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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第79回   第七十八話 想い

ゾークの攻撃に倒れてしまった神竜隊。ゾークが止めを刺そうとしたその時、エミリアが現れた。

「久しぶりね、何年ぶりかしら?」
「忘れたよ、お互い姿は変わってないからな」

世間話をしながらエミリアは倒れているマサシ達を見た。

「・・・・エ、エミリア様」
「・・・・ど、どうしてここに?」

エミリアに気付き倒れながら声を出すマサシとジゼル。傷だらけの二人を見てエミリアは真剣な目でゾークの方を見る。

「・・・・ゾーク、これ以上この子達に手を出すのは止めて」
「先に手を出したのは秋円なんだけのだ」
「マサシが?」
「ああ、私を君に会わせると言って戦いを挑んできたんだよ」
「私に会わせる為に?」
「私と君の過去を話したらな。混沌の楔をさせようとしたのだろう」
「彼に話したの?」
「本当にいい部下を持ったな」

エミリアは倒れているマサシに近づき、膝をつけてマサシの顔にそっと手をつけた。

「エミリア様・・・・」
「ゴメンなさい、私のせいで貴方達がこんなに傷だらけになってしまって」
「そんな、俺が勝手な行動したからです。エミリア様が謝る事なんて・・・・」
「いいえ、どんな理由とはいえ、私が原因である事は事実。謝らせて」
「そんな、エミリア様はなにも・・・・」
「悪くありません・・・・」

自分のせいで家族同然のマサシ達を傷付けてしまった、エミリアは悲しそうな顔でマサシとジゼルを見た。そんな彼女の顔を見て罪悪感を感じる二人も悲しそうな顔をした。エミリアは謝罪を終えるとゆっくり立ち上がりゾークの方を向きなおした。

「ゾーク、ここは私に免じて引いてくれないかしら?」
「悪いが、今回は君の頼みでもこれだけは聞けない。先に手を出したのはそっちだ、なにより、私を本気にさせたのだ、見逃すつもりはない」
「そう・・・・」

エミリアは自分の後ろで倒れている神竜隊を見てどうするか考える。そしてある作戦を思いつく。

「マサシ、ジゼル」
「「ハ、ハイ」」

声を揃えて返事をする二人。

「私が彼を食い止めるからコンタ達を連れて基地に戻りなさい」
「え?」
「エミリア様一人でゾークの相手をするんですか?」
「ええ」
「無茶ですよ!」

ジゼルがエミリアを止めようとしたが、エミリアは笑いながらマサシとジゼルを見て言った。

「大丈夫よ、これでもあなた達よりずっと強いんだから」

笑いながら、少しふざけ半分で言うエミリアを見てマサシとジゼルはお互いの顔を見て頷き、ゆっくり立ち上がる。

「分かりました、エミリア様お気をつけて」
「基地に戻ったらすぐに戻ります」

マサシはユウタを背負い、両手でシオンとレイナを持ち上げ、自分の尻から黒い竜尾を生やしてそれでコンタを持ち上げた。ジゼルもネリネを背負い立ち上がる。二人は仲間を連れて基地の方へ走り出した。二人が走り去るのを確認したエミリアは背負っている大剣を抜いて構えた。

「久しぶりだな、君と剣を交えるのは」
「そうね」
「腕は上がったか?」
「貴方こそ」
「フッ、まあお互いに戦ってみれば分かるな」
「そう言う事、さあ、始めましょう」
「いいだろう」

