ライトシンフォニアとヘルデストロイヤーの戦いが始まり、空中と地上の2つの戦場で大きな戦いが繰り広げられていた。
「戦闘機撃墜率28%、敵戦闘機撃墜率34%!僅かですがこちらのほうが有利です」 「敵要塞機の周囲は?」
エミリアが前を見ながらパイロットにベンヌの護衛機の事を聞く。
「護衛の戦闘機が55機、内19機を撃墜しました」 「残り36機・・・・まだ多いわ、もう少し様子を見ましょう、本隊、第7戦闘機隊はこのまま待機」 「了解!」
まだ敵の数が多い、そう判断したのかエミリアはそのまま待機させた。
「マサシ」 「何だ?」
ジゼルが少し不安そうな声でマサシの名を呼んだ。
「ずっと気になってたんだけど、第6師団と第7師団の戦闘機隊が前衛に出てあたし達の道を切り開いてくれるんだよね?」 「ああ」 「残りの第8師団はどうしたの?」 「第8師団の戦闘機隊はサンドリアの上空で待機してる、もし奴等が俺達を無視して町を攻撃しようとした時の為の護衛だ」
マサシが第8師団の事を話しているとパイロットが再び戦況を報告した。
「戦闘機撃墜率35%、敵戦闘機撃墜率51%!護衛の戦闘機が残り20機です」 「20機、そろそろね。第6戦闘機隊を後退させ、第7戦闘機隊を前進!残りの護衛を撃墜しながら要塞機の一点を集中攻撃!装甲に穴が開いたら私達は主力部隊の戦闘機隊の護衛を受けながら要塞機に向かって前進!」 「了解!こちらジェット輸送機RS−035、第7戦闘機隊、行動開始!第6戦闘機隊は後退せよ!」
パイロットが通信機で第6と第7戦闘機隊に指示を出した。マサシ達の最初の作戦が成功した事を聞き少しホッとする。
ベンヌのブリッジではゾークが大型モニターで戦況を確認していた。
「社長!護衛のハリアーUがまた2機落とされました!」 「残りの護衛機は?」 「あと18機です!」 「チッ!これだけ正確に我々の戦闘機を落として行くとは、やはり指揮を執っているのはエミリアか・・・・」
ゾークは舌打ちをしながら腕を組み考え込んだ。そして立ち上がったゾークは大きな声で言った。
「総員戦闘配備!ベンヌの全ての武器を起動させろ!」 「了解!」
ゾークの指示を聞いたオペレーター達は一斉に目の前の機材を動かし始めた。そしてゾークは再び椅子に座り腕を組んだ。
「エミリア、君が相手ならばもはやこちらも手加減はしない。仮に君じゃなかったとしても、これほどの指揮能力を持つ者を野放しにしておく訳にはいかない。始末させてもらうぞ」
第6戦闘機隊が後退した後に第7戦闘機隊が敵の戦闘機を撃墜しながらベンヌに近づいて行く。その様子をレーダーで見ているマサシ達。
「第7戦闘機隊が次々に敵戦闘機を撃墜して行きます、敵要塞機まであと300mです」 「もう少しか・・・・」
マサシがレーダーを見てもうすぐ自分達が動く番だと考えていた。他の隊員達も同じだ、いつ自分達の出番が来てもいいように持ち物の確認、武器の手入れ、中には精神統一をしている者もいた。
「最後の護衛機を通り過ぎました!もう敵要塞機までの間に障害物はありません!」 「そのまま前進、装甲に穴を開けるまでは油断をしないように第7戦闘機隊の人達に連絡を!」 「ハイ!」
エミリアに言われたとおりパイロットは通信機を使い第7戦闘機隊に連絡を入れる。
「皆!これより我々主力部隊は第7戦闘機隊が敵要塞機ベンヌに向かって前進します。そして装甲に穴が開いたらジェット輸送機のエンジン出力を最大にして一気にベンヌに近づきます、ベンヌの300m手前まできたら、そこに置いてあるゴンドラに乗り込んでベルトで固定してください」
エミリアがそう言って指を指した。全員が指の指してる方向を見ると、そこには観覧車のゴンドラより少し大きめの四角いゴンドラが2つ置いてあった。
「全員乗り込んだら、後部ハッチを開き、ユウタとシオンがレベル・5を発動してゴンドラを持ち上げて外に出る、そして私達を穴の開いた装甲からベンヌの内部に運んでくれます。その後の事はベンヌに侵入した跡に説明します」
エミリアが侵入方法を説明しているのを聞いて目を鋭くするマサシ達。その時、パイロットが戦況を報告してきた。
「社長、第7戦闘機隊がベンに接触、攻撃を開始しました」 「状況は?」 「敵の迎撃が予想以上に厄介でなかなか一点に狙いが定まらないでいるようです」 「そう・・・・」
その頃、第7戦闘機隊はベンヌの迎撃を避けながら必死で狙いを定めようとしていた。
「こちらイーグル2、敵の対空機銃の数が多くなかなか近づけない!3番機、援護を頼む!」 「こちらイーグル3、ダメだ、こちらも回避するので精一杯だ!」
ベンヌの周りを20機のイーグルが飛び回っている。今のところ1機も落とされていないようだ。
