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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第73回   第七十二話 悪魔の兵器

スペクターを倒したマサシ達は坂木の部隊と合流、その数分後に増援部隊とも合流した。彼等は増援部隊から何者かからの襲撃を受けて壊滅したヘルデストロイヤーの中隊の話を聞き、坂木に状況を説明し、現場に向かった。

「こりゃあ、酷いな・・・・」

マサシは目の前の光景を見て驚いた。ヘルデストロイヤーの傭兵や戦車、軽装甲機動車が攻撃を受けてボロボロになっている。生存者は一人もいなかった。

「一体何が遭ったのかしら?」
「分からない、でもヘルデストロイヤーの部隊、しかも中隊を壊滅させちまうほどの力を持っているんだ、できる奴に違いない」

自分の隣で何が遭ったのかを考えるジゼルを見て相手の力を考えるマサシ。そんな時、破壊された戦車を調べていた傭兵がマサシを呼んだ。

「秋円大尉、ちょっとコレを見てください!」

傭兵に呼ばれて戦車の下へ向かうマサシ、それに続くジゼル。二人が戦車を見ると、その戦車には切傷のような物が付いていた。

「コレは・・・・?」
「刃物で斬られた様な跡だな・・・・」
「戦車だけではありません、傭兵や軽装甲機動車にも似たような切傷が付いています。

傭兵や軽装甲機動車の切傷を見て考え込むマサシとジゼル。その時、二人の後ろからコンタの声が聞こえてきた。

「マサシ!ジゼル!コレを見て!」
「ん?」

マサシとジゼルの下に駆け寄ってきたコンタが自分の手に乗っている物を見せた。

「コレは?」

ジゼルがコンタの持っている物を見て尋ねる。コンタは真剣な顔をして二人の方を見て言った。

「コレは銃弾だよ」
「銃弾?でも・・・・」
「そう、斬られてるんだよ」

そう、コンタの手の平の上に載っている銃弾は切り落とされて先端から真っ二つになっていたのだ。

「先端から真っ二つになっているって事は、自分に向かってくる弾を切り落としたって事だな?」

マサシがコンタの方を見て言うと、コンタは黙って頷く。

「そんな事できるの?だって、銃の弾って目では見えないくらい速いんでしょ?」
「ああ、普通の人間にはできない。だけど、俺達のような契約者ならできる」
「本当!?」
「全ての契約者ができるわけじゃない。契約者の中でも特に力のある奴にしかできない。ヘルデストロイヤーを襲ったって事は奴等に敵対する奴の仕業だろう。でも奴等に敵対する奴で銃弾を切り落とす事ができるのはライトシンフォニアの契約者くらいしかいない」
「確かにこの世界では銃弾を切り落とす事のできる人はいないわ」

ラビリアンには銃の弾を切り落とす事ができる者はいないと真剣な顔で言うジゼル。そんな時、コンタが静かに口を開いた。

「ライトシンフォニアにもいないよね?」
「え?」

コンタの言った事がよく分からず聞き返すジゼル。

「現在、ライトシンフォニアに銃弾を切り落とす程の実力を持った契約者は僕達以外にはいないよ」
「それじゃあ、彼等を襲ったのは・・・・」
「少なくとも、ライトシンフォニアではない」

「ライトシンフォニアではない」、マサシの言葉を聞き驚くジゼル。

「それじゃあ、彼等を襲ったのは一体誰なの?」
「今の段階では分からない、もう少し詳しく調べる必要があるな・・・・」

マサシが腕を組んで考え始める。その時、コンタの後ろの方からユウタが走ってきた。少し慌てた様子で。

「マサシ!」
「ユウタ、どうしたんだ?」
「たった今、市松大佐から無線が入った!急いでテントにきてくれ」
「ん?どうして無線くらいで俺に?」
「分からない、急いでマサシに変わってくれとの事だ」

首を傾げるマサシ。

「・・・・・・?」
「とにかく来てくれ」

何かあると思ってマサシはユウタと一緒にテントに向かった。ジゼルとコンタも二人の後を付いて行く。しばらく歩き、現場から少し離れた所でテントが張られている。マサシ達が中に入ると、シオン、レイナ、ネリネ、そして坂木大尉がいた。

「お前達も着てたのか」
「ええ」
「たった今トトロム平原から連絡があったと知らされてな・・・・」
「かなり急ぎの内容のようよ」

シオン達は無線機の前に集まってマサシ達を待っていたのだ。

「秋円大尉、こちらです」
「ありがとうございます」

坂木から無線機を受け取ったマサシはゆっくりと口に近づける。

「秋円です」
「秋円大尉か?私だ、市松だ」
「市松大佐、どうされたんですか?」
「実は、数分前にユピローズ王国から長距離無線が入ったのだ」
「ユピローズから?」

市松の話を聞き少し驚く神竜隊のメンバー達。

「それで、無線の内容は?」
「それが・・・・・・」

突然黙り込む市松。

「秋円大尉、『パイジーズ聖王国』を知っているか?」
「パイジーズ?確か、このパラメドラと同じようにユピローズと同盟を結んだ国ですよね」
「そうだ、そのパイジーズ聖王国の事だ」
「?」

