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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第8回   第七話 マサシの世界とジゼルの優しさ

M1戦車隊との戦闘から数日、あれからマサシとジゼルはM1戦車が最初に目撃された場所、襲われた盗賊団のアジト、そしてマサシ達がM1戦車と戦った死者の大地「デッド・グランド」と色々な場所に行き手掛かりがないか、どうしてこの世界にM1戦車がそして、ヘルデストロイヤーの傭兵達が居たのか細かく調べていた。しかし何の収穫もなく無駄足ばかりだった。そして今日はマサシが最初にこの世界に来たときに見た林に行く事になった。

「ここね、あたしとマサシが始めてあった場所は」
「ああ、突然緑色に光に飲み込まれて気がついたらここに倒れていたんだ」
「そう、でもここには何も無さそうよ。他の所に・・・・・マサシ?」

返事が無いのでマサシの方を見るとマサシはジーっと自分が倒れていた場所の一点を見ていた。

「どうしたの?」
「いや、ちょっと故郷の事を思い出してな・・・」
「故郷?」
「ああ、コンタや皆、今頃どうしてるんだろうな・・・」
「・・・・・」

悲しいそうな目でその一点を見ているマサシを見てジゼルは心が何かに締め付けられるような感じになった。

(マサシ・・・・やっぱり故郷に帰りたいのかな?当然だよね、そんなの・・・・・あたしまで落ち込んでどうするのよ?しっかりしなくちゃ!・・・・・でも、なに?この気持ち、なんだか胸が苦しい。、まるで、あたしはマサシが帰ることを望んでないみたい・・・・)
「どうした?ジゼル」
「え?う、ううん、なんでもない!」
「?」

ジゼルが慌てて首を横に振る姿にマサシは首をかしげていた。そしてジゼルが明るい口調で話し始めた。

「と、ところで、マサシの故郷ってどんな所?確か、地球って所なんでしょ?」
「あ、ああ、俺は日本っていく国で生まれ育ったんだ」
「ニホン?どんな国?」
「どんなって・・・・どこから説明すればいいかな?」

ジゼルが出した話題でほんの少し明るさが戻ったマサシ。ジゼルと話しているうちにマサシもだんだん乗ってきたようだ。

「デンワ?」
「ああ、電話は遠くにいる人と会話ができる機械なんだ」
「遠くに人と会話が!?それってどんな魔法を使ってるの?」
「ハハハ、魔法じゃないさ。科学だよ、俺の世界はこっちの世界と違って魔法は無いけど科学や技術が発展しているんだ。俺が持っているこの携帯もその電話と同じ技術が使われてるんだ」

マサシはそう言いながらポケットの中の携帯電話を取り出しジゼルに見せた。

「こ、こんな小さなもので本当に人と会話ができるの?」
「ああ、今こっちの世界には俺の持っているこの一つしかないから使えないけどな」
「そうなんだ。でも、マサシの世界には色々な物があるのね〜。『空を飛ぶ鉄の乗り物』や『勝手に開く扉』、『いろんな世界を覗ける箱』、それにそのデンワっていう機械・・・」

電話の他にも色々な物を説明してもらったジゼルだがまるでわからない様子であった。「空を飛ぶ鉄の乗り物」それはおそらく飛行機のことだろう。そして、「勝手に開く扉」は自動ドア、「いろいろな世界が覗ける箱」はテレビだと思われる。ジゼルも理解できないのかもしれないが、それ以前にマサシの説明がややこしいのかもしれない。

「ま、まあ・・・俺の説明じゃ分かりづらいだろうけど、そこは勘弁してくれ。ハハハ」
「ふ〜ん。ところでさっき言っていたコンタって誰?」
「コンタは俺の相棒だよ。まだ12歳だけど俺と同じ傭兵で、凄く信頼できる奴だ」
「え?12歳で傭兵?一体その子いくつの時傭兵になったの?」

