エミリアとゾークから悲しき過去を聞いたマサシとジゼル。マサシとジゼルは二人の話を聞いてどう思ったのか、そして話を終えて立ち去ろうとするゾークに銃口を向けるマサシ。そしてマサシの危機を感じ取ったジゼル。この後一体どうなるのだろうか?
「本気で私と戦うつもりか?」 「ああ、本気も本気だ」 「止めておいたほうがいいぞ?」 「ご心配ありがとう、だが俺もライトシンフォニアの精鋭部隊の隊長、簡単には負けない」 「そうか、警告はしたぞ?」
ゾークは仮面をゆっくりと被りマサシの方をジッと見る。マサシも銃口をゾークに向けたままゾークの顔を睨んでいた。
「・・・・・・」 「どうした?撃たないのか?」 「慌てるなよ、ヘルデストロイヤーの社長を相手にしてるんだ、慎重に行かないとな・・・・」 「フン、意外と臆病なのだな・・・・・・お前が来ないのなら、私から行くぞ」
その瞬間、ゾークはもの凄い速さでマサシの目の前までやって来た。
「!!」
驚いたマサシは慌てて引き金を引こうとしたがゾークの方が速く、右手で銃を持っている手を弾き、空いている左手でマサシの胸に掌打を打ち込んだ。
「グハァ!」
掌打を打ち込まれたマサシは10m近く飛ばされ地面を転がって行った。
「遅いな、こんな攻撃も避けられないとは・・・・」 「テテテテ・・・・少し油断しただけだ!」 「なら今度は油断せずに来い」 「言われなくてもっ!」
マサシはそう言って銃を捨てると、黒龍刀と白龍刀を抜きゾークに向かって走りだす。ゾークも向かってくるマサシを見て背中の大剣を抜いた。
「正面、私もなめられたな・・・・」
ゾークは大剣を構え、マサシの攻撃に備える。
「双竜剣奥義、魔神轟来剣(まじんごうらいけん)!!」
マサシはジャンプして二本の刀を揃え一気に振り下ろす。だが、ゾークは大剣で頭上から迫ってくるマサシの斬撃を止めた。
「クッ!止められてか!」 「フン、甘いな」
呆れるような声で大剣を振り、マサシの攻撃を振り払う。マサシは空中で一回転し、少し離れたところで着地した。
「この程度か、エミリアの弟子だからもう少しできると思っていたが、期待はずれだ・・・・」 「さっきから好き勝手言ってくれるじゃないか、それならこれはどうだ?」
マサシは刀をゆっくりと下ろし、目を閉じる。その瞬間マサシはゾークの視界から消えた。
「!」
目の前から消え、一瞬驚くゾーク。だがゾークはすぐにマサシがどこに行ったのかを感じ取り振り向いた。振る向くと、そこにはマサシがいた。
「ハッ!」
ゾークの背後を取ったマサシは黒龍刀で斜め切りを仕掛ける。だがゾークは瞬時に大剣で攻撃をガードした。
「おしい!」
悔しがるマサシは大きく後ろに跳んで再び距離を取る。
「フフフ、なかなかやるな。少しばかりお前を過小評価していたようだ」 「少しじゃなくて、かなりだろう?」 「ハハハハ、お前は面白い奴だな」 「そうか?」
軽く話し合った後、二人は黙り込みジッとお互いを見る。
「ではそろそろこちらも攻撃させてもおう・・・・」 「!」
攻撃宣言をしてきたゾークを見てマサシは黒龍刀と白龍刀を構え直す。その直後、ゾークは大剣をゆっくり両手で持ち、上段の構えを取った。
「受けよ!デュラハンロード!」
ゾークは大剣を一気に振り下ろす。すると大剣の刃から紫色の光が放たれた。その光は一直線にマサシに迫っていく。マサシはとっさに二本の刀で光を止めようとした。だが、マサシの予想以上にその攻撃は強かった。光はマサシの刀に触れた瞬間、爆発を起こしマサシの吹き飛ばした。
「ぐわあああああ!!」
大きな爆発音と共にマサシは大きく後ろに飛ばされて地面を転がる。マサシが止まるのと同時に彼の持っていた二本の刀は宙を舞い、ゆっくりと落下して地面に刺さった。
「!!」
爆発音を聞いたジゼルはピクッと反応して爆発のした方へ走りだした。
「やっぱり何か遭ったんだ!マサシ、無事でいて!」
ジゼルはマサシが爆発に関係していると確信していた。理由は彼女自身にも分からない。ただ彼女は必死で走った。すると、彼女の後ろから声が聞こえてきた。
「おい!ジゼル!」
ジゼルが立ち止まり後ろを向くと、ユウタ達が自分に向かって走ってくるのが見えた。
「ジゼル、今の爆発音は何だ?」 「ユウタ、皆。分からない・・・・でも、その爆発のしたほうにマサシがいるの」 「なんだって!」
ジゼルの口から驚くべき事を聞いたユウタは声を上げる。
「それは確かなの?」 「うん、あたしには分かるの」
シオンが尋ねるとジゼルは迷う事無く答える。すると今度はレイナがジゼルに尋ねた。
