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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第75回   第七十四話 悲愛物語(サッドラブストーリー)

200年以上生きていると口にしたエミリア。そしてそれを聞かされて驚くジゼル。二人のいる駐留基地から少しはなれた所では、マサシがヘルデストロイヤーの社長、ゾークと対面していた。彼の口からエミリアとの関係を聞かされるマサシ、エミリアとゾーク、一体二人の間に何があったのか。

「エリックに関係があるって、どういう事ですか?」

駐留基地のテントの中でエミリアに訊くジゼル。エミリアは目を閉じてゆっくりと話し始めた。

「・・・・・・今から200年前、私とゾーク、そしてエリックはイギリスの小さな町で生まれたの。ゾークとエリックのお父さんは村の村長である父と親友でよく家に来ていたわ、ゾークとエリックもお父さん達に連れられて家に来てたの、それでよく私の遊び相手をしてくれたわ」
「幼馴染・・・・」
「二人は本当に優しかったわ。私が笑っている時は一緒に笑ってくれて、私が泣いている時は励ましてくれた」
「・・・・・・」

ジゼルはエミリアの顔を見ながら真剣に話を聞いていた。

「だけど・・・・・・」
「え?」
「私が14歳の時、私とゾークは惹かれ合う、恋に落ちた」





200年前、夕日が照らすイギリスの小さな村のはずれにある小さな木の下で二人の少年と少女が立っている。若い頃のエミリアとゾークだ、二人はお互いを見詰め合っていた。

「ねえ、ゾーク」
「なんだい、エミリア?」
「私達、大きくなったらずっと一緒よ?」
「ああ、ずっと一緒だ」

二人はお互いの顔をゆっくりと近づける、そして影が重なった。そんな時、二人の立っている木から少し離れた所に立っている木の陰から二人を覗く者がいた、銀色の短い髪をした少年。

「クッ・・・・!」

その少年はゾークとエミリアを見て歯を食い縛っている。





駐留基地から少し離れた丘で話をしているゾーク、そしてそれを黙って聞いているマサシ。

「その銀髪の男がさっき言っていたエリックってわけか」
「そうだ、アイツは私とエミリアの交際が気に入らなかったのだ、アイツも私と同じようにエミリアの好意を懐いていたのだ」
「恋敵・・・・」
「その時の私はアイツの感情を気づいていなかった。気づいたのはそれから6年も経った後だった」





エミリアとゾークが木の下で将来を誓い合ってから6年後、村のある教会の前に立っていたゾーク。その隣にはエミリアが立っていた。

「私達が結婚式を挙げるならこの教会がいいな」
「『例』の伝説かい?」
「ええ、この教会に古くから伝わる伝説、『インシェルの祝福』」
「インシェルの祝福、光の妖精が将来を誓い合う男女に光の力を与えてその二人がずっと幸せに暮らせるようになるっていう伝説だね?」
「うん、私はずっとゾークと一緒にいたいわ」
「僕もだよ、エミリア」

自分に寄りかかるエミリアの肩にそっと手を置くゾーク。その時、ゾークがある事を思い出して声を出した。

「あ・・・・」
「ん?どうしたの?」
「そう言えばこの教会にはもう1つ伝説があるって父さんから聞いたことがある」
「どんな伝説?」
「この村のはずれに朽ちた教会があるのは知ってる?」
「ええ、確か・・・・『ティアマットの教会』だったっけ?」
「うん、なんでもその教会には闇の力を持つ竜の魂がさ迷っているらしいんだ」
「た、魂?」

いきなり不気味な話になりエミリアは少し怯えるような顔をした。

「その教会、そのインシェルの教会と形も色も全く同じだから間違えてそのティアマットの教会で結婚式を挙げた人がいたらしいんだ」
「そ、そうなんだ・・・・」
「その教会で式を挙げると、その竜の魂が男女に呪いをかける寿命を短くしてしまうらしい」
「寿命を短く!?」
「うん、その教会で式を挙げた男女は必ず30歳になる前に死ぬって」
「ちょ、ちょっとゾーク!折角インシェルの祝福の話で気分が良かったのに、気分をぶち壊すような事言わないでよ!」
「ハハハ、ゴメンゴメン。でも、それは昔の話さ、それにあの教会はもうボロボロだ、間違えるなんて事はないよ」
「そ、それもそうね・・・・」
「でも・・・・」
「ま、まだ何かあるの?」

