ゾークを捕まえる為に彼に戦いを挑んだマサシ。だがゾークの力はマサシの想像を超えていた、絶体絶命のその時、ジゼル達がマサシを助ける為にやって来たのだ。
「マサシ!大丈夫!?」 「ジゼル、皆!どうしてここに?」 「あんな大きな音が聞こえたら誰だって気付くよ!」
ジゼル達はゾークを警戒しながらマサシの下へ駆け寄り、マサシの状態を確認した。
「大丈夫?」
ジゼルがマサシの体にそっと触りながら彼の傷を見て尋ねる。マサシは笑いながらジゼルの顔を見て言った。
「これくらい大丈夫、掠り傷だ」 「掠り傷って、あちこち傷だらけじゃない。コンタ、治療してあげて」 「OK、任せて」
ジゼルはマサシの体を見てコンタに治療を頼む。そんなジゼルを見てマサシを表情こそ変えてはいないが驚いていた。出会ったばかりの時の彼女と比べてジゼルは神竜隊に馴染んできていた。
「聖なる光よ、癒しの詩で傷を包み込め!ハートレスキュア!!」
コンタはハートレスキュアを発動させマサシの体中の傷をあっという間に治した。
「これで大丈夫」 「サンキュー、コンタ」
マサシの傷が治った事を確信したゾークはマサシ達に向かって話しかけてきた。
「休憩を終わったか?」 「「「!!」」」
突然話しかけられて驚くマサシ達。彼等は一斉に自分達の愛用の武器を取って構える。
「マサシ、あの人がゾーク?」 「ああ、そうだ」
マサシはジゼルの質問に答えて再びゾークの方に視線をやった。
「凄いね、さっき来たばかりで戦ってもいない僕達にも闘気がビリビリ伝わってくる」 「ああ、さすがヘルデストロイヤーの社長、闘気だけじゃなく覇気も凄い・・・・」
コンタとレイナがゾークから伝わってくる気を感じ取り驚きながら言う、そしてジゼル、ユウタ、シオン、ネリネも同じ様に感じ取っていた。そしてそんな彼等を見てゾークは小さく笑う。
「フッ、これで神竜隊が全員揃ったわけだ。折角だ、お前達全員で掛かって来い。秋円一人では相手にならなくてな、退屈していたのだ」 「あんだと!?・・・・・・と、言いたい所だが、アイツの言うとおりだ。正直俺一人じゃアイツに勝てる気がしない。皆、力を貸してくれ」
素直に自分の力の無さを認めるマサシはジゼル達に一緒に戦ってくれるよう頼む。するとジゼル達はニッと笑った。
「最初からそのつもりさ」 「うん!」 「て言うか、ボロボロのアンタを一目見て分かってたわ、押されてるって」 「お前の性格なら恥など気にせずにそう言うと思っていた・・・・」 「ええ」 「マサシ、一緒に戦おう!」
ユウタ、コンタ、シオン、レイナ、ネリネ、そしてジゼルは自分達の思っている事を素直に口にしてゾークの方を向きなおして再び武器を構える。
「素晴らしい絆だな、かつての私にもそんな物があったな・・・・」
少し力の無い声で言うゾークを見てマサシとジゼル以外の隊員達が首を傾げる。
「さて、お喋りはこれ位にして、そろそろ戦いの戻るか・・・・」 「・・・・・・皆、行くぞ!」
少し何かを考え込むように黙っていたマサシは隊員達に言う。そして隊員達もマサシの方を見て頷いた。
「奴は強い、初めから全力で行くぞ!」
そう言ってマサシはゆっくり目を閉じた。
「解放!レベル・3!!」
目を開きマサシはレベル・3を発動させる。そして彼の顔や体に紫色の光のラインが浮き上がる。それを見たコンタ、ユウタ、シオン、レイナの四人も見合って頷いた。
「「「「解放!レベル・3!!」」」」
四人もレベル・3を発動させた。すると、コンタの体に青いラインが、ユウタの体に緑色のラインが、シオンの体には赤いラインが、そしてレイナの体に黄色のラインが浮き上がった。
「これで俺達の身体能力が更に強化された、さっきまでとは違うぜ!」
