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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第82回   第八十一話 エミリアの願い 神竜隊の誓い

ゾークはヘルデストロイヤーの全戦力で総攻撃をする、そう言い残してマサシ達の前から消えた。マサシ達はヘルデストロイヤーを迎え撃つ為に緊急作戦会議を始めるのだった。

「社長、全員揃いました」
「それでは緊急作戦会議を始めます」

ゾークが去ってから2時間後、各国の師団長が揃った。しかし全ての師団長が揃ったわけではない、2時間以内で来れる師団長だけ揃っただけだ。その人数は僅か5人、マサシとジゼル、そして各師団長が全員テントの中で椅子に座っている。

(この人達が師団長達?)

ジゼルが隣に座っているマサシに小声で尋ねる。

(ああ、と言っても2時間以内に来られる人だけだけどな。残りの人達は着いてから伝えるらしい。とりあえず師団長だけ戦闘機でユピローズに戻って来たんだ、それで師団本隊は輸送機で今こっちに向かってる。後4時間くらいで着くはずだ)
(4時間・・・・ヘルデストロイヤーはいつ攻撃してくるの?)
(分からない、でも奴は『明日』と言った。少なくとも今日は襲ってこないだろう。今は午後8時、明日になるまで後2時間だ、つまり奴等は2時間後には攻撃してくるって事だ)
(ギリギリだね・・・・)

二人が小声で話しているとエミリアが二人に話しかけた。

「二人とも、話はそれくらいにしなさい。会議を始めるわよ」
「「すみません」」

小声で話していたのがバレて謝る二人、周りの師団長達も視線を二人にやっていた。

「皆、突然呼び戻してゴメンなさい、でも緊急の事なの。ヘルデストロイヤーが明日総攻撃を仕掛けてくるの・・・・」

エミリアの口から出た言葉に師団長達は少し慌てている。

「しかも分かっているのは明日という事だけ、明日の何時に攻撃して来るのかは分からないわ。奴等がいつ攻撃してくるかわからない以上、いつでも戦えるようにしておかないといけない、だから貴方達を呼び戻したの」

「ヘルデストロイヤーは恐らくサンドリアに全戦力を送り込んでくるはずよ、しかも彼等には核を搭載した巨大な要塞機を所持しているわ、つまり彼等の主戦力は空中にあるって事」

核を搭載した要塞機をヘルデストロイヤーは持っている、それを聞いた師団長達は更に慌てる様子を見せた。その時マサシが手を上げた。

「エミリア様、質問があるんですけど」
「何?」
「各師団を呼び戻したと仰いましたが、戦力の無くなった他の国が攻撃を受けるって事はないのでしょうか?」
「恐らく無いわね、ライトシンフォニアの主力部隊はこのユピローズにあるわ、しかもこの国には私と貴方達神竜隊が居る。貴方達はライトシンフォニアの中でも指折りの実力を持つ傭兵、そして契約者、彼等にとって貴方達は目障りなはず。真っ先に倒しに来るはずよ、ようするに彼等が陽動を仕掛けてくる事は無いわ」
「なるほど・・・・しかし、それだったら核で俺達をふっ飛ばせば済むんじゃ・・・・」
「それも無いわね、核なんて使ったらこの国自体にも大きな被害が出るわ。彼等もなるべくこの国を無傷で手に入れたいはず、更に私達が所持している武器や兵器も無傷で手に入れたいはずよ。だから核を使う可能性は低いわ」
「そうですか・・・・」
「他に質問はある?」
「いえ、もうありません」

質問が終わり、マサシは目を閉じて深呼吸をした。

「話を戻すけど、ヘルデストロイヤーの主戦力は空にある。でもだからと言って全ての戦力を空に向けるわけには行かないわ、恐らく地上からも攻撃してくるはず。そこで第1師団から第5師団には地上の防衛と敵部隊の迎撃を、第6師団から第8師団はユピローズの主力部隊と共に空中戦に回って、お願いね」

