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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第81回   第八十話 降臨 鋼鉄の巨鳥

草木が焼ける臭い、地面の草や周りの木は焦げてへし折れている。円状に焦げ、黒煙の上がる地面の真ん中に見える2つの人影、エミリアとゾークだ。二人の契約魔法がぶつかり大きな大爆発が起き、周りには大きな被害が出た。だが二人は無傷、それどころか衣服も焦げてすらいない。

「すごい事になったわね」
「ああ、辺りの地形はほとんど変わってしまった」

辺りを見回して状況を把握する二人。

「ゾーク」
「何だ?」
「教えて、貴方は何をしようとしているの?」
「愚問だな、君なら知っているはずだ。この世界を征服し力を得た後、地球に戻ってライトシンフォニアを潰す事。それが目的だ」
「ウソね、貴方達(ヘルデストロイヤー)が本気になれば私達(ライトシンフォニア)を壊滅させることだって十分可能なはず。どうして次元移動装置なんて物を作ってまでしてこのラビリアンに来たの?」
「・・・・・・」

黙り込むゾーク、エミリアはそれを見て小さな声で言った。

「私から逃げる為?」
「!」

エミリアの言葉を聞いたゾークは驚いたのか微かに声を漏らす。どうやら図星の様だ。

「そうなのね・・・・」
「・・・・・・」
「地球にいる限り、いつ私と再会し混沌の楔させられるか分からない、貴方はそれから逃れる為に私のいない世界であるこのラビリアンにやって来た。そしてこの世界を征服して支配者になろうとした。違う?」
「・・・・・・フフフフフ」

黙っていたゾークが笑い、ゆっくりと大剣を納めた。それを見たエミリアもゾークから戦う意志を感じなくなったのか自分も大剣を納める。

「やはり君には隠し事はできないか・・・・」
「・・・・やっぱりそうなのね」
「ああ、私は200年もの間、ずっと君から逃げるように生きてきた。いつかは混沌の楔をさせられ私が元の私に戻ってしまう、そうなったら力を失い、何の変哲も無い人間に戻ってしまう、私はそれを恐れた。そこで私は次元移動装置を作りこのラビリアンにやって来た。この世界なら君と会うことも無い、私は力を失わずにすむ、そう思ったのだ。だが、君達はこの世界に来た・・・・。私は君から逃れることはできなかった、これも運命なのかもしれないな、フフフフ」
「・・・・・・」

笑いながら自分の運命の厳しさを口にするゾーク。エミリアはただそれを黙って聞いていた。

「エミリア」
「何?」
「そろそろこの呪われた運命に終止符を打たないか?」
「どういう事?」
「私は明日、我が軍(ヘルデストロイヤー)の全戦力をもってこのユピローズに総攻撃を仕掛ける」
「何ですって?」
「今我々の戦力はこの世界に来る前、つまり地球にいた時よりも遥かに上回っている。我が軍に寝返ったこの世界の人間、そしてその人間を材料に作り出した生物兵器、それら全てを使って君達を叩く」
「本気なの?これは私達の問題、全戦力で攻撃するとなると周りにも大きな被害が出る、関係のないこの世界の人達もまきこむ事になるのよ?」
「何を言っているんだ、もうまきこんでいるだろう?私達がこっちの世界に来た時点で」
「・・・・そうだったわね」

ゾークに言われて既にラビリアンに住む全ての人達を巻き込んでいることに気付かされたエミリア。その時、エミリアの背後から無数の足音が聞こえてきた。

「エミリア様!」
「大丈夫ですか!?」

エミリアが振り返ると、十数人の傭兵を連れて走ってくるマサシとジゼルの姿が見えた。エミリアの下まで走ってきた二人は武器を取ってゾークの方を見る、傭兵達もゾークを囲む様に並んでG36突撃銃を構えた。

「さっきは油断したが、今度はそうは行かないぞ!」
「・・・・・・」

日本刀を構えながら言うマサシをジッと見るゾーク。すると、ゾークは腰に付けてある無線機を取った。

「残念だが、今日はここまでだ。続きは明日やるとしよう」
「何?どういう事だ」
「明日、我々ヘルデストロイヤーはこのユピローズ王国に総攻撃を仕掛ける」
「なっ!?」
「何ですって!?」

ゾークの口から出た総攻撃という言葉を聞いて驚くマサシとジゼル。周りにいる傭兵達も騒ぎ始めた。

「本当なら今すぐにでも攻撃を仕掛けたいところだが、こちらもまだ準備が終わっていない。それに、我々だけ準備ができていてお前達だけ準備もせずに戦うのはいくらなんでも不平等だろう?明日の夜明けまで時間をやる」

