わっている。昔のようなクールだけの性格じゃない」
「ハハハッ、ワリィワリィ」

笑いながら謝るマサシ。その隣に立っていたジゼルが手を叩きながら話に入ってきた。

「ハイハイ、話は後でゆっくりしましょう。まずは再会のお祝いから」
「おっと、そうだったな。それじゃあ俺は席を取ってくる」
「あたしは飲み物とかを注文してくるわ」
「僕も行くよ」

ジゼルとコンタはカウンターに食べ物と飲み物を取りに行った。するとレイナはカウンターの方へ歩き出した。

「では私は酒を取ってくる。マサシ、お前もどうだ?」
「俺はまだ二十歳になってない」
「フッ、そうだったな」

小さく笑いながらカウンターへ向うレイナ。そんな後ろ姿を見てマサシは笑った。

「アイツ、本当に変わったな。昔はあんな風に言う事はなかったのに。まぁ、変わったのは俺達もだけどな」

そう言ってマサシは空いている席がないか探しに行った。仲間達の再会と過去の振り返り。ここから彼等の新しい物語が始まる。


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