エミリアが各師団長に任務を伝えると各師団長達は黙って頷いた。

「それでは神竜隊を除いて解散、自分達の師団が到着次第明日の戦闘準備を行って。後から到着した師団長には私から伝えておくわ」
「「「「「ハッ!」」」」」

五人の師団長達は立ち上がり敬礼をしてテントから出て行った。テントの中に残ったのはマサシ、ジゼル、エミリアの三人だけ。

「・・・・・・マサシ、ジゼル、貴方達神竜隊も主力部隊と共に空中戦に回って」
「ハイ」
「・・・・・・」

ジゼルが返事をする中、マサシは黙って目を閉じていた。

「マサシ?どうしたの?」
「・・・・いや」
「・・・・マサシ、気付いているのね?貴方達を残した本当の理由を」
「ハイ・・・・」
「?」

話の内容が理解できずに首を傾げるジゼル。

「貴方達には私と一緒にベンヌに潜入してもらいたいの」
「ええ!?」

要塞機の中に潜入する、その驚くべき作戦を聞き声を上げるジゼル。

「あ、あの巨大な飛行機の中に入るんですか?」
「ええ」
「危険でしょうね。敵の要塞機の突っ込むんですから、要塞機の対空用の迎撃装備が襲ってくるでしょうし、中に侵入できたとしても、とんでもない数の敵がいる筈です。外も中も危険って事ですね?」
「そう、はっきり言って、あの要塞機を外から破壊するのは不可能、外から破壊できないのなら中から破壊するしかないわ。こんな危険な任務を任せられるのは貴方達だけなの・・・・・・」

説明をするエミリアの声から少しずつ力が無くなっていく。

「こんな任務をさせる私を憎んでくれてもいいわ、でも貴方達しかこの任務を頼める人がいないの・・・・・・お願い」

エミリアはそう言ってゆっくり頭を下げる。それを見たマサシとジゼルは驚いた。

「エ、エミリア様?」
「や、やめてください、あたし達は別に・・・・」

驚いて慌てる二人。エミリアは頭を下げたまま話続けた。

「私はこの戦いでゾークをを救いたいの。これ以上私とゾークのせいで沢山の人達を不幸にしたくないの、でも私一人の力ではできない、貴方達の力が必要なの、だから・・・・・・」

エミリアの声が微かに涙声に聞こえた。彼女は200年もの間ゾークを、愛する者を開放したくて生きてきた。ずっと辛い思いをして生きてきたエミリアを見てマサシとジゼルは立ち上がった。

「エミリア様、俺達は嫌とは言ってませんよ?お力になります。」
「ハイ、今のあたし達にはエミリア様の気持ちが分かります。愛する人の為に辛い思いをして生きてきたエミリア様の気持ちが・・・・」
「え・・・・」

思ってもいない答えに顔を上げるエミリア。彼女の顔は驚きの表情になっていた、そして瞳が潤んでいる、やはり泣いていたのだ。

「俺も愛する人ができましたから」
「はい、あたしにも」

そう言ってお互いの顔を見るマサシとジゼル。

「貴方達・・・・」

二人の顔を見て関係に気付いたのかエミリアは涙を拭ってやさしく笑った顔を見せた。

「・・・・お似合いよ、二人とも」
「「ありがとうございます」」

祝福してくれたエミリアに声を揃えて礼を言う二人。その時、テントの外から声が聞こえてきた。

「いっや〜。まさかそんな関係になってたなんてねぇ〜」
「驚いたな、いつの間にそこまで進んでたんだ?」
「おめでとう二人とも。ちょっと羨ましいけど」
「こうなるのではないかと、予想はしてたけどな・・・・」
「妹に先を越されるとはね」

声を聞き驚いてテントの入口の方を見る三人。そしてテントにコンタ、ユウタ、シオン、レイナ、ネリネの五人が入ってきた。

「お、お前達、いつからそこに?」
「エミリア様が僕達に要塞機の突入を頼む辺りからかな?」
「ッ!と言う事は、聞いてたの?エミリア様とゾークの関係の事も・・・・?」
「・・・・ああ、立ち聞きするつもりは無かったのだが」

