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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第86回   第八十五話 トラウマとの戦い

TLW(タクティカル・レーザー・ウェポン)という厄介なレーザー兵器を装備したベンヌに手も足も出せないで次々に撃墜されていくライトシンフォニアの戦闘機。その光景を目の当たりにして驚きを隠せないでいるマサシ達。

「戦闘機撃墜率48%!敵戦闘機撃墜率59%!少しずつですが、撃墜率が上がってきています!」
「マズイな・・・・ベンヌのTLWで第7戦闘機隊だけじゃなく周りの第6戦闘機隊までもやられている!」

パイロットの戦況報告を聞いてマサシは驚き焦る、それはジゼル達も同じだ。

「どうするの、このまま進むの?」
「・・・・・・」

考え込むマサシ。そして黙って俯く隊員達。その時、黙っていたマサシがエミリアにとんでもない事を言い出した。

「エミリア様、俺達が行きます」
「え?」

マサシの言葉を聞き首を傾げるジゼル。それに続いてコンタ、ユウタ、シオン、レイナが立ち上がり、エミリアはマサシ達の方を見て口を開く。

「レベル・5ね?」

頷くマサシ、それを聞いて嫌な予感がして表情を急変させるジゼル。そんな中エミリアは話しを進める。

「貴方達がレベル・5でベンヌの装甲を破壊して入口を開くつもりで?」
「ハイ」

マサシが頷くとジゼルは立ち上がってマサシの方へゆっくり歩いていく。

「マサシ・・・・貴方も行くの?」
「・・・・・・」

ジゼルの悲しそうな声を聞き、彼女の方を見て頷くマサシ。

「じゃあ、貴方も・・・・」

何かに怯える様な目をして自分の見るジゼル。マサシはジゼルの考えてる事を察したのか、彼女の目の前まで歩いて行き肩にそっと手を置く。

「お前の言いたい事は分かる、俺は二度とお前の前でレベル・5を発動しないと約束した。だが、このままだと第7戦闘機隊だけじゃなく全ての戦闘機が落とされちまう。そうなってからじゃ遅いんだ、分かってくれ」
「・・・・ダメ、Urs(ウルス)との戦いで貴方が変身した時の事を思い出すと体が震えて・・・・恐いのよ」
「ジゼル」
「分かってる、あたしの我が儘だって事。でもやっぱり耐えられないのよ」

震えながらマサシの胸にそっと寄りかかるジゼル。マサシはジゼルの背中にそっと手を回し彼女を優しく抱きしめる。そんな時エミリアがジゼルに語りかけてきた。

「ジゼル、貴方とマサシの間に何があったか私には分からないわ。でも彼の言うとおり事が過ぎてからでは遅いのよ、このままではこの世界の全ての人があのベンヌの犠牲になってしまうわ」
「・・・・・・」

黙ったままエミリアの話を聞くジゼル。その時、エミリアが少し冷たい言い方でジゼルに言った。

「・・・・ジゼル、貴方の我が儘でこの世界の全ての人達を犠牲にするつもりなの?」
「・・・・・・!」

エミリアに言われジゼルは思い出した。自分達の肩にはラビリアンに住む人達の運命が掛かっているという事を・・・・。

「ジゼル、TLWが出てきた以上、普通の戦闘機じゃ太刀打ちできない。俺達が行かなきゃいけねぇんだ、分かってくれ」
「・・・・ゴメンね」
「ん?」

突然謝ったジゼルの声を聞き、彼女の顔を見るマサシ。そしてゆっくりと自分からゆっくりと離れるジゼル。

「あたし貴方が変身する事ばかり考えて自分のやるべき事を忘れてた。あたし達はこの世界に住む全ての人達の運命を背負ってるって事を。それなのに、あたし自分の事ばかり考えて・・・・エミリア様に言われてやっと思い出した。ゴメンね」

