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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第97回   第九十六話 激闘から生まれた希望

「はっ!今のはコンタの声!?」

格納庫に響くコンタの叫び声を聞いたシオンは声の聞こえた方を向いた。彼女は格納庫の中でコンタのいる所の正反対の場所にいた、格納庫は学校の校庭ほどの広さでコンタとシオンはお互いに格納庫の端のほうで戦っていたのだ。

「声は聞こえても姿が確認できない・・・・」

停止しているハリアーUの上に乗り大型ナイフを強く握るシオン。その時、陽気で気の抜けた声が聞こえてきた。

「あらら〜、コンちゃんやられちゃったのねぇ」
「・・・・ッ!まだ負けたと決まったわけじゃないわ!」

シオンが声の聞こえた方を向いて少し興奮した声で言った。目の前には自分と同じようにハリアーUの上に乗り、頬に手をつけて笑いながら言うサヤカがいた。

「ううん、コンちゃんは勝てないわ、だって相手がハヤテなんだもの♪」
「どういう事?」
「忘れたのぉ?ハヤテの契約相手はサンダーバード、コンちゃんの契約相手はリヴァイアサン。雷属性と水属性じゃ雷の法が有利に決まってるもの、絶対に勝てないわ」

誰もが納得しそうな正論を言うサヤカは今度はガッカリする様な顔をして人差し指を顎につける。そんなサヤカを見ていたシオンは少し落ち着きを取り戻したのか静かな声で言い返した。

「勝負に絶対や100%はありえないわ。どんな時でも、どんな状況にあっても諦めなければ勝機は生まれる」
「相変わらず前向きねぇ、でも現実はそんな甘くはないわよぉ?」

サヤカはバックパックから呪符を取り出して攻撃態勢に入る。それを見たシオンも大型ナイフを片手に構え、呪符を取り出した。

「今度こそアンタに引導を渡してあげるわ!」
「あら〜恐〜い♪それが幼馴染に言う言葉ぁ?」
「『元』幼馴染よ!」
「フフフ、そうね。じゃあ、私も『元』幼馴染を全力で排除するわぁ♪」
「やってみなさい!」

二人は同時にハリアーUの上で高くジャンプし、同時に相手に向かって呪符を投げつけた。

「風・刃・斬・音・零!」
「風・刃・斬・音・零♪」

更にシオンとサヤカは同じ符術の呪文を唱え始めた。

「戦塵斬刀符(せんじんざんとうふ)!!」
「戦塵斬刀符(せんじんざんとうふ)」

二人の投げた呪符は短刀に姿を変え、ガチンという低い金属音を立ててぶつかり弾き飛ばされた。

「あらら、弾かれちゃった♪」

相変わらず気の抜けるような声で弾かれた短刀を見て言うサヤカ。

「私もまだまだねぇ、アンタと同じ符術をぶつけて互角なんてぇ♪」

サヤカは笑いながらシオンを見て挑発するが、シオンは表情を変えることなくハリアーUの上に着地してすぐに飛び降りた。

(また私を挑発するつもりだろうけど、シェルメリン村と時のようにはいかないわよ、サヤカ!)

心の中で訴えながらサヤカに向かって走っていく。サヤカはハリアーUの上に着地した後にハリアーUの真下に移動していた。

「ウフフ、今度はこれよぉ♪」

サヤカはハリアーUの翼に取り付けられている対空ミサイルを片手で掴み、軽く引っ張ると翼から取り外された。

「いっ!」

シオンは片手で戦闘機のミサイルを取り外し、片手で持ち上げるサヤカを見て驚きながら立ち止まる。

「そぉれ!」

サヤカはシオンの方を向いて思いっきりミサイルを投げつけた。シオンは慌てて大きくジャンプしてミサイルを回避する、ミサイルはシオンの後ろで停止していたハリアーUに命中、ハリアーUは大爆発を起こした。

「なんて奴なの!広いとは言え格納庫の中でこんな大爆発を起こすなんて!?」
「おっし〜!あと少しだったのにぃ!」

気の抜けるような声で悔しがるサヤカはもう1つのミサイルを取り外し再びシオンを狙う。

「今度ははずさないわよぉ♪そぉれ!」

サヤカは再びシオンに目掛けてミサイルを投げる。

(マズイ!空中じゃ回避できない!)