再び怯えるような顔をするエミリア。

「あの教会、ボロボロになってからは式を挙げなくなったけど、時々人が行くらしいよ」
「え?」
「何でも誰かを心の底から怨んでいる人がその教会の祭壇で竜の魂に悪魔の願いをすると、その怨んでいる人を竜の魂が呪い殺すって」
「ま、またそんな不気味な話を・・・・」
「ハハ、ゴメン。忘れて」
「全くよ・・・・」
「ハハハハハ!」

楽しそうに会話をするエミリアとゾーク。そんな二人の姿を建物の陰から覗いているエリック。覗くのをやめて建物の壁にもたれてエリックはニヤリと笑っていた。





翌日の朝、ゾークは自宅から外に出て背筋を伸ばしていた。

「ん〜!今日もいい朝だな。さて、今日は・・・・」
「おい、ゾーク」

突然をかけられて声の方を向くゾーク。そこにはエリックがいた。

「エリック、おはよう」
「ああ、おはよう」
「どうしたんだ、こんな朝早くに?」
「いや、ちょっと話があってな」
「話し?」
「ああ、ただここじゃあ話し難い事だから、ここに来てくれないか?」
「え?」

エリックから小さな紙を手渡され、ゾークはそれを受け取る。

「それじゃあ、必ず来てくれよ」
「ああ、分かった」

エリックは軽く挨拶をしてそのままゾークに背を向け立ち去った。

「一体どんな話なんだ・・・・?まあ、行ってみれば分かるか」

ゾークはエリックから渡された紙を見て少し驚いた。なんとその場所はティアマットの教会だったのだ。

(エリックの奴、どうしてこんな所で話なんか・・・・とりあえず言ってみよう)

この時、ゾークは親友であるエリックの事を少しも不審に思わなかった。これが悲劇の始まりだとも知らずに。その時、今度は少女の声が聞こえてきた。

「ゾーク」
「エミリア」
「どうしたの、こんな所で?」
「いや、エリックが話があるってこの紙を渡されたんだ、この紙に書かれている場所に来てくれって」
「コレを?」

ゾークが持っているの紙を見て聞き返すエミリア。

「ただ・・・・」
「ただ?」
「紙に書かれている場所がティアマットの教会なんだよ」
「え?あそこに?」

ティアマットの教会と聞き少し驚くエミリア。ゾークは紙をズボンのポケットに押し込みエミリアを見て口を開いた。

「とりあえずこれから行って来るよ。エミリア、また後で」
「う、うん・・・・」

ゾークはティアマットの教会の方へ向かって歩き出した。そんな彼の姿を見て少し不安に思うエミリア、彼女はゾークに気づかれないように後をつけた。





数分ほど歩き、ゾークは朽ちた教会に着いた。

「ここがティアマットの教会・・・・」

不気味な程ボロボロな教会を見て驚くゾーク。彼はゆっくりと歩き出し、ドアのノブに手をかけてゆっくりとドアを開いた。中に入ると、椅子は壊れており、ステンドガラスは割れている、教会の奥でエリックが立っていた。

「エリック、話ってなんだ?」
「・・・・・・」

入口に立っているゾークに背を向けたままエリックは黙っている。ゾークはゆっくりとエリックに近づいて行く。

「エリック、どうしたんだ?」
「・・・・ゾーク」
「なに?」
「お前、エミリアのことが好きなのか?」
「え?」

突然の事に少し戸惑いを見せるゾーク。

「な、なんだよ突然」
「答えてくれ・・・・」
「・・・・・・あ、ああ、好きだ」
「そうか、何時からだ?」
「何時からって・・・・・・」

エリックの口からエミリアの事を聞かれて顔を赤くするゾーク。そんな時、エリックがゆっくりと振り返ってゾークを見た。

「まぁいい。これでハッキリしたよ」
「ハッキリって、何が?」
「お前は俺から全てを奪っていくって事がだ」
「え?」

突然エリックの口から想像もしていなかった言葉を聞き耳を疑うゾーク。

「エ、エリック、奪うって・・・・」
「そうだろ?お前は俺からいろんな物を奪ったじゃないか。俺とお前は同じ様に暮らしてきたのに周りはいつもお前ばかりを見ている。お前は全てを独り占めしていった」
「ひ、独り占めなんて・・・・」
「してるじゃねぇか!」
「!!」