レベル・3を発動させた契約者が五人に聖天使の力を持つ少女が二人。それに比べ敵は契約者とはいえゾーク一人、明らかにマサシ達の方が有利だ。だが、そんな状況でありながらもゾークは取り乱す様子も無く冷静に武器を構えていた。
「レベル・3を発動したか、面白い、どれ程のものか見せてもらおう」
そう言ってゾークは腰の甲冑の一部分を軽く触った。するとその部分が開き、そこから1丁の拳銃が姿を現した。
「デザートイーグル・・・・」
マサシは拳銃の名前を口にし構え直す。大口径の銃を見て少し脅威になると考えたのだろう。
「皆行くぞ!」
マサシの声と共に神竜隊の隊員達は一斉に武器を構え直す。そして、戦いが始まった。
「フッ!」
マサシは力強く地面を蹴りゾークに向かって走り出した。その後にユウタとシオンが続く。三人の移動速度は普段とは比べ物にならない位上がっていた。更に彼等の後ろからコンタとレイナが銃で援護射撃を始める。
「ジゼル、ネリネさん、僕達はここでマサシ達を援護します。二人は僕達の護衛についてください!」 「分かった!」 「任せて!」
銃を撃ちながらジゼルとネリネに護衛要請をするコンタ。要請を受けた二人は聖天使の力を解放させた。髪は銀色に変わり、体が赤く光り出す、二人の聖天使はコンタとレイナの側によりゾークの攻撃に備える。それを確認したコンタとレイナは目線をゾークに戻して撃ち続ける。
「フン、またしても正面か・・・・」
2度目の正面攻撃に呆れながらもゾークは大剣で自分に向かってくる銃弾を全てガードしている。ゾークの2mほど近くまで近づいた瞬間、マサシの隣にいたユウタとシオンが大きく横に飛ぶ。そしてマサシはゾークの正面から、ユウタは右から、シオンは左からゾークに向かっていく、3方向からの同時攻撃だ。しかもレベル・3を発動していた為三人はあっという間にゾークに近づく事ができた。
「ホゥ、意外と早いな」 「今更気付いたのか!」 「私達もナメられたものね!」 「流石のお前もこれは避けられないだろう!」
一気に間合いを詰めた三人は同時にゾークに攻撃を仕掛けた。
「ウインドグレネード!!」 「バーニングダガー!!」 「魔神轟来斬(まじんごうらいざん)!!」
ユウタは風のまとった拳でゾークにパンチを放ち、シオンは愛用の大型ナイフに炎をまとわせ、そのナイフでゾークを攻撃、そしてマサシも再び魔神轟来斬でゾークを攻撃した。すでに間合いが詰めてあるため回避行動は取れない。今度こそ攻撃が当たる、誰もがそう思った、その時。
「ダークトリック」
ゾークが小声で何かを言った。するとゾークの周りの地面が突然黒くなり底から無数の黒い光球が飛び出した。その光球はゾークの近くに居た三人に命中した。
「ぐわっ!!」 「キャア!!」 「うわっ!!」
光球を受けてそのまま飛ばされたマサシ達。それを見て驚いたジゼル達。コンタとレイナも一時銃撃を止める。
「マサシ!ユウタ!シオン!」
ジゼルは慌ててマサシ達の下へ向かって走り出した。
「ジゼル!一人で行ったらダメだ!」
コンタの声を聞き立ち止まるジゼル。
「でも、マサシ達が!」 「大丈夫!三人はあれ位じゃやられない!しかも今はレベル・3を発動しているんだ。絶対大丈夫!」 「・・・・・・」
コンタの言葉を聞いてそのままマサシ達をジゼル。自分の技を受けて倒れるマサシ達を見てゾークは1歩ずつマサシの下へ歩き出した。
「フン、レベル・3を発動してもこの程度とは・・・・」 「やっぱりかなり過小評価してたんだな」 「!」
突然マサシの声が聞こえて少し驚くゾーク。目の前で倒れているマサシを見ると、マサシは一瞬で立ち上がり、ゾークの左手に蹴りを放つ。するとゾーク野持っていたデザートイーグルは宙を舞い10mほど離れた所に落ちた。