自分の使命を思い出したジゼルを見て笑いながら見つめるマサシ。その時。

「あ〜、オッホン!」
「「あ・・・・」」

何処からか聞こえてきた咳、聞こえてきた方を見るマサシとジゼル。そこには目を細くし、中には頬を少し赤くして自分達を見るシオン達がいた。

「こんな時に何いい雰囲気で見つめ合っちゃってるの?」
「ええ?い、いや見つめ合うって・・・・」

顔を赤くして首を振るマサシ。そしてジゼルも少し頬を赤くした。

「と、とにかく!エミリア様、このままジェット輸送機をベンヌに向かわせてください。ベンヌの300m前まで近づいたら俺とユウタ、シオンの三人がレベル・5を発動させてベンヌに突っ込み、TLWを破壊し、装甲に穴を開けます」
「分かったわ」
「そしてその後に・・・・」

マサシが作戦の事を話していると、ジゼルが話しかけてきた。

「マサシ、お願いがあるの・・・・」
「ん、何だ?」
「あたしも連れてって」
「え?何処へ?」
「あたしも貴方と一緒にベンヌに行きたいの」
「一緒に?」
「うん」
「ダメだ、危険すぎる。レベル・5を発動した俺達でも無事にベンヌに辿り着けるかどうか分からないんだぜ?」
「分かってる、でもあたしは貴方と行きたいの、貴方が竜の姿をして戦っている姿を見ていたいの・・・・」
「・・・・・・」
「連れて行ってあげたら?」
「シオン?」

連れて行く事に賛成するシオン。

「私達もアンタ達の間に何が起きたか知らない、でもアンタのレベル・5で彼女にトラウマができたって事でしょ?ジゼルは黒竜の姿をしているアンタを見てトラウマを克服したいんじゃないかしら?」

シオンがそう言ってジゼルの方を見るとジゼルは黙って頷く。

「それに好きな女の子すらも守れないのに世界が守れると思う?」
「それは・・・・」

言葉に詰まるマサシ。しばらく考えると、マサシはジゼルの顔を見て言った。

「分かった、その代わり約束してくれ」
「何?」
「俺の側から絶対にはならない事、いいな?」
「分かった、ありがとう」

マサシがシオン達の方を見ると、神竜隊のメンバーは揃って頷く。

「決まったようね」
「ハイ」

エミリアがマサシ達が決心した事を確認すると、パイロットに指示を出す。

「すぐに第7戦闘機隊と周囲の第6戦闘機隊を下がらせて!その後、本機は主力部隊の護衛を受けながらベンヌに向かいます!」
「了解!」

パイロットは通信機で戦闘機隊に指示を出す。





一方、ベンヌのブリッジではライトシンフォニアの戦闘機隊の行動をオペレーターがゾークに報告している。

「社長!敵の戦闘機隊が後退していきます」
「何?全ての戦闘機がか?」
「ハイ」
「・・・・・・何かおかしいな」

腕を組みながら戦闘機隊の行動に不審を感じるゾーク。

「TLWに恐れて後退したのでは?」
「それは考えにくい、もしそうだとしたらTLWを使った直後に後退させるはずだ。だが既に8機も落としている、後退するには遅すぎる」
「ではなぜ?」
「・・・・・・」

ゾークが黙って考えていると、別のオペレーターがゾークに戦況を報告してきた。

「社長、敵のジェット輸送機が無数の戦闘機に護衛されながらこちらに向かってきます」
「ジェット輸送機だと?モニターに映せ」
「ハッ!」

オペレーターはそう言ってモニターに映像を映した。モニターの真ん中にライトシンフォニアの戦闘機隊の真ん中を飛んでいるジェット輸送機がゾークの目に入った。

「・・・・・・エミリア、君なのか?」
「いかがいたいましょう?」
「・・・・・・撃ち落せ」





マサシ達の乗るジェット輸送機がベンヌまであと350m。

「あと50mで作戦開始空域です」
「そう、皆、ゴンドラに乗り込んで。マサシ、ジゼル、ユウタ、シオン、もう少しでハッチを開くから、作戦開始の準備を」
「「「ハイ!」」」

