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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第91回   第九十話 人間VS生物兵器

マサシ達が空で死闘を繰り広げていた時、地上でもシンディ達の激しい戦いが行われていた。

「ハァハァ、これで何人目になるかしら?」

息が乱れ、倒した敵の数を思い出すシンディ。体中のあちこちに傷が付いておりその中には血が出ているほど深い傷もある。

「そっちのほうはどう?」
「ああ、粗方片付いた」

仲間の傭兵に戦況を聞くシンディ、そしてそれに答える仲間の傭兵。

「おい!向こうにまだ敵がいる、手を貸してくれ!」

別の所で戦っていた別の傭兵がシンディ達に協力を要請しにやって来た。汗を拭いながらシンディはやって来た仲間に返事をした。

「分かったわ!アンタ達、一緒に来て!」

シンディが近くにいる仲間の傭兵に声をかけると、三人の仲間が黙ったまま頷きシンディの後をついて行く。四人は協力を要請しに来た傭兵の後を追うように別の戦場へ向かった。

「かなりヤバイの?」

シンディが戦況を尋ねると傭兵は疲れた様子で話し始めた。

「ライトシンフォニアの連中の協力があるからまだ誰も死んではいない、だが敵が魔物を連れているから苦戦しているんだ」
「魔物?」
「ああ、緑色の肌をしていて鋭い爪を攻撃してくるんだ」

どうやら彼等も市松達が戦っている魔物と同じ奴に襲われているようだ。

「とにかく、来てくれ!早くしないと奴等に殺されちまう!」
「わ、分かったわ!」

シンディ達は急いで現場に向かった。その時、別の戦場では坂木の率いる第23中隊の90式戦車が敵を迎撃していた。その内の数台は敵のM1戦車の攻撃で破壊されていた。だが負けてはいない、むしろ破壊数はライトシンフォニアの方が多い。

「敵戦車を全て撃破しました!」
「よし、このまま攻撃を続行しろ、敵に反撃の隙を与えるな!」
「了解!」

M1戦車を全て撃破し、戦車隊に攻撃を続行させよう無線で指示を出す坂木。無線機を切ると、疲れが一気に出たのかその場に座り込んだ。

「ハァ、なんとか敵の戦車隊は撃破できた。しかし、こちらの被害も大きい、多くの犠牲が出てしまった・・・・」

多くの仲間が犠牲になった事で自分の力の無さを考える坂木。すると、坂木の無線から声が聞こえてきた。

「坂木大尉!坂木大尉!!」
「!?」

取り乱した声が無線から聞こえ、坂木は急いで無線を取った。

「どうした!?」
「こ、こちら第21中隊!敵の部隊の中に見た事の無い魔物が交じっています!」
「魔物?」
「ハイ!応戦していた仲間が既に六人やられました!救援をお願いします!」
「分かった!すぐ行く!」

坂木はそう言って無線を切り、周波数を変えて別の仲間に連絡を入れ始めた。

「こちら坂木、応答せよ!」
「こちら第23中隊、第1戦車」
「私はこれから第21中隊の所へ救援に向かう、お前達はそのまま戦車隊を攻撃を続けろ!」
「了解!」
「もし補給が必要になったら近くの拠点で待機している中隊に援護を要請するんだ!」
「分かりました!」

坂木は無線を切りながら立ち上がり、第21中隊の下へ走り出した。一方、第21中隊はヘルデストロイヤーの生物兵器を相手に苦戦していた。やはり緑色の肌をした生物兵器だった、無線では犠牲者は六人と言っていたが、すでに十人に増えていた。その中にはサンドリア傭兵協会の傭兵も入っていた。

「クソッ!」

ライトシンフォニアの傭兵がG36で生物兵器に攻撃した。だが動きが速すぎて弾は当たらなかった。攻撃を避けながら生物兵器は一気に近づき、その鋭い爪を傭兵に攻撃した。

「う、うわああああああ!」

断末魔と共に鋭い爪が傭兵の体を切り裂く、そして傭兵は倒れて動かなくなった。

「シャーーーー!」

生物兵器は傭兵を殺した事に快楽を覚えたのか高い声で叫び出した。それを見た周りの傭兵達は驚きゆっくりと離れていく。しかし、生物兵器はその一匹だけではない、既に傭兵達を囲むように何匹もの生物兵器が彼等の背後に立っていた。