12歳という年で傭兵をやっていると聴いてジゼルも驚きを隠せなかった。

「確か・・・・アイツと始めてあったのは、アイツが9歳の時だったな」
「きゅ、9歳!?じゃあ、その子は9歳で傭兵になったの?」
「いや、正式に傭兵になったのは10歳になってからだ」
「10歳で傭兵になれるの?貴方の世界って・・・」
「勿論無理さ、でも、アイツも俺と同じ契約者だからな、10歳で傭兵になる事も許されたんだよ」
「え?そのコンタって子も契約者なの?」
「ああ」
「じゃあ・・・・その子も・・・」
「ああ、忘れられてた」
「・・・・・・どうして」
「ん?」
「どうしてそんなに小さい子が契約を?」

ジゼルの寂しそうな目で見つめられたマサシは彼女の顔を見る事ができずに前を見ながら話し始めた。

「コンタは病気で両親を亡くしたんだ。でも親戚は誰もコンタを引き取ろうとしなかったんだ・・・」
「どうして・・・?」
「事情があってな・・・それで一人でいる所を俺が見つけて会社に連れて帰ったんだ」
「それでその子はその後どうなったの?」
「行くところも無いから会社で引き取る事になったんだ。でも俺達の会社は傭兵会社。会社にいるには傭兵になるしかなかったんだ。だから当時9歳だったコンタは仕方なく契約者になって力を手に入れたんだ」
「そんな、どうして傭兵になり必要があったの?普通に生きていけばよかったのに!」

マサシの話しを聞いてジゼルは少し感情的になった。

「落ち着け。勿論、俺達はそっちの方を勧めた。でもアイツは自分から契約者になる事を決意したんだ。自分を助けてくれた会社に恩返しをする為にってな」
「・・・・・」
「いいかジゼル、お前の言いたい事はよく分かる。でもアイツは自分の信じた道を選んだんだ。アイツが選んだ人生に俺達は口を挟むことはできない。俺だって自分の信じた道を選んだ、そして今の俺がここにいる。ジゼルだってそうだろ?」
「あ・・・・」

感情的になっていたジゼルは再び寂しそうな目をした。だが、今回はマサシはしっかりジゼルの目を見ながら会話していた。

「アイツは傭兵になった事を後悔してはいなかった。むしろ傭兵になれた事を誇りに思っていた、自分の力で多くに人が救われた、救う事ができてよかったって、あいつは言ってたよ」
「・・・・・」

マサシの言葉を聞き少し考え込んだジゼルは笑って言った。

「そうだよね、その子が自分で選んだ道だもんね。きっとよかったんだよ、ゴメン、取り乱して」
「いいんだよ、お前はとても優しい、コンタだってきっと同じ事を言うさ」
「ありがと・・・」
「さてと、腹も減ってきたし、一度サンドリアに戻って昼飯にしようぜ」
「うん、当然マサシのおごりでしょ?」
「勘弁してくれよ〜」
「アハハハッ」

ジゼルは明るく笑いながら、マサシの情けない声を出しながら、サンドリアへ戻って行った。町に戻った二人は昼食を取るため料理屋に入った。従業員に案内され席に着いた二人は料理を注文した後、ジゼルは再びマサシの世界について質問をしてきた。

「ねえ、もっと貴方の世界の事を教えてよ」
「どんなって、どんな事が知りたいんだ?」
「それじゃあ、マサシの組織ってそんなところ?」
「俺の組織?ああ、俺の勤めている会社の事か。俺の組織はライトシンフォニアっていう傭兵会社なんだ」
「ライトシンフォニアって、この前あたし達を襲ってきたM1戦車っていう兵器に乗っていた連中が言ってた・・・」
「奴等はヘルデストロイヤー、俺達ライトシンフォニアに敵対するライバル組織さ。あそこの傭兵がやる事は犯罪に関する事ばっかりで周りから恐れられているんだ、周りの組織でアイツ等に逆らってるのは俺達くらいさ」
「そんなにヤバイ連中なの?」
「ああ、他の組織を潰してその組織の資金を奪って自分達の物し、金の払わない依頼人がいればその場で始末する最低の連中さ。おまけに奴等には俺と同じ契約者が山ほどいる。戦力はほぼ同じ、いや奴等のほうが上かもしれない。ちなみにアイツ等が潰した組織は100を超えている」
「そ、それじゃあ逆らえないし、関わりたくもないわね。って言うかどうして貴方達はそんな危険な連中と戦ってるの?やっぱり、ヘルデストロイヤーやってる事が許せないから?」
「それもあるけど、それ以前にうちの社長がヘルデストロイヤーの社長となにか因縁があるみたいなんだ。俺もよく分からない」

