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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第74回   第七十三話 悲しみを背負う男女

ヘルデストロイヤーが核を所持している事を知るマサシ達。彼等はそんな悪魔の兵器を使ってユピローズの同盟国、パイジーズ聖王国を核攻撃し、パイジーズに住む多くの人々とライトシンフォニアの1個旅団を消滅させてしまった。マサシ達はヘルデストロイヤーの核攻撃からラビリアンの人々を守るための対策をするためにユピローズへ戻った。

「奴等はまた何時核を撃って来るか分かりません、そこでひとまずパラメドラにの人達には町から離れてもらい、核の目標になりにくい所に隠れてもらいました」
「そう、ご苦労様」

マサシからの報告を受けるエミリア。ここはユピローズの駐留基地のテントの中。神竜隊はパラメドラの住人達の非難活動の手伝いを終えて1時間前にユピローズに戻って来たのだ。外はすっかり暗くなっていた。

「ラビリアンの人々を使って作られた生物兵器。ヘルデストロイヤーの核。そしてヘルデストロイヤーを襲った私達(ライトシンフォニア)以外の第三の組織。驚く事が三つ同時に来るなんて・・・・」

エミリアが目を閉じてマサシからの報告を確認するように言う。

「とんでもない事しやがるな、アイツ等は」
「本当よ!特にあの生物兵器の件、絶対に許せないわ!」

ヘルデストロイヤーのやり方が気に入らず怒りを表すユウタとシオン。それに続きコンタとレイナが静かに口を開く。

「どうしてこんな事ができるんだろう」
「分からない、だが人の命を道具のように扱う奴等のやり方は気に入らない・・・・」

コンタ達は自分達のヘルデストロイヤーに対する怒りや不安を口にする。そんな中、マサシは目を閉じて黙っていた。

(・・・・・・どうしてこんな事になってしまったのかしら)
「ん?」

エミリアが小声で何かを言っている事に気づき、片方の目だけを開きエミリアを見るマサシ。

(私達に与えられて宿命なのかもしれない、そして貴方が変わってしまったのもその宿命のせい、そうよね?ゾーク)
「エミリア様、何か仰いましたか?」
「え?い、いいえ。何でもないわ」

