サンドリアの傭兵団が襲われた。その傭兵団を襲ったのはヘルデストロイヤーの戦闘ロボ、Urs(ウルス)だった。しかも戦闘能力は高い、危険だとマサシのカンが警告している。果たしてどのような激闘になるのだろうか。
(マサシ・・・・)
ジゼルは岩場で隠れながらマサシを見守っていた。見たことのない兵器と戦うマサシを見て少々不安になっていた。
「ロボットと戦うのは初めてだ、手加減してくれよ」 「悪いな、俺は手加減というもの知らない。いくぞ!」
Ursが言葉で二人は同時に後ろへ跳び距離を取った、その瞬間Ursは右腕を上げて拳をマサシに向けた。
「デストロイド・ナックル!!」
Ursがそう叫ぶとUrsの右腕がマサシ目掛けて飛んできた。言ってみればロケットパンチだ。マサシは飛んできた右腕を軽くかわしてUrsに向かって走り出した。それと同時に黒龍刀と白龍刀を抜き斬りかかろうとした、しかし・・・。
「危ない!」 「ん!?」
ジゼルの声に反応にマサシが振り返ると、その瞬間マサシの背中に大きな衝撃と痛みが走った。
「グアッ!!」
マサシの背中にはさっきUrsが飛ばしたロケットパンチが背中に直撃していた。マサシがかわした後Uターンしてきたのだ。攻撃を受けたマサシは吹っ飛び、マサシはUrsを通り越して背後にある岩壁に叩きつけられた、そしてロケットパンチはゆっくりと再びUrsの腕に姿を変えた。
「油断したな、俺は全身がマシンだ。自分の体の一部を自由に操る事ができるだぞ?」 「うう・・・・遠隔操作か・・・・」 「その通りだ」
Ursは再び右腕を上げてマサシを狙った。だがマサシは岩壁にめり込むように挟まっている為、逃げる事ができない。また直撃を受けるのだと覚悟した。その時、Ursの背後から少女の声が聞こえてきた。
「やめなさい!」 「ん?」
Ursが振り返ると、トンファーを構えて自分に向かって走ってくるジゼルの姿があった。
「よせ!ジゼル!」 「臥龍粉砕撃(がりゅうふんさいげき)!!」
ジゼルは大きくジャンプしてUrsの顔を気の溜まったトンファーで攻撃した。直撃だった、しかしUrsは全くダメージを受けていない、それどころか装甲に傷すら付いていなかった。文字どおり無傷だった。
「・・・・・なにかやったのか?」 「ウ、ウソ?」 「死ね」
Ursの目が突然黄色く光りだした。ジゼルは悟った「攻撃してくる」と、だがジャンプして攻撃した為彼女は空中にいる。空中では攻撃をかわせない。
(や、やられる・・・)
心でそう思った、だがその直後、自分の目の前に何かが飛び込んできた。岩から脱出したマサシだった。マサシはジゼルとUrsの間に入りジゼルを抱きかかえた。
「マ、マサシ!?なにを?」 「黙ってろ」
そう言うとマサシの背中から漆黒の竜翼が生えてきた。
「!!」 「いったん逃げるぞ」 「逃がすか!」
マサシは翼を広げ、勢いよくUrsから離れた。マサシとジゼルは一瞬で見えなくなった。
「言ったはずだ、逃がさんとな」
すると、なんとUrsの背中から銀色の翼が姿を現した。翼といっても形だけでその翼の中心にはロケットブースターが取り付けられていた。ブースターが点火し、Ursは高く飛び上がった。
一方、なんとかUrsから逃げ切れたマサシとジゼルは戦場から少し離れた洞窟の中に身を隠していた。
「ふぅ、ここで少し休もう」 「・・・・・ねえ、マサシ」 「ん、なに?」 「そ、その翼・・・」
ジゼルは少し脅えながらマサシの背中に生えている竜翼を指差した。
「ああ〜、これも契約者の力さ」 「契約者の?」 「そ、契約者は力が強くなると契約相手の体の一部を使えるようになるんだ。俺は翼を持ってる奴と契約したから、こうやって翼を生やして空を飛ぶことができるんだよ」 「そ、そうなんだ・・・」
いくら契約者である事を知っていて突然翼が生えてきたのだから、驚いて当然だった。
「・・・・・気味が悪いか?」 「え?う、ううん別にそんな事は・・・・」 「隠さなくてもいいさ。当然の反応さ・・・・」 「・・・・・」