「折角出したデザートイーグルも、1回も使えずに手から離れちまったな?」
マサシが言い終えた直後、倒れていたユウタとシオンも立ち上がりチャクラムと投げナイフをゾークに向かって放つ。ゾークは大きく後ろに跳び攻撃を回避、チャクラムと投げナイフはお互いを弾き合いそのまま地面に落ちる。
「いててて・・・・レベル・3を発動してなかったら危なかったな」 「ああ、全くだ」 「おまけに服も焦げちゃったわ」
立ち上がって体中を触る三人。それを見ていたジゼルもマサシ達が無事なのを確認してホッと一息ついた。
「ね?大丈夫だって言ったでしょ?」
後ろから小さく笑いながらジゼルに言うコンタ。ジゼルもコンタの方を向いて微笑む。
「うん、仲間なんだからもう少し彼等を信じなくちゃね」 「うん、うん」
ジゼルを見て笑いながら頷くコンタ。そんな二人を見てレイナとネリネも「大丈夫」と目で合図をして再びゾークの方を見た。
「これは驚いた、ダークトリックをまともに受けて立ち上がるとは。ならば、これならどうだ?」
ゾークは自分の大剣を両手で持ち、刃を自分の顔の高さまで上げる。すると大剣の刃に紫のオーラがまとい始めた。
「何だ?」 「気をつけろ、何かデカイのが来るぞ・・・・」
マサシが警戒するように告げると、ユウタとシオンはゾークに意識を集中させる。するとゾークがゆっくり大剣を上段の位置まで上げる。
「ッ!気をつけろ!アイツ大剣から紫の光を放って攻撃してくるぞ!」 「どうして分かるの?」 「さっき一度受けたんだよ・・・・」
最後に力の無い声で言うマサシ。
(だが、今度はレベル・3を発動している、かわす事はできるはずだ)
心の中でそう呟くマサシ。だがゾークの攻撃はマサシの予想を超えていた。
「デュラハンロード!!」
さっきと同じ技で攻撃してきたゾーク。紫の光がマサシに迫って行く、回避行動を取ろうとしたマサシ達、だが行動に出ようとした瞬間、光はマサシ達に命中した。
「「「うわああああああ!!」」」
マサシ、ユウタ、シオンの三人は攻撃を受けて後ろの大きく飛ばされた。しかし紫の光は止まる事無くそのままマサシ達の後ろにいるジゼル達に向かっていく。
「なっ!?」 「皆!避け・・・・」
避けるように指示を出したレイナ。だが遅かった、攻撃はジゼウ達のも命中。ゾークの攻撃はマサシ達の想像していた以上にパワーもスピードも高かったのだ。攻撃が終わった後、周りの地形はゾークの攻撃でボロボロになり、神竜隊のメンバー達は全員倒れている。
「うう・・・・」
倒れているマサシは半開きの目でゾークを見ていた。
(な、何だ今のは・・・・?さっきまでとパワーもスピードも違うじゃないか・・・・)
この時マサシはようやく気付いた、ゾークは今まで全力を出さずに戦っていた事を。
「フフフフ、やはり戦うからには全力を出さないと失礼だな」
ゾークはゆっくりと倒れているマサシに近づいていく。そしてマサシの前までやって来たゾークは大剣を振り上げマサシに止めを刺そうとする。
(クッ!体が動かない・・・・ここまでなのか?)
心の中で思うマサシ。そしてゾークが大剣を下ろそうとした、その時。
「待って」 「!」
何処からか女性の声が聞こえ、ピタリと止まるゾーク。声のする方を見ると、そこには大剣を背負ったエミリアが立っていた。
「エミリア・・・・」 「久しぶりね、ゾーク」
遂にライトシンフォニアとヘルデストロイヤーの社長が再会した。神竜隊を一瞬で全滅させるほどの力を持つゾーク。こんな力を持つ敵を相手にエミリアはどうするのだろうか?
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