マサシが話を終えると丁度いいタイミングなのか料理がは運ばれてきた。

「さて、話はこれくらいにして飯にしようぜ。俺もう腹減ったよ」
「そうね、じゃあ食べましょうか」

二人は運ばれてきた料理を口に運んでいった。その料理のほとんどがマサシの口に運ばれていったがジゼルは少しも困った様子はなく、文句も言わなかった。むしろ我が子を見守る母のよう顔をしていた。食事が終わるとマサシは満腹なった腹をゆっくりとさすりながら幸せそうな顔をした。

「満足した?」
「ああ」

ジゼルの質問にマサシは笑いながら答えた。食事を終えて店を出ようとした時、店の中に男が飛び込んできた。

「大変だ!『ビッグ・ハウンド』が襲われたらしいぞ!」
「なんだって!?」
「本当かよ?」

店の客達が騒いでいる中、マサシは落ち着いた様子でジゼルに問いかけた。

「ビッグ・ハウンドって?」
「この町で一番大きな傭兵団よ。傭兵の中にはあたし達みたいに一人で依頼を受ける人がいれば団体で受ける傭兵もいるの、ビッグ・ハウンドはその団体の中でも最も人数が多く、腕の立つ傭兵が集まった連中なの。そのビッグ・ハウンドを襲うなんてよほどのバカか、ビッグ・ハウンドを上回る人数の団体ね」
「・・・・・」

マサシはジゼルからビッグ・ハウンドの事を聞いた後、腕を組んで考え込んだ。数日前に自分達を襲ってきたヘルデストロイヤーの戦車隊、マサシはまたヘルデストロイヤーの仕業ではないかと考えていたのだ。

「それでどんな奴等なんだ?ビッグ・ハウンドを襲った連中ってのは、その様子だとかなり手強い連中なんだろ?」
「ああ、見たこともない武器を装備していて、ビッグ・ハウンドの連中、まるで歯が立たないみたいなんだ。死者の大地で襲われてるらしいぞ!」
「!!」

男の話を聞いてマサシは思った、その襲ってきた連中はまさか、ヘルデストロイヤーなのかと。

「マサシ!」
「ああ、もしかすると・・・」
「行くの?」
「当然!」
「あたしも行くわ!」
「・・・・・止めてもついて来るんだろ?」
「当然♪」

ジゼルはウインクしながら微笑んだ。マサシはそれを見て小さく笑った後、代金をテーブルに置き店を出た。





サンドリアを出て、二人は再び死者の大地へとやって来た。ここは数日前に彼らがM1戦車と戦った場所だ。二人は周りを見渡していたが、これといって変わった物はなかった。

「確かあの男、死者の大地だって言ってたよな?」
「うん、確かにそう言ってた」
「だけど、以前来た時と同じなにもない荒野・・・」

荒野だ、と言おうとした瞬間、突然北東の方向から大きな爆発音が聞こえてきた。

「な、なに?」
「行くぞ!」
「あ、ちょっと待ってよ!」

マサシは爆発音がしたほうへ走って行き、ジゼルもマサシの後を追って走り出した。二人が爆発の起きた場所に着くとそこには信じ難い光景があった。所々に爆発の後、大地に刺さっている剣、そして倒れている傭兵達。

「こ、これって・・・・」
「多分、いや間違いなくビッグ・ハウンドの傭兵達だろう・・・」
「いくらマサシの世界の武器が強力だからって一流の傭兵達がこんなアッサリやられちゃうだなんて・・・」
「ああ、一般の兵士達ならこの世界の傭兵でも負けないはずだ。だとすると、よほどの大部隊か・・・・幹部クラスの奴が動いてるのか・・・」