ゾークも大剣を構え直してた。エミリアとゾークは大剣にオーラをまとわせてお互いに闘気をぶつけ合い、戦いが始まった。





「ハァハァハァ!急げジゼル!」
「ハァハァ!ま、待って!」

ずっと走り続けて息が切れ掛かっているマサシとジゼル。更に二人は傷だらけの上、戦いで傷つき気絶している仲間達を背負って走っているのだ、体力の消耗も激しいだろう。

「と、ところで、姉さん達は大丈夫かな?」

ジゼルが走りながらネリネ達の様態を尋ねる。マサシは走りながら質問に答えた。

「大丈夫だろう、聖天使人のネリネは回復速度が速いし神竜隊(コイツ等)も契約者だ、絶対に大丈夫だ」

マサシは仲間達の能力などを考えて正確な答えを言う。それを聞いたジゼルは少しホッとした顔をした。

「ジゼル、基地が見えてきたぞ!」
「うん、急ごう!」

二人は駐留基地を確認し更に走るスピードを上げた。





その頃、エミリアはゾークを食い止めていた。二人の大剣がぶつかり合い火花を散らしている。

「なかなかやるわね」
「君もな」

大剣を混じり合わせながら普通に会話する二人。言葉や表情は変わっていないが闘気を激しくぶつけ合っている。

「フッ!」

ゾークの攻撃を防いだエミリアは距離を取り小声で何かを言い始めた。

「契約魔法か、ならば」

そう言ってゾークも小声で魔法の演唱を始めた。

「聖なる光よ、我が意志に従い、魔を引き裂く断罪者となれ!ホーリージャッジメント!!」

演唱はエミリアの方が速かった。エミリアの頭上に巨大な光の槍が姿を現し、ゾークに狙いを定めた。

「漆黒の殺意、全てを滅する闇の終曲を奏でよ!ダークネスノヴァ!!」

光の槍が出現した直後にゾークも演唱を終えた。ソークの頭上には巨大な黒い球体が姿を現した。

「最強の契約魔法を使うとはな、正直驚いたよ」
「そう言って、最初から知ってたんでしょ?私がこの魔法を使うって事」
「フフフ、バレていたか」
「何年つき合ってると思ってるの?貴方の考えている事ぐらいお見通しよ」

エミリアは大剣持っている右手を下ろし、開いている左手を上げた。まるで光の槍を自分で持つかのように。そしてゾークも同じように開いている左手を上げて黒い球体を持つかのような行動に出た。

「もしこの2つの魔法がぶつかったら・・・・」
「被害は計り知れないでしょうね・・・・」
「そうなる事を計算して秋円達を逃がしたのだろう?」
「あら、バレてた?」
「何年つき合ってると思ってる?」
「それ、さっきのお返し?」
「さぁな・・・・」

まるで友達の会話のように話し合うエミリアとゾーク。かつて愛し合っていた二人、だが今では戦い合う仲になってしまった。この呪われた運命に終止符を打つ為には戦うしかない。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

距離を取り、お互いに黙ったまま見つめ合う二人。そして二人は遂に左手を大きく相手に向かって振った。

「ハアーーーー!!」
「ウオーーーー!!」

大声で叫ぶ二人は光の槍と黒い球体を相手に目掛けて投げつける様に攻撃した。そして槍と球体が接触した直後、大きな爆発が起きた。





「はっ!」

爆発音に気付いたマサシは振り返る。ジゼルも一緒に振り返った。そして二人の目には夜でも昼と思えるくらい明るくするほどの光を放つ炎が空に浮かび上がった。

「あ、あれって・・・・」
「エミリア様だ・・・・」
「一体何が起きてるの?」
「・・・・・・ん?」
「どうしたの?」

何かに気付いたマサシを見て尋ねるジゼル。するとマサシの表情が急変した。

「ジゼル!踏ん張れ!」
「え?」
「いいから早く!」
「う、うん」

マサシに言われて下半身に力を入れるジゼル。その瞬間、とてつもない風が二人を襲った。

「キャア!」
「う、ううう!」

二人は仲間を背負いながら必死で風圧に耐えた。

「な、何なのこの風は!?」
「多分さっきの爆発で起きた爆風だ!」
「それじゃあエミリア様が?」
「丘からはそれ程の離れてはないが、ここまで爆風がとどくのは相当力のある攻撃だ。今それができるのはエミリア様とゾークの二人だけだ」

しばらく踏ん張っていると、やがて風が治まり、二人はゆっくりと姿勢を戻した。

「治まったか。よし、急いで基地に行くぞ」

マサシは振り返り駐留基地に向かおうとする、だがジゼルはそのままジッとしている。

「どうしたジゼル?」
「・・・・・・エミリア様、とても可哀想」
「え?」
「だって、将来を誓い合ったのに戦わないといけないなんて、酷すぎるよ」
「ジゼル、知ってたのか?エミリア様とゾークの関係を?」
「うん、さっきエミリア様が話してくれたの。あたしに同じ思いをさせたくないって」
「同じ、思い?」