しばらく沈黙が続き、静かな空気が流れたが、それを打ち砕いたのはマサシだった。
「それよりも、どういうつもりだ!」 「え?」
さっきまで黙っていたのに、今度は突然怒鳴りだすマサシに対し状況が飲み込めないジゼル。
「いきなり敵に突っ込むなんて、もし俺がいなかったら、お前今頃死んでたぞ!!」 「で、でもあのままじゃマサシが・・・」 「俺のことより自分の心配をしろ!言っただろ、今回は勝てるかどうか分からないって!何のために俺がお前に隠れるように言ったと思ってる!?」 「あ、あたしは・・!」
「貴方を助けたかった」と言おうとした瞬間、マサシの声が先にでて来た。
「でも、あのままだったら俺は確実にやられてた、お前のおかげで、岩壁から脱出する時間ができた」 「・・・・・!」
一見ジゼルの考えを聞こうともしないような発言だったが、ちゃんとマサシは考えていたようだ。
「ありがと・・な・・助かったよ」 「あ、あの・・・・その・・・・ど、どういたしまして」
頬を赤くし照れるジゼルを見てマサシは笑った。
「な、なに笑ってるのよ?」 「いや、別に・・・・・フフ」 「も、もう!あ、貴方こそさっきみたいに素直にお礼を言えばいいじゃない!」 「そうだな。悪かった、気をつけるよ」 「そ、それと・・・・さっきの・・・」 「さっき?」 「その翼の・・・」
マサシはジゼルの言葉を聞き自分の背中の竜翼を見た。
「あたし、その翼、カッコいいと思ってる。全然気味悪くなんかない!」 「・・・・・!」
マサシはジゼルの目を見て思った。「この子はウソをついていない」と。
「ありがとう」 「・・・・・」
礼を言うマサシにジゼルは優しく微笑んだ。
「さてと、これからどうするかなぁ・・・俺一人じゃちょっとしんどいし・・・」 「なら、あたしも戦うわ」 「あのなぁ、さっき言ったばかりだろう、今回は勝てるか分からないって。お前が参加しても戦力はほとんど変わらないって」 「でもさっきは助かったって言ってたじゃない」 「それはそれ!これはこれ!」 「それに、一人でいると、狙われた時かえって危険じゃない」 「た、確かに・・・・」
ジゼルの一理ある言葉に詰まるマサシ。
「それにM1戦車との戦いのとき言ったじゃない。覚悟はできてるって」 「・・・・・」 「足手まといにはならないから!」 「もしなったら?」 「かまわずあたしを斬って」 「・・・・・」
彼女の覚悟は本物だ。マサシはようやく理解した、いや、とっくに理解していた。M1戦車との戦いで、しかし彼はどうして彼女の気持ちを知っておきながら戦いに参加させなかったのだろうか?マサシはなぜかその理由が分からない。だが・・・。
「分かった。二人で戦おう」 「うん」
空ではUrsが二人を探していた。
「アイツ等、どこに隠れた?」
Ursは着地し翼をしまった。そして辺りを見回すと洞窟を見つけた。
「あの中か・・・・」
洞窟に向かって歩き出した。その瞬間、洞窟の中からファイヤーボールがUrs目掛けて飛んできてUrsに命中した。
「!!」
Ursは驚きはしたがやはりダメージはない。そして洞窟の中からマサシとジゼルが飛び出てUrsに向かって走り出した。
「やはり隠れていたか!」 「業火よ、我に仇名す敵を焼き尽くせ!フレイムショット!!」
マサシは契約魔法の呪文を演唱しならが走り、両手からファイヤーボール放っていたのだ。再びファイヤーボールはUrsに命中、だが効果がない。
「くらえ!!」
Ursの側面に回ったジゼルは再び臥龍粉砕撃で攻撃し、その攻撃は命中した。でもやはり傷は付いていなかった。攻撃を終えた二人はUrsから距離を取りUrsの方を見た。
「あれだけ攻撃したのに傷一つ付いてないなんて・・・」 「なんて硬い装甲だ・・・」
驚く二人に対してUrsは静かに言った。
