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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第96回   第九十五話 哀しみと憤怒! コンタのミス

「お前の両親を死に追い遣ったのは俺だ」。ハヤテの口から出た驚くべき言葉に表情を固めるコンタ。自分の両親は病死した、それは知っていた、しかしそれが仕組まれていた事だとは知らなかったのだ。

「・・・・・・あ、あなたが僕の・・・・」
「ああ、父と母を殺したんだよ」
「・・・・なぜ?」

表情を変えずにコンタはハヤテに問い掛ける。ハヤテはクナイをしまい、腕を組みながら静かに話し出した。

「お前の父が俺達の仲間だったからさ」
「父さんが、あなた達の仲間?」
「正確には『俺の一族』の仲間だったからさ」
「一族?」
「ああ、奴は俺と同じ一族で忍者をやっていた」
「え?」

自分の父がハヤテの仲間だった、更に驚く事を聞かされコンタは言葉を失った。

「奴は俺達の一族の中でも超が付くほどの一流の忍者だった。だが奴は突然俺達の一族を抜けると言い出した、奴はその理由を話そうとしなかった」
「・・・・・・」

黙ってハヤテの話を聞いているコンタ。やはり表情は変わらない、驚いたままだった。

「調べているうちに奴はお前の母である妖狐の女と愛し合っていた事を知った。だが、我が一族の忍者が一族を抜けることは許されない。それは鉄の掟だったからな。抜けようとする者に待っているのは、死だけだ。奴はそれを知っていながら一族を抜けると言い出したのだ」
「まさか、それで・・・・?」
「ああ、俺が奴の抹殺の為の刺客として選ばれたんだ。奴とは最も親しい仲だったからな。しかし奴も一流の忍者、俺の襲撃を次々に凌いでいきやがった。そこで俺はオニテングダケの毒を使うことにした、さっきも言ったようにオニテングダケの症状は風邪に似ている、これなら風邪として考えるだろうと。そして、俺の読みは的中した。」
「一族を抜けた、たったそれだけの理由だ父さんを毒殺したんですか?そして、母さんまでも・・・・?」
「いや、お前の母は偶然だ」
「え、偶然?」

ハヤテの言葉を聞いたコンタは聞き返した。

「俺はお前の父だけを毒殺するつもりだったのだが、毒をもる時、偶然お前の母も胞子を吸ってしまったんだよ。解毒するのが面倒だったからついでにやったんだ」
「!!?」

母は父を殺すついでに殺された。それを知ったコンタの頭の中にある映像が浮かんだ。





3年前、林の中に立っている一軒の家。その中から女性の苦しそうな声が聞こえてきた。

「ゴホッ!ゴホッ!」
「お母さん!」

和室の中の布団の中で激しく咳をする一人の女性、その女性は金色の長い髪に狐の耳を生やしていた。そして横になっている女性の近くで泣きそうな顔をする一人の男の子、3年前のコンタだ。

「ゴホッ!ゴホッ!」
「お母さん、しっかりして!」
「ハァハァ、だ、大丈夫よコンタ。ちょっと強い風邪になっただけだから・・・・」

そう言っているコンタの母だが、明らかに顔色が悪かった。

「お母さん!お母さん死んじゃうの!?」
「な、何言ってるのよ、風邪くらいで死ぬわけないでしょ?」

母が笑いながら言うが、コンタは泣きそうな顔のままだった。

「でも、でも、お父さんも風邪だって言って眠ったままだよ?何時になったらお父さん起きるの?」
「・・・・・・」

さっきまで笑っていた母は急に悲しそうな顔をして黙りこんだ。実はこの時、すでにコンタの父は毒に侵されて帰らぬ人となっていたのだ。まだ幼いコンタは父が死んだ事を知らなかったのだ。