ジゼルの言葉の意味をうまく理解できないマサシ。

「・・・・・・マサシ」
「ん?」
「こんな時にこんな事を言うなんてどうかと思うけど、言わせて」
「何だ?」
「あたしね、あたし・・・・・・貴方の事・・・・」
「・・・・ジゼル?」
「・・・・・・好き・・・・なの」
「・・・・!」
「エミリア様が辛い過去を背負って生きている事を知ってて貴方に想いを伝えるなんて、無神経だって事は分かってる。でも、伝えたかったの、貴方にあたしの気持ちを・・・・」

突然の告白に驚くマサシ。だがあまり驚いた表情を見せなかった。まるで彼女の気持ちに気付いていたかのように。

「・・・・・・」
「・・・・・・」

しばらく黙り込む二人、そして最初に口を開いたのはマサシだった。

「ジゼル・・・・」
「・・・・・・」
「俺もな、お前と同じ気持ちだったのかもしれない」
「え?」
「お前が悲しそうな表情をしている時、なぜか胸が締め付けられる様に苦しかった。その時の俺はまだその気持ちを知らなかった、だけど、今お前の気持ちを知った時、ようやく気付いた・・・・・・ジゼル」
「・・・・・・」
「俺もお前が好きだ」
「!」

マサシの口から出た自分への想い。それを聞いたジゼルの心は嬉しさと驚きに満ちていた。

「マサシ・・・・」
「ジゼル・・・・」

仲間を背負っている事を忘れる程お互いの顔を見つめ合うマサシとジゼル。だが、その時、何処からか声が聞こえてきた。

(ようやくお互いの想いを伝えたか)
(随分時間が掛かったわね)
「「!!」」

突然の声に驚く二人、そしてその瞬間二人の目の前が真っ暗になった。

「な、何だ!?」
「あれ?マサシ、姉さん達が居ない!」
「何だって!?」

自分の背中を見ると、さっきまで背負っていたはずのユウタの姿が消えている。コンタ達の姿も無かった。

「ア、アイツ等何処に行っちまったんだ!?」
「一体どうなってるの!?」

慌てて周りを見回す二人。その時、辺りが少しずつ明るくなって行き、やがて宇宙空間となった。

「な、何コレ!?」
「う、宇宙!?」
「何を驚いている?」
「「!!」」

驚く二人が声の方を見ると、そこにはマサシと同じ顔をしたディアボロスが立っていた。そう、ここは虚無宇宙(ゼロスペース)だったのだ。

「マ、マサシ?」
「だ、誰だお前は?」
「何だって?」
「もしかして、記憶を戻してないの?」

ディアボロスの後ろから、今度はジゼルと同じ顔をしたルシフェルが姿を見せた。

「あ、あたし?」
「やっぱり、戻ってないじゃない」
「おっと、スマンスマン。今戻す」

ディアボロスがそう言って指をパチンと鳴らした。すると、マサシとジゼルの表情が変わった、まるで心が無いように、目から光が消え、口を小さく開けたままジッと立っていた。その時、二人の頭の中にはディアボロスとルシフェルト初めて会った時の映像がバックフラッシュしていた。しばらくすると、二人は糸の切れた操り人形のようにガクッと首を落とした。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「おい、聞こえてるか?」
「・・・・・・ああ、聞こえてるぜ」

マサシとジゼルが顔をゆっくりと上げると、マサシは神でも射殺すかのようにディアボロスを睨んでいた。ジゼルは睨んでこそいないが鋭い視線でルシフェルを見ていた。

「久しぶりね、ジゼル」
「ええ、久しぶり」
「元気だったか?マサシ」
「おかげ様でな」

エミリアとゾークの戦いの中、自分の気持ちを伝える決意したジゼルは自分の想いをマサシに伝えた。マサシもジゼルに自分の想いを伝える。相思相愛になった二人、だがその瞬間、再び虚無宇宙に飛ばされた二人はディアボロスとルシフェルに再会、以前の記憶を取り戻した。エミリアとゾークの戦いはどうなったのか、マサシとジゼルはこの後どうなるのか?


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