マサシが一人でブツブツ言いながら考えていると、正面から一人の男が走ってきた。姿からしてビッグ・ハウンドの傭兵のようだ。しかも怪我を負い何かから逃げるように走ってきた。

「マサシ、あれ!」
「ん?」
「ハァハァ、お、おいあんた達!逃げろ!アイツが来るぞー!!」
「アイツ?アイツってなんだ?」

マサシは走ってきた男の言葉を聞き、訊き返した。

「て、鉄の・・・鉄の巨・・」

男が言い終えようとした瞬間、男の身体を一本の黄色い光線が貫いた。

「グアッ!!」
「「!!」」

男はそのまま倒れ動かなくなってしまった。それを見ていたマサシとジゼルは驚く事しかできなかった。そして、男の死体の後ろからなにやら声が聞こえてきた。

「フッ、この辺りでは一番の力を持った傭兵団だと聞いたからどれほどの奴等かと思ってやってみればこの程度。とんだ期待はずれだったようだ。コイツ等ではなさそうだな、我等の先遣隊を倒した奴等は・・・」
(!!)
(マ、マサシ・・・なんなのアイツ?)

マサシ達の目の前に現れたのは全身を鉄で被った巨人。そう、Urs(ウルス)だった。

(あれはロボットだ・・・)
(ロボット?)
(簡単に言えば、人の形をした鉄の塊だ)
(人の形をした鉄の塊!?)
(ああ、それもあれは戦闘用のロボットだ。ロボットが相手じゃいくらい一流の傭兵団でも歯がたたないのも納得がいく・・・)

二人がコソコソ話しているとUrsは二人に気付きゆっくりと近寄ってきた。

「ほう、まだ生き残りがいたか・・・」
「!!」
「しまった!」
「・・・・・ん?貴様、こっちの世界の人間ではないな?」

Ursがマサシを見て問い掛けるとマサシは笑いながら、少し汗をかきながら答えた。

「へぇ〜、分かるのか?」
「俺のサーチシステムを使えばそんなこと簡単だ」
「俺がこっちの世界の人間じゃないって事が分かるなら、当然俺の名前も分かるよな?」
「勿論だ。ライトシンフォニア第一特殊部隊 神竜隊隊長 秋円マサシ」
「バレバレか・・・」
「貴様がこっちの世界に来ている事は少々予想外だったが、貴様なら我々の先遣隊を軽々と倒せたてもおかしくはないな」
「ど〜も。ところで、アンタは何者だ?他人のことばっかりペラペラ喋らないで自分の事も話したらどうだ?」

自分の事がアッサリばれてしまった事から少々自分に不利だと思い、相手の事を知るために問い掛けたマサシ。

「それもそうだな。俺はヘルデストロイヤー軍事総責任者 Urs」
「やっぱりヘルデストロイヤーだったか・・・。しかも軍事の責任者とはなぁ」
「では、今度はこちらが質問をさせてもらうぞ」
「・・・・・」
「貴様はどうやってこっちの世界に来た?」
「奇遇だな、俺も同じ質問をしようと思っていたんだ。」
「そうか、なら話は速い。教えてくれるか?もっとも素直に言わなければ力ずくで訊きだすまでだが」

Ursはそう言ってゆっくりと腕を顔の高さまで上げて構えた。マサシも刀に手をおき、いつでも抜けるようにしている。

(・・・・・ジゼル)
(なに?)
(お前は隠れてろ)
(え?で、でも・・・)
(いいから早く!コイツは本気でいかないと勝てるかどうか分からない。隠れてないと巻き込まれるぞ)
(え?)
(早く!!)
(う、うん)

ジゼルはマサシに言われ、できるだけ二人から距離をとり、一番近い岩場に隠れた。そんなジゼルを見ていたUrsはマサシに挑発にするように言った。

「ほう、逃がしたか。お前の女か?」
「さあな、想像にまかせる」
「まあいい、お前を半殺しにした後でゆっくり料理してやる」
「・・・させるかよ」

傭兵団を壊滅させたヘルデストロイヤーのUrs。マサシの傭兵としてのカンが強く訴えていた、「本気で行け」と。果たしてマサシは勝てるのだろうか?


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