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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第72回   第七十一話 第三の組織

レイナが語った悲しい過去、そしてリーズとの因縁。マサシ達はSAAを構えて睨み合う二人をただ見る事しかできなかった。

「・・・・・・お前は私に勝つ為に契約を交わしたのか?」
「・・・・・・」

SAAを構えたまま黙り込むレイナ。しばらく黙った後、彼女は口を開いた。

「確かに、昔はそうだった。お前を倒す為に、倒す為だけに契約を交わした」
「今は違うのか?」
「ああ、昔の私は復讐の為だけにこの力を使おうとしていた。だが、エミリア様やマサシ達に言われて私は気づいた。力を復讐に使えば、また新たな復讐の力が生まれる。それでは一生憎しみの連鎖は終わらないと。だから私はお前を倒す為ではなく、一人でも多く私のような犠牲者を出さない為にこの力を使う。自分の為ではなく、多くの人達のために・・・・」
「レイナ・・・・」

レイナを見ながら小さく微笑むマサシ。そしてリーズはそんなレイナを見て表情を変えずに言った。

「だが、私への憎しみは消えてはいないのだろう?」
「勿論だ・・・・」
「ではやはりお前は私を倒す為にその力を使おうとしているのではないか・・・・」
「お前への憎しみは確かに消えていない。でも私は復讐の為だけにこの力は使わない。私自身の為、そしてこの世界に住む人達のために、私はお前を倒す!そしてそのSAAを取り返す!」

レイナはリーズを見て大声で言った。ところがリーズはそんなレイナを見ても顔色1つ変えずに無線機を取り出した。

「残念だが、私はここでお前達と戦っているほど暇ではない。今日はこの町のライトシンフォニアを潰す為に来たのだからな・・・・」
「あ、そうだ!お前達、今まで何処に隠れていた!?」

マサシはレイナを指差して何処に潜んでいたのかを聞いた。しかしリーズは無線機を操作しながら言った。

「答える必要はない、お前達はここで死ぬのだからな・・・・」
「何!?どういう事だ?」
「実はこの町に我がヘルデストロイヤーの1個中隊が向かっている、この町自体を消滅させる為に連れて来ていたのだ」
「い、1個中隊!?」

ガーリムトに、ヘルデストロイヤーの1個中隊がやって来る。そう聞かされて驚くマサシ。

「町を消すつもりで連れて来た部隊をお前達を倒す為に使う事になるとはな。流石のお前達もスペクターと戦った後に1個中隊を相手にするのは無理だろう?ドルイドからお前達の事を聞かされて動かしておいたのだ、そろそろ着く頃だろう・・・・」
「ど、どうしようマサシ・・・・」

ジゼルがマサシに尋ねる、だがマサシは表情を変えずに言い返す。

「実はサリム村からライトシンフォニアの増援が向かっているんだ、彼等ももうすぐこの町に着く頃だぜ」
「何?」

マサシの口から増援の事を聞かされて少し驚くリーズ。

「確かに、彼等がいれば例え俺達の力が消耗されていても、勝機はあるぜ」
「あ、そっか!」
「サリム村からこの町まで掛かった時間は20分位だから、そろそろ着くよ!」

増援の事を思い出したユウタ、コンタ、シオンの三人は少し喜びを見せる。だが、リーズは彼等が想像もしてなかった事を口にした。

「我が中隊はこの町のすぐ近くに待機させてある、そこからだとこの町までは10分程しか掛からない・・・・」
「なっ!」
「何ですって・・・・」

自分達の仲間よりも10分早く到着する敵の部隊。それではとても間に合わない、マサシ達は驚きを隠せなかった。

「そろそろ到着する頃だ、これで終わりだな?神竜隊」
「クッ・・・・・・!」

マサシは右手の黒龍刀を強く握りながら俯く。

(今からでは撤退してもすぐに追いつかれてしまう・・・・。撤退せず戦うか?だが今の俺達の体力では1個中隊なんて相手にできない。いや可能か?坂木大尉の部隊と協力すれば?ダメだ、坂木大尉の部隊は俺達の戦力を計算に入れて編成された、俺の考えが正しければ約1個分隊ほど、対抗できるほどの戦力ではない。それじゃあレベル・5を発動するか?馬鹿な!そんな事をしてみろ、敵は倒せてもこの町自体が消えてしまう、どうすれば・・・・・・)

マサシは必死で切り抜ける方法を考えたが何も策が浮かばない。その時、マサシの通信機から声が聞こえてきた。

「こちら坂木、秋円大尉、応答してください」

マサシは通信機を手に取って返事をした。

「こちら秋円、坂木大尉、丁度いい時に!実はヘルデストロイヤーの1個中隊がこの町に向かってるんです!」
「え?どうしてあなたがその事を?」
「その事?坂木大尉、知ってるんですか?」
「ええ、たった今サリム村からの増援部隊からその事で連絡があったんです」
「?」

