追尾ミサイル「グングニル」。高性能の追尾機能に加え相手の攻撃を防ぐ防御兵器を備えた対契約者用の兵器。マサシ達はこのミサイルをどのように撃墜するのかを考えていた。すると、ユウタが一つの作戦を思いついた。少々危険ではあるが、今の彼等にはこの作戦しか方法がなかった。
「よし、じゃあ作戦どおりに行くぞ!」 「「「了解!」」」
マサシの顔を見て返事をするジゼル、ユウタ、シオンの三人。そして彼等はそれぞれバラバラに移動した。ただし、ジゼルだけはマサシの後をついて行った。
「ジゼル、大丈夫か?」 「うん!」 「よし、もう少し速度を上げる、ついて来れるか?」 「大丈夫!」 「行くぞ!」
黒竜の姿をしたマサシは速度を一気に上げた。ジゼルも聖天使の力をうまく使い速度を上げる、二人はほぼ同じ速さで空を飛んでいた。そんな二人の後を追う二つのグングニルも同じ速度で二人の後を追った。その頃、ユウタもグングニルに追われながらベンヌの周りをグルグル回っていた。
「いいぞ、そのままついて来い!」
ユウタは大きな竜翼を広げて追って来るグングニルを見ながら飛んでいた。速度を落とす事無くグングニルはユウタの後を追っている。シオンの方を同じだった。
「フゥ!このままついて来てくれるといいわね!」
シオンも後ろから追って来るグングニルを見ながら小さく溜め息を付き飛び回る。
「さて、そろそろ始めようかしら」
シオンはグッと速度を上げて一気にグングニルとの距離を伸ばした。しかしグングニルはシオンが速度を上げた事に反応し、更に速度を上げる。
「さあ、行くわよ!」
シオンは速度を上げながら一気にUターンしてベンヌの後部へ戻って行く。勿論グングニルもシオンの後を追って行く。反対側を飛んでいたユウタも同じ行動をしベンヌの後部へ戻って行った。そして二人は後部の近くで合流した。
「よし、このままグングニルの発射口へ飛んでくぞ!」 「OK!」
ユウタとシオンはグングニルが発射されたミサイル発射口の方へ向かいだした。当然二つのグングニルも二人の後を追った。少しずつ発射口へ近づいていく。
「ユウタ、この後はどうするんだっけ?」 「発射口のギリギリ近くまで近づいたらそこで一度止まるんだ」 「そしてグングニルを私達に命中する直前の距離まで引き寄せるんだよね?」 「ああ、そうだ!」
作戦の内容を確認したシオンとユウタは更に加速しグングニルから距離を離した。そして二人はグングニルが発射された発射口の近くで停止した。
「よし!」
ユウタは振り向き自分達に向かってくるグングニルをジッと見て神経を集中させた。
「シオン、俺が合図したら一気に上昇するんだ、いいな?」 「分かったわ・・・・」
シオンもユウタと同じようにグングニルを見て神経を集中させた。少しずつグングニルと自分達の距離が縮んでいく。グングニルは二人の50m先まで近づいてきた。
「まだだ・・・・」 「・・・・・・」
ジッとグングニルを見つめる二人。グングニルは二人の30mまで近づいた。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
あと25m。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
あと10m。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
あと5m。
「今だ!!」 「ッ!!」
二人は一気に上昇した。その時グングニルは二人2m手前まで近づいていた。グングニルは急に上昇した二人を追尾することができず、そのまま発射口に突っ込み爆発した。
「よし!成功だ!」 「やったぁ!」
グングニルが命中した場所の装甲は黒く焦げ、大きく凹んでいた。
「チッ!穴は開いてないかぁ」 「随分と硬い装甲ね」 「だが同じ所を集中的に攻撃すれば必ず穴が開くはずだ!」 「あとはマサシとジゼルに任せましょう」