マサシ達全員が声を揃えて返事をする。その時、機体が大きく揺れた。

「な、何だ?」
「ベ、ベンヌからの攻撃です!30機の護衛機の内、5機が撃墜されました!!」
「クソッ!アイツ等俺達の作戦に感づいたか!?」

ユウタが握り拳を作り悔しがる。エミリアは力の入った声でマサシ達に指示を出す。

「速度を上げて!目標空域に到着次第、神竜隊四名は作戦通りベンヌに向かって敵要塞機に攻撃しTLWを破壊、そして装甲に穴を開ける!いいわね!」
「「「ハイ!!」」」

エミリアの指示でジェット輸送機の速度を上げ、護衛機もそれに付いて行く。残った25機の護衛機の内12機はジェット輸送機の200m前を飛んで敵の対空機銃やミサイル発射機構をサイドワインダーで攻撃している。

「間もなく作戦開始空域です!」
「ハッチを開いて!」
「ハイ!」

パイロットはそう言って後方のハッチを開いた。ハッチが開き風が機内に入り込んでくる。

「ウッ!凄い風だな。行くぞ三人とも!」
「うん!」
「ああ!」
「任せて!」

ジゼル、ユウタ、シオンは力強く返事をする。

「四人とも、頑張って!」
「頑張れよ・・・・」
「気を付けて!」

後から作戦に参加するコンタ、レイナ、ネリネも先に行くマサシ達を見送りながら言葉を送る。ゴンドラに乗っている傭兵達も敬礼をした。そんな彼等に敬礼を返すマサシ達。そして、四人はハッチから外へ飛び出した。

「「「解放!レベル・5!!」」」

マサシ、ユウタ、シオンが声を揃えてレベル・5を発動させた。マサシの体が光だし、少しずつ竜の形に変わっていく。そして光が消えた時、マサシはUrsと戦った時のように、黒い甲殻と太い腕と脚、大きな竜翼、真紅の目を持つを持つ黒竜ディアボロスの姿に変わっていた。続いてユウタの体が光り出した。そして光が消えた時、そこには濃い緑の甲殻、細長い首に後方に伸びる2本の角、腕の部分には体を包み込むほど大きな竜翼が生えており、鋭い爪の生えた脚と長い竜尾が生えた竜がいた。ユウタの契約相手の神竜種「ガルーダ」だ。

「これが、ユウタの契約相手・・・・」

始めてみるユウタの契約相手の姿に驚くジゼル。今度はシオンの体が光り出した。形が変わり光が消えた時、薄いオレンジ色の甲殻と鱗を持ち、マサシのと同じくらいの大きさの竜翼、太い腕と脚、先の尖った尻尾、そして長い牙と角の生えた竜の顔。その竜の周りには炎が纏われている。シオンの契約相手、神竜種「サラマンダー」。

「そしてあれがシオンの契約相手・・・・」
「ジゼル!」
「!」

ディアボロスの姿をしたマサシに呼ばれて振り返るのと同時に驚きの顔をするジゼル。どうやらUrsとの戦いの事を思い出したのだろう。

「ジゼル、早く翼を!」
「う、うん!」

マサシに言われ聖天使の力を解放した。髪は銀色に変わり、体が赤く光りだし、銀色の翼を出した。全員が姿を変え終わり、空中で浮いたまま状況確認を始めた。

「大丈夫か?」
「う、うん・・・・でもやっぱり・・・・まだ・・・・」
「そうか・・・・あまり無理はするなよ」
「うん、ありがとうマサシ」
「ああ」

ジゼルを心配するマサシ、そして改めてトラウマを治そうと決意するジゼル。

「よし、三人とも行くぞ!『竜の架け橋作戦』開始だ!!」
「「「了解!!」」」

マサシが作戦名らしき言葉を口にし、それを聞いて強く返事をするジゼル、ユウタ、シオン。そして全速力でベンヌに向かって飛んでいく。姿を変えて敵の要塞に突っ込むマサシ達。果たして作戦は成功するのだろうか?そして無事にエミリア達と合流できるのだろうか!?


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