「こちらイーグル8、隊長!敵の迎撃が激しすぎます、一度距離をとった方がよろしいのでは?」 「こちらイーグル1、今ここで下がったら奴等が態勢を立て直してしまう、なんとか持ち堪えるんだ!」 「りょ、了解!」
戦闘機が一斉に散開しベンヌを囲むように攻撃していく。
「イーグル8、フォックスツー!!」
イーグル8が空対空ミサイル「サイドワインダー」で攻撃。サイドワインダーがベンヌに迫っていく、だがサイドワインダーはベンヌの対空機銃で撃ち落された。他の方向からも同じようにサイドワインダーが発射されたが、全て撃ち落されてしまった。
「全て落とされた・・・・」 「ミサイルすら聞かないなんて・・・・」
サイドワインダーが聞かない事に戸惑いを隠せないパイロット達。その時、ベンヌの装甲の一部がゆっくりと開き、中から砲身が出てきた。
「ん?隊長、敵要塞機から何かが出てきました」 「何かとは何だ?」 「砲身のような物です。それも1つではありません、あちこちから出てきています」
そう、その砲身はベンヌのあちこちから出てきているのだ。そしてその砲身がイーグルたちに狙いを定め始めた。
「こちらを狙っています!」 「散開しろ!固まっていると狙われるぞ!」
隊長の命令を聞き、イーグルは一斉に四方へ飛んだ。
「社長!敵戦闘機が散開を始めました」
ベンヌのブリッジではオペレーターがゾークに状況を報告していた。
「馬鹿め、散開しても無駄だ。『コイツ』の攻撃からは逃れられん・・・・」 「ロックオン完了!」 「よし、発射!!」
外ではイーグルがもの凄い速さでベンヌの周りを飛び回っている。その時、ベンヌから出てきた砲身が青く光り出した。
「ん、何だ?」
イーグルのパイロットが光り出した砲身を見ていると、次の瞬間、砲口から1本の青い光線が発射された。
「何!アレは・・・・レーザー!?」
そう、砲口から発射されたのはレーザーだったのだ。しかもそのレーザーは発射されても消えること無く伸び続けている、そして砲身はレーザーを発射させたまま方角を変えた。するとレーザーは飛んでいるイーグルを追うように迫ってきた。
「な!こ、こっちに・・・・」
パイロットが全てを言い終わる前に、イーグルはレーザーに食われ、爆発した。
「隊長!イーグル8が落とされました!」 「何!?」 「敵はレーザー砲を装備しているようです、恐らく・・・・う、うわぁ!」 「どうした!?」 「こ、こっちからもレーザーが・・・・うわああああ!!」
通信機から叫び声が聞こえ、そしてその直後、通信が途絶えた。
「イーグル7!応答しろ、イーグル7!!」
呼びかけても応答はなかった。
「クソッ!やられたか・・・・」
隊長が悔しがっていると、外から爆発音が聞こえた。外を見ると、レーザーの近くでまた別のイーグルが爆発した。
「またやられたのか・・・・」
別のイーグル落とされて動揺を隠せないでいる隊長。彼は強く操縦桿を握り、イーグルの速度を上げた。
「社長!第7戦闘機隊のイーグルが3機落とされたと連絡が入りました!」 「え?」
突然の報告に耳を疑うエミリア。当然だ、さっきまで1機も落とされていなかったのにいきなり3機も撃墜されてしまったのだから。
「そんな馬鹿な!さっきまで1機も撃ち落されてなかったのにいきなり3機も連続で・・・・」
少し取り乱しだ様子で乗り出すマサシ。その後ろから他の神竜隊の隊員達も覗き込むように顔を出した。
「報告によると、敵要塞機にはレーザー砲が装備されているようです」 「レーザー砲?」
ジゼルが首を傾げるとマサシがジゼルの肩を突付いた。
「前にUrs(ウルス)ってロボットと戦った時に見ただろ?奴が体のあちこちから出した光線、アレと同じ物だよ」 「Ursと?・・・・・・ああ!アレね!」
思い出したジゼルは手をポンと叩いて納得したような顔をする。そんな彼女の後ろでユウタが腕を組みながら口を開く。
「まさかアイツ等ベンヌにまで『TLW』を装備させてたなんてな・・・・」
TLW(タクティカル・レーザー・ウェポン) 高性能の化学レーザーシステムを使用した軍事用レーザー兵器。その威力は工事に使われる鉄骨すらも一瞬で切り裂いてしまうほど。その為、対戦車、対戦闘機用などに使われる事が多いが、ヘルデストロイヤーがその技術に手を加えて、対人用を開発しUrsに装備させたのだ。しかも発射時間が長く回避するのは難しい。
「まさかゾークは護衛機がやられた時の事を考えて、ベンヌにTLWを・・・・」 「多分そうだろうな・・・・」
マサシとユウタは遠くで浮かんでいる敵の要塞を見ながら目を鋭くして言った。TLWという恐るべき兵器を使ってきたベンヌ、マサシ達はベンヌに侵入する事ができるのか!?
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