「コ、コイツ等、いつの間に!」

生物兵器に気付いたサンドリアの傭兵は振り返りながら剣を構え直す。他の傭兵達も自分の武器を構えて生物兵器の方を見た。

「ど、どうする?」
「お、俺に訊くなよ!」

サンドリアの傭兵達がこの後どうするか話していると、別の傭兵が話しに加わってきた。

「今俺の仲間がシンディ達に救援を求めに行ってる、それまで持ち堪えよう」
「持ち堪えるって、シンディ達はいつ来るんだよ?」
「そ、それは・・・・」

話をしている傭兵達を見つけた別の生物兵器が彼等に向かって走り出した。それに気付いた傭兵達も慌てて生物兵器の方を向く。

「こ、こっちに来たぞ!」
「に、逃げろー!」

一人の傭兵が背を向けて逃げ出すと、生物兵器はその傭兵を追うように方向を変え、走りながら高くジャンプした。そして彼の真後ろで着地し、背中を爪で切り裂いた。

「ギャアアアアアア!!」

傭兵は断末魔を上げその場に倒れ息絶えた。

「う、うわああ!」

恐怖のあまり座り込んでしまった別の傭兵、すると今度はその傭兵に目をつけ生物兵器は走り出した。

「うわあ!く、来るな!」
「シャーーーー!」

生物兵器が腕を挙げ、傭兵を切り裂こうとした、その時。

「サンダーブレード!!」

電撃を纏った剣を持ったシンディが現れ、生物兵器を攻撃した。

「ギャギャーーーー!!」

電撃と斬撃を受けて生物兵器は叫びながら倒れた。シンディが座り込んでいる傭兵に手を差し出した。

「大丈夫?」
「あ、ああ・・・・すまねぇ」

シンディの手を取り立ち上がる傭兵。シンディが周りを見ると、沢山の生物兵器、そしてその近くで倒れている仲間達の死体、それを見たシンディの顔が歪んだ。

「来るのが遅かったわね・・・・」

シンディは市松の同じ事を言い、剣を構え直した。

「皆、必ず仇は取るから!」

シンディは連れてきた三人の傭兵と共に生物兵器に向かって走り出した。彼女達の姿、そして倒れている生物兵器の死体を見た周りの傭兵達にも士気が戻り、再び生物兵器に向かって走り出した。

「「「シャーーーー!!」」」

全ての生物兵器は声を揃えて叫びながら傭兵達に向かって行く、次の瞬間、大きな音が聞こえてきた。

「な、何に!?」
「お、おい!アレを見ろ!」

傭兵の指差す方向を見るシンディは目を疑った、彼女の目に大きな肉塊が飛び込んできた。なんとそれはパラメドラの商人の町ガーリムトでマサシ達が戦った生物兵器「スペクター」だった。どうやら同じ物がこのユピローズ大戦でも使われているようだ。

「な、何アレは?アレもヘルデストロイヤーの魔物なの?」
「わ、わからねぇ・・・・でも、気味の悪い生き物だ」

シンディ達がスペクターを見ていると、スペクターが体から触手を伸ばし、近くにいる緑の生物兵器を触手で貫いた。

「ギャギャアー!」
「お、襲ってる?仲間じゃないの?」

突然スペクターが同じ生物兵器を襲うところを見て悩むシンディ。すると今度は近くのサンドリアの傭兵を襲った。

「ぐわああ!!」
「こ、今度は俺達の仲間を襲った!」
「やっぱりヘルデストロイヤーの魔物?」

スペクターは見境無しに近くの敵味方を攻撃姿を見て驚くシンディ達。触手で貫かれた傭兵や生物兵器の死体を体内に取り込んでいくスペクター。そして赤子の姿をしたその肉塊は一歩一歩大きな足音を起ててシンディ達の方に近づいていく。

「こ、こっちに来る!」
「ど、どうするシンディ?」
「・・・・・・」

シンディはどうするか俯きながら考える。すると、彼女の後ろから男の声が聞こえてきた。

「シンディ!大丈夫か?」
「え?ア、アンタは確か・・・・坂木大尉」
「第21中隊が生物兵器に苦戦していると聞いて救援に来たんだ」
「アンタも?実は私達もなのよ・・・・」
「そうだったのか・・・・ん?アレは?」

坂木がスペクターを見てシンディに問い掛ける。

「ヘルデストロイヤーの別の魔物みたい・・・・でも仲間の魔物も襲って自分の中に取り込んでるの」
「取り込む?」

取り込むという言葉を聞き坂木はパラメドラで見た神竜隊の報告書を見てスペクターの事を思い出した。

「アレと同じ物か?」
「どうしたの?」

シンディが坂木の顔を見て尋ねると、坂木はG36を地面に置き、目を閉じた。

「アイツは私が倒す、君達はあの緑色の生物兵器を頼む」
「ア、アンタ一人でアイツを倒すの!?無茶よ!」
「大丈夫だ・・・・」

坂木が目を開いた次の瞬間、彼の背中から大きな翼が姿を現し、脚が鋭い爪の生えた獣の脚に変わった。

「ええ?背中から鳥の翼が・・・・」
「あ、脚も獣の脚に変わったぞ」

体の一部が変わった坂木を見て驚くシンディ別の傭兵。翼と脚を確認した坂木はゆっくりと翼を広げた。

「これは私の契約相手、幻獣種『グリフォン』の力だ!」
「グリフォン?」
「私も契約者だ!」

そう言って坂木は高く飛び、スペクターに向かっていった。ヘルデストロイヤーの生物兵器の猛攻に耐えるライトシンフォニアとサンドリアの傭兵達。彼等はマサシ達がベンヌを落すまで持ち堪えられるのだろうか!?


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