「だ、大丈夫よ、お父さんも、もうすぐ起きるわ」
「ほ・・・・本当?」

コンタは涙目で母を見ながら聞き返す。

「ええ、お母さんもすぐに元気になるわ。お父さんとお母さんが元気になったら、今度のお休みに遊園地に行きましょう」
「え?本当?」
「ええ、約束するわ」

笑いながら言う母の顔を見たコンタは涙を拭って笑顔を見せた。

「うん!約束!」
「ええ、約束」

母はそう言って布団の中から手を出し小指を立てた。コンタも小指を立てて指きりをしようとする、だが、小指が触れそうになった直前に母の手が床に落ちた。

「お母さん?」
「・・・・・・」

笑ったまま目を閉じて動かなくなった母を見たコンタは不思議そうに母の顔を見ていた。

「お母さん、どうしたの?」
「・・・・・・」
「お母さん、お母さん!お母さん!!」

ようや母の異変に気付いたコンタは動かない母の体を必死で揺さぶる。

「お母さん!起きてよ!大丈夫なんでしょ!?お母さん!!」
「・・・・・・」
「やだよ!お母さん!お母さん!」
「・・・・・・」
「・・・・・・おかあさぁーーん!!」

林の中で幼い少年の鳴き声が長く響いた。





映像が消えた直後、コンタの表情が一気に変わった。驚きから、怒りの表情へ。

「あぁああああああああああああ!!!!」

自分の中で何かが膨れ上がった。マグマのように熱い、自分でも分からない、自分でも抑えられない何かが。

「許さない!許さない!許さない許さない、絶対に許さない!!」

完全に怒りと憎しみに支配されてしまったコンタ。今の彼には普段の礼儀正しい姿を残っていなかった。

「フフフ、やはりガキだな、この程度の事で感情を表に出すとは」
「『この程度の事』だって!?アンタは人の人生をぶち壊した事を何とも思わないのか!」
「ああ」
「クッ!アンタだけは容赦しない!!」

コンタは両手を上げて大きな声で契約魔法の呪文の演唱を始めた。

「大いなる水の精霊よ、我が意志に従い敵を飲み込め!ダイダルウェーブ!!」

演唱が終わると、コンタの背後から大きな水柱が現れ、そこから大量の水が湧き上がるように出てきた。そしてその水が波に姿を変えてハヤテに迫っていく、しかしハヤテは表情を変える事無く立っていた。

「愚かな・・・・」

ハヤテは焦らずにそのままの状態でゆっくり目を閉じ何かを小声で言い始めた。契約魔法の演唱だ。

「雷速の回廊よ、汝の主を導け!クイックロード!!」

呪文の演唱が終わった直後、ハヤテの足元に電流の道が現れ、その道は天井に向かって伸びていった。ハヤテはその道の上に飛び乗った瞬間、ハヤテの姿が消えた。

「!?」

突然消えたハヤテに驚くコンタ。更にダイダルウェーブの波はハヤテを飲み込む事を無く、格納庫全体に水を広げる。

「残念だったな」
「!!」

声のする方を向くコンタは渡り廊下の上に立っているハヤテを見つけた。

「いつの間にそんな所に!降りて来い!」
「降りる必要はない。なぜなら、もう勝負は付いたからだ」
「どういう・・・・」

コンタがハヤテに尋ねようとした時、コンタはハヤテの左手に集まっている雷の光球を見つけた。

「!?」
「お前は水属性の魔物と契約を交わしている、雷属性の魔物と契約を交わした俺に最初から勝ち目など無いのだよ」

そう言ってコンタは水浸しになっている床を見て、ようやく自分の立場に気付いた。

「しまった!!」
「遅い・・・・」

ハヤテはそう言って左手を水浸しになっている床に向けた。

「千の雷よ、天を鎖し裁きの霹靂(へきれき)を!ライジング!!」

演唱を終えたハヤテの左手の光球から青白い雷が広範囲に放たれ、水浸しの床に命中した。そしてその雷は水を伝ってコンタを襲った。

「うわあああああああ!!」

水によって伝導率が増しているため、コンタは通常の倍のダメージを受けてしまった。電撃が治まるとコンタの体からプスプスと煙が上がり、彼はそのまま水浸しの床に倒れた。

「あ・・・・あ・・・・・・」

コンタは倒れたまま痙攣を起こしている。そんな姿を渡り廊下から見下ろすハヤテ。

「怒りは視界を曇らせる、そうなってしまえば本来の戦い方ができずに自滅する。それすらも分からなってしまうとは、やはり戦場で一番恐ろしいのは、憎しみだな」

ニヤリと笑うハヤテ。目を開けたまま痙攣して倒れるコンタ。コンタの怒りが自分自身を傷付けてしまいコンタは動けなくなってしまった。コンタはどうなってしまうのだろうか!?


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