「だがどうしてマサシがいると分かる?実際に見たのか・・・・?」 「ううん、見てはいないわ」 「ならどうして分かる・・・・?」 「分からないの、でも今マサシが危険な状態だってあたしの頭の中に誰かの声が聞こえる、そんな感じがするの」 「誰かって?それに、それだけでマサシが危ないって決めるのは・・・・」
レイナの隣でコンタが少し納得の行かないように言うとジゼルが少し力の入った声で言った。
「それでも、あたしには分かるの!マサシが危険だって!」 「ジ、ジゼル?」
突然感情の入った声で訴えてくるジゼルを見てコンタは少し下がる。
「あ、ゴ、ゴメン。つい熱くなっちゃって・・・・」
自分が取り乱している事に気づき軽く謝罪するジゼル。その時、ネリネが一歩踏み出して皆を見て言った。
「とにかく、今は爆発音のあった所へ行きましょう。マサシがいるかいないかは行けば分かるわ」
ネリネの言うとおりだと思った一同無言のまま頷き爆発の下方へ走りだした。そんな彼等に遅れて走り出すジゼル。
(本当に、誰かの声が聞こえてきたような感じがした・・・・・・一体誰?それにあたしはその声を聞いたことがある様な気がする)
走りながら心の中で考えるジゼルは必死で記憶の糸をたどった。
(・・・・・・ダメ、思い出せない。誰の声だっけ?・・・・・ううん!今はそんな事はどうでもいい!速くマサシの所へ!)
マサシの事が最優先だと考えたジゼルは考えるのをやめ、ユウタ達の後を追うように走り出す。
走るジゼルの姿を虚無宇宙(ゼロスペース)で椅子に座りながら見物しているルシフェル。相変わらず虚無宇宙には何もない、ただ光る星しかない宇宙のままだ。
「フフフフ、いいわよジセル。一所懸命走りなさい、速くしないとマサシが死んじゃうわよ」
ジゼルと同じ姿をした少女は笑いながら自分の視界に移るジゼルを見て独り言を言っていた。すると後ろの方から男の声が聞こえてきた。
「死なれちゃ困るんだよ、俺と奴は繋がってるんだからな」
何処からかワインと2つのグラスを持って歩いてくるディアボロス。ルシフェルは振り返って無邪気な声で言った。
「分かってるわよ、だからこうやってあの子にひっそりと助言してるんじゃない」 「それはいいが、『マサシが死んじゃうわよ』って言うのは余計じゃないのか?」 「フフフ、ゴメンね♪」
軽く謝った後に指をパチンと鳴らすルシフェル、すると彼女の座っている椅子の隣に小さな机が現れ、その隣にルシフェルの座っている椅子の同じ椅子が姿を現した。ディアボロスは机の上にワインとブラスを置き、現れたもう一つの椅子に腰掛けた。
「どんな調子だ?」 「今急いでマサシの下へ向かってるわ。そっちはどう?」 「ちょっと待ってくれ・・・・・・」
ディアボロスは座ったままジッと何かを見始めた。しばらくしてルシフェルの方を向いた。
「ちょっと危険な状況だな、早くしないと奴も危ない」 「どうするの?このまま彼が殺されたら貴方も消えちゃうわよ?」 「心配ない、常にタツノスケを見張らせたある。何かあったらアイツがなんとかするさ」 「そうね」 「ところで『アイツ』はどうだ?」 「順調よ、後は目を覚ますのを待つだけ」 「これでようやく二人目の『魔人』が誕生するわけだ」 「結構時間が掛かっちゃったわね?」 「なぁに、まだ時間は十分ある、ゆっくりやろう」 「そうね、フフフフフ」 「フフフフフ」
ディアボロスとルシフェル、マサシとジゼルの顔をした二人の男女は笑いながら真っ赤なワインの入ったグラスを鳴らし、それを口へと運ぶのだった。
「ハァハァハァ・・・・」 「どうした?もう限界か?」
ゾークの攻撃をまともに受けてしまったマサシは少しよろけながら立ち上がった。
「へっ!まだまだ、やっと体が温まってこれからが本番ってとこだ」
マサシは小さく笑いながら刺さっている黒龍刀と白龍刀を抜いて再び構える。
「ホゥ、つまり、お前はまだ戦えるのだな?」 「ああ!」
ゾークが大剣を上段まで上げて再びデュラハンロードを放とうとした時、彼の後ろから複数の声が聞こえてきた。
「マサシー!」 「この声は、ジゼル?」
声の聞こえた方をマサシとゾークが見ると、ジゼル達が走って自分達に向かってきた。マサシとジゼル達が合流し、神竜隊が全員揃った。これでゾークにも勝てると思ったマサシ達、だが彼等はまだ知らなかった、ゾークはまだ本当の力の半分も出していないという事を。果たしてゾークの全力はどれ程のものなのか?そしてディアボロスの言う魔人とは何なのか!?
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