今すぐに攻撃しないのはゾークなりの情けなのかもしれない。そしてゾークは無線機のスイッチを入れて無線機に話しかけた。

「いいぞ、姿を見せてやれ」

そう言って無線機を切るゾーク。その瞬間マサシ達の周りが急に暗くなった。月明かりである程度は明るいはずなのに、まるで明かりの無い部屋に入ったかのようだ。

「な、何だ?急に暗くなったぞ?」
「マ、マサシ・・・・」
「ん?」

突然自分の服を引っ張るジゼルに気付いて彼女の方を見るマサシ。

「どうした?」
「う、上・・・・」
「上?」

マサシが上を見た瞬間、マサシは自分の目を疑った。月を隠すほどの大きな物体が空を飛んでいたのだ。それを見たエミリアや傭兵達も驚きを隠せなかった。

「な、何だコレは!?」
「フフフフ、コレが我が軍の切り札にして、我が軍の本拠地、『重装侵略要塞機 ベンヌ』だ!」
「重装侵略要塞機・・・・ベンヌ?」

あまりの大きさに目を丸くするマサシ。その時、エミリアが何かを思い出したように声を出した。

「まさか・・・・コレって」
「知ってるんですか?エミリア様」

ジゼルが尋ねると、エミリアがゾーク方を見て静かに語り始めた。

「昔、米軍が対外防衛の為に極秘裏に巨大な航空機を開発しているって話をを聞いた事があるわ。その航空機は都市1つ分の大きさで多数の戦闘機や戦車を搭載できるとも言われていた、でも、あまりの大きさに製造が中止されてしまい、中止になった直後にその航空機を製造していた米軍基地が何者かに襲撃され、航空機の設計図とそれに関するコンピュータプログラムが盗まれ、未完成の航空機もろとも米軍基地が消滅したと・・・・」

エミリアの話を聞いたマサシはその航空機が今自分達の真上にある巨大な飛行物体であるとすぐに気付いた。

「まさか、その米軍基地を襲撃した奴等って・・・・」
「そう、我々だ」

マサシの言いたい事をそのまま引き継ぐように話したゾーク。

「我々は米軍が開発していた巨大航空機の設計図とデータプログラムなどを全て回収し完成させた。もっとも少しばかり改良を施したがな」
「改良?」

ジゼルがゾークの方を見て聞き返した。

「防衛用の航空機をステルス、核を搭載した要塞機に作り変えたのだ。そして、その結果完成したのがこのベンヌだ」
「核搭載・・・・と言う事は同盟国であるパイシーズ聖王国を核で吹っ飛ばしたのも」
「そう、コイツ(ベンヌ)だ」
「なんて事だ・・・・」

同盟国を核攻撃し、その核を搭載した巨大な要塞機の存在を知って顔に手を当てるマサシ。

「さて、話はここまでだ。私はこれで失礼するぞ」

そう言ってゾークがマサシ達に背を向けて立ち去ろうとした。しかしマサシ達は動こうとしなかった、自分達の頭上にある巨大要塞機、要塞というからには当然機銃やミサイル発射機構のような物が備わっているはずだ、ゾークに攻撃しようとしたらその瞬間自分達は要塞機からの総攻撃を喰らう事になる。マサシ達は手を出したくても出さないのだ。離れていくゾークの後ろ姿を見ながら敵の大将が去っていくのを我慢しながら見るマサシ達。その時、広い平原を歩いているゾークの前に一機のブラックホークが着陸した。恐らくゾークを迎えに来たのだろう。ブラックホークに乗ったゾークは再びマサシ達の方を向いた。

「明日の戦いで全てが決まる。それまでに準備を整え、やり残した事をやっておけ!」

ゾークはそう言い残しブラックホークのドアを閉めた。そしてブラックホークは上昇しベンヌに向かって飛んでいく。ヘリが見えなくなった直後にベンヌが消えた、フルプ迷彩で姿を消したのだ。

「あんな物を隠し持っていたなんて・・・・」
「明日にヘルデストロイヤーがこの国に総攻撃を・・・・」

マサシとジゼルが不安を抱えるようにブツブツ言っていると、エミリアがマサシ達を見て力の入った声で言った。

「皆!すぐに基地に戻って緊急会議を始めます、すぐに会議を始められるように各国に待機している師団を呼び戻してください!」

突然力の入った声で言うエミリアを見て驚くマサシ達。

「マサシ、ジゼル、今神竜隊で動けるのは貴方達だけ、基地に戻ったら私のテントに来て」
「え・・・・ハ、ハイ」

そう言ってエミリアは早歩きで基地の方へ歩いて行った。傭兵達もそれに続くように基地に向かう。その場にはマサシとジゼルだけが残った。

「エミリア様、気合入ってるね」
「当然だろう、明日にはヘルデストロイヤーとの戦争が起きるんだからな」
「戦争・・・・」

ジゼルが恐がるような、緊張しているような声を出した。そんな彼女を見てマサシはそっと抱き寄せた。

「大丈夫だ、お前は俺が必ず守る」
「マサシ・・・・」

自分を抱き寄せてくれるマサシの背中にそっと手を回したジゼル。

「ありがとう、でもマサシ、あたしだけじゃなくて、この世界に住む全ての人を守って。その代わり、マサシはあたしが守るから」
「ジゼル・・・・ああ、分かってる」
「うん・・・・・・」
「よし、急いで基地に戻ろう!」
「うん!」

マサシとジゼルは急いで駐留基地に戻って行った。遂に始まるヘルデストロイヤーとの最終決戦、果たしてマサシ達はヘルデストロイヤーに勝てるのか?そして巨大な要塞機、ベンヌにどう立ち向かうのか!?


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