ジャンプして空中にいるシオンは回避行動を取る事ができない。シオンは慌てて呪符を取り出した。

「剛・連・印・立・対!霊滅結界符(れいめつけっかいふ)!!」

呪文を唱え終えて呪符をミサイルに投げつけた。ミサイルに当たる直前に呪符は六角の光の盾に変わり、ミサイルは盾に命中し爆発した。

「危なかった・・・・」
「あら、今度は符術で止められちゃったぁ」

空中で2発目のミサイルも止められてガッカリしたような声を出すサヤカ。シオンはサヤカを警戒しながらゆっくり着地する。

「まったく、後先考えずにこんな事を・・・・!」

格納庫の中でミサイルを投げるサヤカを見て改めて警戒を強めるシオン。すると、シオンは自分の近くで炎上しているハリアーUをチラッと見る。黒煙が天井に向かって上がって行くのを見てシオンは天井に目をやった。

「ん、アレは・・・・」

シオンは天井に付いている丸い装置に気付いた。するとその装置からピーピーというアラームが聞こえてきた。

「まさか、火災用のセンサー?」

アラームが鳴り出してしばらくするとセンサーの近くの穴から水が出てきた。

「今度はスプリンクラー?」

次々と起動する装置に少し疲れたような声を出すシオン。

「キャー、シャワーだわぁ♪」

シオンとは逆に楽しそうな声を出すサヤカ。そんなサヤカの声を聞いてシオンは再びサヤカの方を向く。

「楽しそうね?」
「だって思いっきり体を動かしたから汗でベトベトしてたんだもん♪」
(フン、汗なんか掻いてないくせに・・・・)

心の中で呟くシオン。そんな時、シオンはコンタの音を考えた。

(コンタ、大丈夫かしら?)





その頃、格納庫の反対側では渡り廊下から下り、倒れているコンタの近くで彼を見るハヤテがいた。コンタもハヤテもダイダルウェーブとスプリンクラーの水でずぶ濡れだった。

「サヤカめ、派手にやりやがって・・・・」

反対側を見ながら腕を組むハヤテ。そんな彼の足元ではコンタが倒れていた。倒れてはいるが、手の指が少し動いている。

(・・・・うう、体の痺れが取れてきた)

痺れが取れた事を確認したコンタはゆっくりと立ち上がった。

「ほう、まだ動くだけの体力が残っていたか」
「言ったでしょ?僕は・・・・ライトシンフォニアの・・・・精鋭だって・・・・」

ふらつきながらも、なんとか立ち上がったコンタはハヤテを睨んだ。

「そんな体でまだ戦う気か?」
「当たり前でしょう!アンタだけは必ず倒す!」

そう言ってコンタは納めていたファイブセブンを抜いた。

「俺には銃は効かない事は確認したはずだぞ?」
「それは・・・・どうかな?」
「何?」

ニヤリと笑い、コンタは震える手でファイブセブンの引き金をゆっくりと引こうとした。それを見たハヤテは一瞬驚きの顔を見せて大きく後ろの跳び距離を取った。

「フフ、やっぱりね。アンタは電磁波を使えない」
「!」
「今アンタの体はずぶ濡れ、アンタの電磁波は体から電気を作り出し、その電気を使って電磁波を作り出している。ずぶ濡れの状態で電気を作り出したりしたらアンタ自身も感電してしまう。だから今は電磁波も契約者としての力も使えない」
「・・・・・・フ、さすが神竜隊、よく分かったな?」

電磁波が使えない事を読まれ、ハヤテは再びクナイを取り構えた。

「確かにこの状態では俺の力は使えない。だが、俺にはまだ忍術がある」

ハヤテはそう言って空いている左手の人差し指と中指を立てて顔の前まで持ってきて目を閉じた。するとハヤテの体からもう一人のハヤテが出てきた。

「!!」

更にもう一人、そしてもう一人。コンタの前に四人のハヤテが現れた。

「分身の術・・・・」
「フフフ、忍術のお決まりだからな」

四人のハヤテは口と声を揃えて言う。そして左手で手裏剣を取り出して構え直した。シオンとサヤカの戦いで動き出したスプリンクラーのおかげでハヤテの力を封じられ、1つの希望が生まれた。しかしそれはコンタにとって最後の希望でもある、果たしてコンタは勝てるのだろうか!?


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