二人がその場所を離れると遠くにいるマサシとジゼルの同じように離れた所から後部へ向かって飛んで来た。
「よし!今度は俺達の番だ、行くぞジゼル!」 「ええ!」
二人は一気に速度を上げて凹んでいる装甲の目の前まで飛んで停止した。そして二人はユウタとシオンがやったようにグングニルを見て神経を集中させる。
「いいか、俺が合図したら避けるんだぞ?」 「ええ・・・・」
グングニルは少しずつ二人との距離を縮めていく。そしてあと6mまで近づいた。
「今だ!避けろ!」 「うん!」
二人は一気に上昇しグングニルをかわした。そしてグングニルは凹んでいる装甲に命中、そして遂に装甲に大きな穴が開いた。
「よし!ようやく突入口ができたぞ!」 「やったね!」
ブリッジにはグングニルが命中した事によって起きた爆発音と衝撃が響いていた。
「どうした?」 「本機の後部にグングニルが命中!大きな穴があきました!」 「ほう」
ベンヌに穴が開いたのに冷静なままでいるゾーク。腕を組みながらオペレーターに言った。
「穴の開いた場所は?」 「グングニルの発射台及び保存庫のフロアです!」 「そうか・・・・」
ゾークは場所を聞くと椅子についている受話器を取り何処かに連絡し始めた。
外ではマサシ達が穴の周りを飛んでいた。その中でジゼルが無線機を使ってジェット輸送機のエミリアに連絡を取っていた。
「エミリア様、ベンヌの後部に突入口ができました!」 「了解、すぐそっちへ向かうわ」
無線の切れる音が聞こえジゼルは無線機をしまった。しばらくすると、エミリア達のジェット輸送機が穴の真上まで来た。
「皆、来たよ!」 「よし、ユウタ、シオン、エミリアさま達を迎えに・・・・ん?」 「どうした?」 「あれ」
マサシの指差す方を見たユウタ。すると、ジェット輸送機から何かが出てきた。そして「それ」は少しずつ大きくなっていく。
「何かが落ちてくる?」 「みたいだな・・・・」
マサシとユウタがジッとそれを見ていると、「それ」は突入口の穴のから少し離れた所に落ちた。体中が岩の様なゴツゴツしており、二本足で立っている竜だ。そしてその竜は翼は無いが、太い腕で二つのゴンドラを一つずつ肩にしょっていた。
「あ、あれは!」 「レイナだ!」 「あれが、レイナ?」 「ああ、あれはレイナの契約相手の神竜種「グランディアス」だ」
マサシがジゼルに説明していると、グランディアスは大きな口を開いた。
「何を手間取っていたんだ、お前達・・・・」 「本当にレイナなの?」 「ああ、私だ。お前達が遅いから私がゴンドラをしょって皆を運んだのだ・・・・」 「ワ、ワリィな・・・・」 「「「ゴメン・・・・」」」
グングニルとTLW(タクティカル・レーザー・ウェポン)に手間取ってしまった事を謝罪するマサシ、それに続いてジゼル達も謝った。
「それくらいにしてあげなさいレイナ」
レイナのすぐ近くに天使の翼のような白い翼を広げてエミリアがゆっくりと着地した。そしてゴンドラの中からコンタとネリネも顔を出した。
「外は危険だから早く中に入ろう」 「そうね、早くしないと離れた敵の戦闘機が戻ってくるわ」 「そうだな・・・・」
レイナはそう言ってゴンドラをしょいながら軽くジャンプして穴に飛び込んだ。すると、穴の中からコンタとネリネの声が聞こえてきた。
「うわぁ!」 「イッタ〜!」 「大丈夫か?」 「大丈夫じゃないよ!」 「まだ私達、ゴンドラの中に戻ってないのに・・・・」 「す、すまん・・・・」
どうやら穴に飛び込んだ時にゴンドラから外に放り出された様だ。それを知ったマサシ達は苦笑いをしながらレイナに続くように穴に飛び込んだ、勿論元の姿に戻りながら。ようやくベンヌの中に突入する事ができたマサシ達。この後、彼等とヘルデストロイヤーの激しい戦いが行われるのだ・・・・・・。
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