「俺の身体は『アストラル超合金』で出来ている。生半可な攻撃では傷は付けられんぞ」 「アストラル超合金!?」 「なんなの、そのアストラルなんとかって?」 「アストラル超合金、俺の世界の金属で一番硬いといわれている物だ。それじゃあ、傷が付かないわけだ」 「そんな硬い金属に傷をつける方法があるの?」 「有るわけないだろ」
ジゼルの質問にマサシではなくUrsが自信ありげに答えた。
「俺はヘルデストロイヤーで最高の防御力を持っている。この世界の武器で俺を傷付ける事はできない」 「「・・・・・」」
Ursの納得の行く言葉にマサシとジゼルは黙る事しかできなかった。
「さて、お前達の攻撃は終わりか?なら今度は俺の番だ」
Ursはゆっくりと右腕を上げ二人を狙った。
「またロケットパンチか?」 「さあな、当ててみな」
Ursがクイズでも出すような言い方をした直後、Ursの右腕の上下左右か小型の機関銃が姿を現した。
「なに!」 「蜂の巣になれ!!」
その瞬間、四つの機関銃から弾が発射された。マサシはジゼルに飛びつき、抱きかかえる様に回避し、彼女を弾の嵐から守った。
「キャア!」
突然の事だったので、ジゼルは何がなんだか分からなかった。
「大丈夫か?」 「う、うん・・・」
ようやくマサシが自分を助けてくれた事に気付き、落ち着いたようだ。だが、安心はできなかった。Ursは再び自分達に銃口を向けてきた。
「走れ!」
マサシに手を引っ張られ必死で走るジゼル。二人はUrsの周りを回るように逃げ回り、Ursもそれを追うように撃ち続ける。二人の後ろから弾丸が少しずつ近づいてきた。追いつかれそうになった時、突然銃撃が止んだ。
「チッ弾切れか」 「よし!今のうちに距離をとるぞ」 「わかった!」
二人は弾切れで一瞬自分達から目をそらしたUrsを見て体勢をを立て直そうとした。だがUrsはそれを見逃さなかった。
「甘いぞ!アトミックレーザー!!」
Ursの額に付いている黄色い石が突然光りだしそこから一本の光線が発射された。ビッグ・ハウンドの傭兵の身体を貫いた光線だ。その光線はマサシとジゼルの足元に命中、そして爆発した。
「「うわああああ!!」」
爆風で二人は飛ばされ、地面に叩きつけられながら転がって行った。
「まだだ!ゴッドミサイル!!」
今度は立ったまま片足の膝を曲げ、その膝の装甲が開きそこから無数の小型ミサイルが発射された。そのミサイルはマサシとジゼルに迫ってきた。
「クソッ!」
マサシは素早く立ち上がり腰からP90を取りミサイルに目掛けて乱射。その銃撃でミサイルのいくつかを落とす事はできたが、落とし損ねたミサイルは二人に命中こそしなかったが、地面に命中、その爆風が二人を襲った。
「グワァ!」 「キャア!」
二人は再び爆風で吹き飛ばされダメージを受けた。
「うう・・・ジゼル!」
マサシはダメージを受けながらも立ち上がり、ジゼルのもとへ走り倒れている彼女を抱き起こした。
「大丈夫か!?」 「う、うん・・・なんとか・・ね」 「・・・・・・クッ!」
マサシはボロボロになったジゼルを見た後、ゆっくりと自分達に向かって歩いてくるUrsをキッと睨みつけた。
「酷く情けない姿だな、だがそうなる事を選んだのはお前達だ」 「・・・・・」 「お前がどうしやってこっちの世界に来たのか気にはなるが、そんな事はもうどうでもいい。ここで息の根を止めてやろう」
Ursは腰に装着されているスチール製の棒を手に取った。長さは30cmほど、マサシには長いが、Ursには丁度いい長さだ。Ursが棒についているスイッチを押すと、その棒の先から青い光が姿を現しその光は刀身へと姿を変えた。
(アイツ、あんなところに剣を隠していたのか・・・) (これで終わりだ)
攻撃と防御のどちらにも隙が無いUrsに一方的に攻められているマサシとジゼル。だが、マサシにはまだ奥の手がある。しかしそれを使った時、彼は自分の中の悪魔を表に出すという事になる。彼の決断は!?そして、悪魔を出した彼を見たときジゼルの心はどう動くのか!?
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