よく分からずに再び首を傾げるマサシ。

「・・・・・・パイシーズ聖王国の首都が消えた」
「は?」

消えた、と聞かされて表情を変えるマサシ。周りにいるジゼル達も同じだ。

「消えたって、どういう事ですか?」
「言ったとおりだ、首都が跡形も無く消滅してしまったのだ」
「え?」

突然の事なのでよく理解できないマサシ達。更に市松は分かりやすく説明し始める

「首都がヘルデストロイヤーの攻撃を受けて消滅し、そこに待機していた我がライトシンフォニアの1個旅団が全滅した・・・・」
「攻撃・・・・ええ!?」

首都襲撃を聞かされて、マサシ達は聖王国の首都が攻撃を受けてそこにいた自分たちの仲間が町と一緒に消えたと、ようやく理解したのだ。

「攻撃って、町を消滅させられるほどの威力がある攻撃なんて・・・・・・あっ!」

その時マサシが何かを思い出したかのように声を出した。

「・・・・・・核」
「「「「!!!」」」」

マサシの核という言葉を聞き、ジゼルとネリネ以外の神竜隊員達は驚いた。もちろん坂木や無線機を管理していた傭兵達も驚きを隠せないでいた。

「核を使ったんですね・・・・?」
「ああ、生き残った者からの連絡だと上空から何かが首都に向かって落下したとの事だ。そして落下した直後、首都は消滅、科学班の調査によるとプルトニウムの反応が出たとの事だ・・・・」
「なんてこった・・・・」

声から力が抜けていき、俯くマサシ。その時ジゼルがマサシ達に質問をしてきた。

「ね、ねぇ・・・・その核って何なの?」
「核って言うのは、俺達の世界の大量破壊兵器だ。1発で町1つは簡単に消し飛ぶ程の威力がある」
「ええ!?」
「そんな物があるの!?」

核の凄さを聞かされて驚くジゼルとネリネ。

「詳しい事が分かり次第また連絡する、それまで君達はサリム村で待機していてくれ。それでは」

市松からの無線が切れ、マサシは無線機をゆっくりと戻した。

「しかし、まさかヘルデストロイヤーの奴等、核まで持ち出してくるとは・・・・・・」

ヘルデストロイヤーにとんでもない切り札がある事を知り腕を組みながら言うユウタ。

「しかし妙だな・・・・」
「どうしたの?レイナ」

何か気になるのか考え込むレイナ。そんな彼女を見て尋ねるシオン。

「まず、核を使った犯人の目星だ。最初にヘルデストロイヤーが首都を襲撃したと聞かされて、どうして犯人がヘルデストロイヤーだと分かったのかと思ったんだが、核と聞かされてヘルデストロイヤーだと確信した。この世界で核を使うとしたらライトシンフォニアとヘルデストロイヤー以外には考えられない、だが我が社は核を持ち出していない。つまり、核を使ったのはヘルデストロイヤーで間違いない」

レイナの推理を聞きウンウンと頷くマサシ達。

「だが、奴等は一体何処で核を使ったんだ・・・・?」
「そりゃあ、上空から落下してきたって大佐が言ったんだから、空からだろう?」
「空から核を使うからにはその核を搭載した航空機を使うはずだ。もしそうならレーダーか何かに反応するはずだ。だが、迎撃できず、非難する事もできずに全滅してしまった。それはつまり、彼等はその航空機を発見できなかったという事だ」
「確かに、発見できたのならそれなりに対処できたはずだ、でも全滅した。空からの核攻撃は怪しいな」

レイナの説得力のある推理を聞き納得するマサシ。すると今度はコンタが自分の意見を言ってきた。

「どこかに核発射基地があるって事は?」
「それも考えにくいな。奴等がこっちの世界に来てから数日、そんな短い期間で核発射基地を作れるわけない・・・・」
「そっか・・・・」

残念そうな声で言うコンタ。

「じゃあ、奴等はどうやって核を使ったんだ?」

ヘルデストロイヤーの核の使用方法が分からずテントのかなで考え込むマサシ達。





空の上、いや、雲の上と言ったほうがいいだろう。その上に1つの物体が浮いていた。それはなんとB2爆撃機だ。

B2爆撃機(B-2スピリット)
アメリカ空軍のステルス戦略爆撃機。開発は米ノースロップ・グラマン社が担当し、21機が生産された。水平尾翼および垂直尾翼がない全翼機と言う特徴的な形をしており、愛称はスピリット(魂)。ただし、この機は同重量の金と同価値といわれるほど非常に高価で、少数しか生産されていないため、1機ごとにパーソナルネームを与えられている。

だが、このB2爆撃機は全幅500mはある巨大な航空機だ。コレはB2爆撃機と同じ形をしているが全く別の航空機。その大きさから1つの町と言っても過言ではない。そしてその巨大航空機のブリッジらしき所で一人の男が椅子に座っている、ゾークだ。

「社長、太陽エネルギー充電率85%まで上がりました」
「そのまま充電を続けろ」
「ハッ!」

ゾークがコンピュータの前に座ってエネルギーメーターを見ている傭兵に指示を出していると、後ろのドアが開きブリッジにゴードンが入ってきた。

「社長、たった今リーズから連絡が入った。例の生物兵器、神竜隊の倒されたようだ」
「そうか、リーズは?」
「迎えのヘリでこっちに向かっている」
「アイツらしくもないな、ロードグランに続いてガーリムトでも失敗するとは・・・・」
「確かに、アイツの力が弱まったのか、それとも・・・・」

ゴードンが考えているとゾークは話を変えて上部に取り付けられているモニターに目をやった。モニターには巨大航空機のデータが映し出されている。

「その話はいずれ聞こう。テスト発射も成功したようだ、目標の町は完全に消滅した。だが、まだ『コイツ』はテストが終了したばかりだ、あまり奴等にコイツの存在を知られるわけにはいかん。しばらくはこのままだ。次の核の発射準備をしておけ」
「わかった」

そう言ってゴードンはブリッジを後にした。

「フフフフ、この『重装侵略要塞機 ベンヌ』の力はまだこんな物ではないぞ、エミリア」

エミリアの名を口にして笑うゾーク。彼女とゾークはどのような関係なのか?そしてマサシ達はこの巨大な航空機にどうやって立ち向かうのか!?


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