コンタが何処から話を聞いていたのかを聞いたジゼルはもしやと思ってエミリアとゾークの関係を尋ねると、レイナが目を閉じて立ち聞きしていた事を白状した。

「エミリア様・・・・」

マサシが「どうしましょう」と言いたそうな声でエミリアの方を向くと、エミリアは軽く首を振った。

「いいのよ、ここまで来たのだから、コンタ達にも話しておかないとね」

エミリアはそう言って自分とゾークの関係を話し始めた。





数分後、エミリアの話が終わり、マサシとジゼル以外の神竜隊メンバーは少し驚きの表情をしていた。

「信じられない・・・・エミリア様とゾークが200年以上も生きてるなんて・・・・」
「ああ、そしてその200年の間にそんなに苦しい思いをして生きてきたなんて・・・・」

驚くコンタとユウタ。

「周りの人達が歳を取っていく中で自分達は歳を取らずに生きていく・・・・」
「普通の人間には耐えられないだろうな・・・・」
「しかも愛する人と戦わなければならないなんて・・・・辛すぎるわ」

悲しそうな声で言うシオン、レイナ、ネリネ。

「エミリア様はこれまでずっとこの運命に耐えて生きてきたんだ。皆、エミリア様を助ける為に力を貸してくれ」
「マサシ・・・・」

自分の代わりに頭を下げて頼み込むマサシを見るエミリア。

「当然だよ♪」
「俺達はエミリア様のおかげで今こうしているんだ」
「うん、エミリア様に人生を救われたんだもん」
「今度は私達がエミリア様の人生を救う番だ・・・・」
「私もエミリア様のおかげでこうやってジゼルと一緒にいられるんだもの、喜んで力になります」

神竜隊の隊員達は全員エミリアに助けられた、彼等は自分達の人生の恩人を、母同然のエミリアを助ける為に戦うのだ。

「ありがとう皆、恐らくこの戦いが最後の戦いになるわ。戦いが終われば皆それぞれも未来を歩む事ができる、絶対に死んではダメよ」
「「「ハイ」」」

神竜隊の隊員達が全員声を揃えて返事をする。その時マサシがある事に気づきコンタ達に尋ねる。

「ところでお前達、ゾークの攻撃で傷を負っていたはずなのにどうしてもう立てるんだ?」
「何言ってるの、僕達は契約者だよ?傷の回復速度だって常人の数倍あるんだから、2時間もあれば立つ事ができるくらいまで回復するさ。それにネリネさんは聖天使人なんだから契約者と同じくらいの回復速度があるんだよ?」
「あ、そう言えばそうだな。大変な事が立て続きにあったから自分が契約者だって事をすっかり忘れてたよ」
「しっかりしろよ、明日はヘルデストロイヤーとの決戦があるんだぞ?」

自分が契約者である事を忘れているマサシに軽く説教をするユウタ。するとコンタが目を細くしてマサシとジゼルを見て言った。

「しかも僕達を基地に運ぶ途中でお互いに告白し合うし」
「「なっ!?」」

コンタの口から予想外の言葉が出て驚きの声を出すマサシとジゼル。

「コ、コンタ、お前今なんて・・・・」
「僕達を運ぶ途中で告白し合ったて」
「ど、どうして知ってるのよ!」
「どうしてもこうしても、あの時、僕意識があったんだよ」
「ええ!?」

意識があった、それを聞いたマサシは素っ頓狂(すっとんきょう)な声を出す。

「その後に僕は意識を失ったんだ。ちなみに、気がついた後のユウタ達に君達の事を話しておいたから、さっきは君達をからかおうと、あえて始めて聞いたような態度を見せただけ」
「「ええっ!!?」」

更に素っ頓狂な声を出すマサシとジゼル。二人が他の隊員達に目をやると、全員ジーっと見ていた。

「まったく怪我人をほったらかしにして告白し合うなんて・・・・」

シオンが呆れるような声で言うと、マサシとジゼルは顔を赤くして頭を下げ。

「「すみません」」

謝った。その直後に、その場にいた全員が笑った。明日、いよいよヘルデストロイヤーとの全面戦争が始まる、マサシ達はエミリアの為、ラビリアンに住む全ての人達の為に戦うと心に誓うのだった。


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