珍しく慌てる素振りを見せるエミリアを見て、表情こそ変えないが少し驚くマサシ。

「・・・・・・」
「ご苦労様、核や第三組織の事はこちらで調べておくわ。あなた達はゆっくり休んで」
「「「ハイ」」」

エミリアから休むように言われ神竜隊は返事をするのと同士に席を立ちテントを出て行く。その時、エミリアがテントから出ようとするジゼルを呼び止めた。

「ジゼル、ちょっといいかしら?」
「ハイ?」

エミリアに呼び止められ振り返るジゼル。

「どうしたの?」

振り返るジゼルに気づき尋ねるネリネ。

「彼女と少し話があるの、あなたはマサシ達と一緒に先に行ってて」
「はぁ・・・・」

ネリネは首を傾げてテントから出て行き、テントにはジゼルとエミリアの二人だけが残った。

「話って何ですか?」
「ジゼル・・・・」
「ハイ」
「あなた、好きな人はいる?」
「へ?」

意外な事を聞かれて間抜けな声を出すジゼル。

「好きな人よ、いるの?」
「え、ええ!?」
「答えて」
「そ、そんな事いきなり言われても・・・・」
「お願い・・・・」

真剣な目でジゼルに尋ねるエミリア。ジゼルは真剣な目で自分を見るエミリアの顔を見て少し顔を赤くして答えた。

「い、います・・・・」
「マサシ?」
「・・・・・・ハ、ハイ」

赤い顔のまま小声で答えるジゼル。

「・・・・・・あなたにだけは話しておこうと思ったの」
「え?あたしだけ、ですか?」
「ええ」
「どうして?」
「あなたが私に似ているからよ?」
「?」

エミリアの言っている事がよく分からないジゼル。





駐留基地から少し離れた小さな丘、そこをマサシが一人で歩いていた。

「・・・・・・」

マサシは星空を見上げながら何かを考えている。

(エミリア様とゾークが何らかの関係にある事は聞いていたが、一体・・・・・・)
「こんな夜中に一人で散歩か?」
「!!!」

何処からか低い男の声が聞こえ、驚くマサシは黒龍刀に手をかけて見回した。しかし誰もいない、マサシは神経を集中させて辺りを探った。

「誰だ!何処にいる!?」
「ここだ」

突然背後から声が聞こえ、振り返るとそこには銀色の西洋甲冑を着た男が立っていた。身長はマサシより少し高く、大剣を背負っている。

「い、いつの間に!?」
「フフフフ」
「・・・・ヘルデストロイヤーか?」
「いかにも」

ヘルデストロイヤーの人間だと知り、距離を取ったマサシ。

「お前は?」
「私はゾーク」
「!!」

ゾークという名を聞き驚くマサシ。目の前にいるのはヘルデストロイヤーの社長だったのだ。

「お前が、ゾーク?」
「フッ、お前が秋円マサシか。話は聞いていたが、こうやって会うのは初めてだな」
「どうしてお前がここにいる!?」

ゾークを睨みながら言うマサシ。

「エミリアの弟子に一度会ってみたくてな、こうしてやって来たって訳だ」
「敵地に一人で来るとは随分余裕じゃねぇか?」
「ああ、余裕だとも。貴様等など我々の手に掛かれば簡単に捻り潰せる。だが安心しろ、さっきも言ったように弟子であるお前に会いに来ただけだ、戦う気はない」
「そうか、じゃあ挨拶ついでに1つ聞きたいことがある」
「何だ?」
「お前とエミリア様はどういう関係なんだ?」





「話って、何ですか?」
「・・・・私とゾークの関係よ」
「エミリア様とゾークの関係・・・・ですか?」

少し悲しそうな表情で頷くエミリア。ジゼルはそんな彼女をジッと見ていた。

「・・・・・・私には幼馴染の男の子が二人いたの。『エリック』とゾーク」
「ゾーク・・・・」





「エリック?」

マサシは警戒しながらゾークを見て聞き返す。

「私とエリックはイギリスの小さな村の住人の息子、エミリアはその村の村長の娘だった」
「エミリア様が村長の娘・・・・」
「私達の父親は村長の親友でよくエミリアの家に行っていたのだ」

ゾークは星空を見上げて話し続けた。





「私達はいつも一緒だったわ。笑う時も、遊ぶ時も。本当に楽しかった・・・・」
「・・・・・・」

エミリアの話を黙って聞いているジゼル。だが、ジゼルはエミリアの目をジッと見て気が付いた、彼女の目が少し潤んでいる事に。

「でも、私とゾークは何時しか惹かれ合うようになって行った。そして小さい時に、私達は将来を誓い合った」
「婚約、ですか?」
「ええ・・・・」





「お前とエミリア様が愛し合っていた?」
「信じられないか?」
「ああ、お前とあの清らかなエミリア様が婚約していたなんて信じられねぇよ」
「信じる信じないはお前の勝手だ。だが、事実だ・・・・」

ゾークは夜空を見上げるのを止めてマサシの方を見た。

「だが、エリックはそれを良くは思っていなかったようだ」
「何・・・・?」

夜空を見上げていたゾークがゆっくりとマサシの方を向いた。

「秋円、お前は私がいくつに見える?」
「いくつ?歳の事か?」
「ああ」
「分かるわけないだろう!仮面で顔が見えないのに!」
「フフフフ、それもそうだな」

そう言ってゾークは仮面に手を伸ばし、ゆっくりと仮面を外した。仮面の下からは金色の短髪を持つ青年の顔が出てきた。見たところ、マサシより少し年上のように見える。

「・・・・・・」
「驚いたか?この顔は自然の四塔(フォースド・ガイア)にすら見せた事はない」
「ああ、まさかそんなに若いとは思わなかった。見たところエミリア様と同じくらいか・・・・」
「見た目はな。しかし、私とエミリアは見た目よりもずっと歳をとっている」
「ん?」





「ええ!?」

突然大声を出すジゼル。

「ほ、本当ですか?」
「ええ、私とゾークは200年近く生きているの」
「見た目はあたしより少し年上くらいなのに・・・・」
「私達は不老なのよ、この事を知っているのは私以外にはゾークとあなただけよ」
「一体、どうして・・・・?」
「私とゾークが不老になった原因はエリックにあるの・・・・」
「え?」

エミリアとゾークは200年以上生きてきた不老の存在だった。それを知らされたマサシとジゼル。そしてこの後、エミリアとゾークの口から悲しき物語が語られる事を、二人はまだ知らない。


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