自分を睨みながら怒鳴るエリックを見て驚くゾーク。

「お前はいつも俺からいろんな物を奪い、俺のやりてぇ事をぶち壊しやがる!むかしっからそうだ!俺がどんなに努力しても、お前はその1つ上を行っちまいやがる!6年前のあの時もなぁ!」
「!?」

6年前、その言葉を聞き、ゾークは更に耳を疑った。

「6年前って・・・・エリック、まさか・・・・」
「ああ、見てたんだよ、6年前、村外れの丘の上でエミリアとキスをしていたお前をな!」
「!」
「あの後、俺がどれだけ苦しんだか・・・・」

エリックは俯き自分の悔しさと苦しさをゾークにぶつけた。

「お前に分かって堪るかよ!!」
「・・・・・・」

親友の口から出た言葉、その親友の心の闇にショックを受けるゾーク。

「だが、俺は今までお前にいろんな物を奪われたが、エミリアだけはお前には渡さない!」

エリックは背中に手を回し、鋭く光るナイフを取り出した。

「エ、エリック、一体何を!?」
「お前をここで殺す!お前が死ねばエミリアもきっと俺の下に来てくれるはずだ!それに、ここはティアマットの教会、人が死んでも呪いって事で片付けられるだろう」
「エリック・・・・最初からそのつもりで・・・・」

エリックはナイフを向けてゆっくりとゾークに近づいて来る。

「あの世で俺に詫び続けろ!ゾークゥ!!」

エリックはナイフを向けてゾークに走っていく。ゾークはショックのあまり動く事ができなかった。そしてナイフがゾークに刺さる瞬間。

「やめてぇ!」

ゾークをかばう様にゾークに飛びつくエミリア。

「エ、エミリア!」
「ど、どうしてここに!?」

エミリアに気づきゾークとエリックは彼女を見て驚く。

「痛っ!」
「ッ!エミリア!!」

エミリアの腕を見て驚くゾーク。彼女の腕から血が垂れていた。

「エミリア、どうしてこんな奴を庇うんだ?俺からいろんな物を奪ったコイツを!」
「・・・・・・エリック、あなたがゾークを恨むなら、私も同罪よ。私もあなたの気持ちに気づかなかったのだから・・・・」
「違う、エミリアは悪くない。悪いのは全部コイツだ!」

エミリアを見た後再びゾークを見てナイフを突きつけるエリック。

「ゾーク!お前のせいでエミリアがこんな辛い思いをしているんだ!俺とエミリアの為に・・・・」

エリックがゾークにナイフを突きつけて責めるように言っていると、ゾークがエミリアを抱きかかえながらゆっくりと立ち上がった。さっきまでのゾークと雰囲気が違っている。

「・・・・・・」
「なんだ、やるのか?」
「・・・・くも」
「何?」
「よくもエミリアを・・・・」
「フン、何を言ってるんだ?エミリアが傷ついたのはお前のせい・・・・」
「お前のせいだ!!」
「「!!」」

突然大声を出したゾークに驚くエミリアとエリック。よく見ると、ゾークの背後に黒い霧状の物が有った。その霧状の物はみるみる形を変えていき、三つ首の竜の形に姿を変えた。

「な、何だよそれ・・・・」
「エリック・・・・」

さっきまでと違い、とても低い声でエリックの名を呼ぶゾーク。

「お前が僕を憎むのは自由だ。僕はお前の憎しみを否定する資格は無いのだから。だが、エミリアを傷付けたのなら話は別だ!」
「ゾ、ゾーク?」

さっきまでと雰囲気が違い、とてつもない殺気を現しているゾークを見て驚くエミリア。一体ゾークに何が起きたのか、その時、エミリアはまだ気づいていなかった、目の前にいるのが自分の愛したゾークではない事を・・・・。


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