坂木の言っている事がよく分からず首を傾げるマサシ。ジゼル達もよく分からずに首を傾げた。

「実はさきほど増援部隊からヘルデストロイヤーと思われる部隊を接触したと連絡がありました」
「何ですって?それで増援部隊はどうなったのですか?」
「そ、それが・・・・」
「まさか・・・・やられたんですか?」
「いいえ・・・・・・その・・・・ヘルデストロイヤーの部隊は壊滅していたそうです」
「「「えっ!?」」」

予想外の事を聞いて声を揃えて驚くマサシ達。それを遠くで聞いていたリーズも驚いていた。

「何だと、そんな馬鹿な!」

リーズは信じられずに無線機が取り出してスイッチを入れた。

「こちらリーズ、第7中隊、応答せよ!」

リーズは中隊と連絡を取ろうとしているが返事はない。

「応答しろ!どうした!?」
「・・・・・・どうやら本当のようだな」

リーズを見てジゼル達に言うマサシ。ジゼル達はマサシの方を見た。

「マサシ、これからどうするの?」
「・・・・・・」

ジゼルのこの後の事を聞かれて考え込むマサシ。するとマサシは無線機を口に近づける。

「坂木大尉、増援部隊に連絡して部隊の半分をこちらに向かわせてください」
「半分ですか?」
「ハイ、残りの半分はその壊滅したヘルデストロイヤーの部隊を調べてください」
「分かりました、それで敵のほうは?」
「倒しました。でもまだ厄介な敵が一人いますから、そのまま増援部隊をこっちに」
「そうですか、ではそれまで私の部隊をそちらに送ります」
「ありがとうございます」
「それでは」

マサシはゆっくりと無線のスイッチを切って戻し、リーズの方を見た。

「どうやらお前の部隊は本当に壊滅したようだな、どうする?今こっちに俺達の仲間が向かってる、いくらお前でも俺達と増援部隊を一人で相手にするのは無理だろう?」
「クッ!」

マサシに言われて悔しがるリーズ。普段冷静な彼女からは見られない顔だ。

「形勢逆転だな、どうする?」

レイナがSAAを構えなおしてリーズに言うと、リーズはゆっくりと右手に持っていたSAAをホルダーに納めた。

「いいだろう、今回はこれで退く。だが覚えておけ、近いうちに我々(ヘルデストロイヤー)はお前達(ライトシンフォニア)に、いや、この世界の全ての人間に総攻撃を仕掛ける。何時でも攻撃に備えられるようにしておくのだな」

リーズはそう言って背を向けて歩き出した。だがレイナはそれを逃そうとしなかった。

「待て!ここで逃がすと思っているのか!?」
「思っていない、だから、こうするのだ・・・・」

リーズはそう言って片足をゆっくりと上げ、一気に降ろした。すると、マサシ達の周りの岩の柱が地面から次々と飛び出した。

「な、何!?」

突然地面から出ていた岩の柱に驚くネリネ。

「これはアイツの能力だ・・・・」
「能力?これがアイツの契約者としての力なの?」

ジゼルがレイナに聞くと、彼女は冷静な声のまま話し出した。

「そうだ、これが奴の契約相手『ノーム』の力だ・・・・」

レイナが銃を構えながらリーズの背を狙う、だが撃とうとしなかった。

「さらばだ、レイナ・・・・」

リーズはそう言い残してマサシ達の前から消えた。

「リーズ・・・・」

SAAを納めてリーズの立っていた所をジッと見るレイナ。彼女は改めてリーズを倒す事を心に誓ったのだった。





「なかなか面白い展開だったな」
「そうね」

暗く、周りには沢山の星々が輝いている空間。そう、虚無宇宙(ゼロスペース)だ。その空間の真ん中でディアボロスとルシフェルがマサシとジゼルの視界から周りを見ていた。すると、ディアボロスが指をパチンと鳴らした。すると彼等の目の前にある光景が浮かび上がった。そこには壊滅したヘルデストロイヤーの中隊が映っていた。兵士や戦車の彼方此方に刃物で斬られた跡がある。

「礼を言うぞ、お前が中隊を潰してくれなかったらあの二人は死んでたかもしれないからな」

ディアボロスは自分の後ろに立っている侍に礼を言うと、侍はゆっくりと頭を下げた。

「でも凄いわね、たった一人でヘルデストロイヤーの中隊を全滅させちゃうんだから」
「恐れ入ります」

ルシフェルに褒められて再び頭を下げる侍。

「それよりタツノスケ」
「ハッ」

タツノスケと呼ばれている侍はディアボロスの方を見て返事をする。

「お前は引き続き奴等を見張れ、もちろん奴等の存在を悟られないようにだ」
「お任せください」
「俺達が向こうの世界に行くにはまだまだ力不足だ」
「そうね、何かあたし達が力を付けるためのきっかけを作る必要があるわね」
「そうだな」

腕を組みながら映像を見ているディアボロス。その時、タツノスケがディアボロスに話しかけてきた。

「ディアボロス様」
「ん?」
「お二人が力を付けるきっかけなのですが・・・・」

傭兵達を襲った魔物を倒したマサシ達。これで事件は片付き一件落着、だがリーズが口にした総攻撃の宣告、そしてディアボロスとルシフェルの企み。この戦いは果たしてどの様な結末を迎えるのだろうか?


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