スペクターを倒した神竜隊。そしてドルイドを背後から撃つリーズ。彼女の手にはレイナの使っているSAAと同じ金色のSAAが握られていた。リーズの顔を見て感情的になったレイナ、一体どうしたのだろうか?
「レイナがあんなに感情的になるなんて、どうしたの?」
熱くなっているレイナを見て少し驚くジゼル。その時、リーズがSAAを構えながら言った。
「なんだレイナ、その女には話していないのか?」 「・・・・・・」
黙ってリーズを狙うレイナ。表情は変わっていない、リーズを睨みつけたままだ。
「どういう事なの?」
ジゼルがリーズに尋ねると、マサシがジゼルの肩に手をのせる。
「ジゼル、それ以上はよせ」 「え?」 「構わない・・・・」
レイナはマサシとジゼルに背を向けたまま言う。その声には冷静さが戻っていた。
「いつかはジゼルとネリネに話そうと思っていた。いい機会だ、今ここで話す」 「そうか・・・・」
話すと言うレイナの背中を見て、マサシはゆっくりとジゼルの肩から手を退かした。
「マサシ?」 「今からレイナが話すから、黙って聞いてろ」 「う、うん・・・・」
静かな声で、真剣な顔で話すマサシを見てジゼルはゆっくりとレイナの方を向く。そしてレイナは口を開いた。
「あの女は私から大切な物を奪ったんだ・・・・。あの銃もその1つだ」 「銃?」
ジゼルはリーズの持っているゴールドエングレームモデルのSAAを見た。
「あの銃は元々私の物なんだ。5年前にアイツに奪われたんだ・・・・」 「ほう、覚えていたのか?」 「忘れられるわけない・・・・」
レイナはリーズを再び睨み、暗い声で言った。
5年前、夜のマンションの1つの部屋から笑い声が聞こえる。男性と女性、そして女の子の声だ。
「誕生日おめでとう、レイナ」 「おめでとう」 「フーッ!」
テーブルに乗っている誕生日ケーキのロウソクの火を吹き消す女の子、昔のレイナだ。ロウソクを吹き消した後に拍手をする日本人男性と金髪の外人女性。レイナの両親だ。
『私は日本人の父とロシア人の母の間に生まれた。父は傭兵会社へ銃火器などを提供する会社で責任者を務めていた。母は弁護士で各地を行き来している。その日は私の誕生日で二人は仕事を早く終わらせて誕生日を祝ってくれた』
「レイナも今日で14歳か」 「ええ、もうお姉ちゃんね」 「えへへ、そうかな?」
「お姉ちゃん」という言葉を聞き笑いながら照れるレイナ。そんな時、座っていた父親が立ち上がり、自分の仕事鞄からプレゼントを取り出した。
「レイナ、ホラ」 「あ!もしかして、プレゼント?」 「ああ」 「開けてもいい?」 「いいぞ」
喜んでプレゼントを受け取るレイナはゆっくりと包み紙を取って箱を開くと、そこにはゴールドエングレーブモデルのSAAが入っていた。
「すっご〜い!コレ本物?」 「ああ、そうだよ」 「あなた、日本で子供に銃を持たせるのはまずくない?」
少し不安げに母が尋ねると、父は母を見て言った。
「ちゃんと登録してある、それに本物でも観賞用なら子供が持っていても大丈夫だ」 「それならいいけど・・・・」 「凄い凄い!お父さん、ありがとう!」 「ハハハ、しかしお前は女の子なのに西部劇が好きなんだな。今時珍しいな」 「いいでしょう?別に西部劇が好きでも?」
父にからかわれて少し頬を膨らますレイナ。そんな二人の会話を見て笑う母。
「ウフフ、確かに女の子が西部劇を好きになっちゃいけないって事はないわね」 「でしょう?」 「ハハハハ、スマンスマン」 「もう!でも、ありがとう!お父さん、お母さん!」
レイナがSAAを握りながら笑って両親に礼を言う。両親も笑いながらレイナを見た。
「その銃は父が私の誕生日にプレゼントしてくれた物・・・・」 「そうだったんだ・・・・」
レイナから聞かされたSAAの事を聞いて少し悲しそうな顔をするジゼル。
「だが、そのSAAが私の手にあったのは数日の間だけだった・・・・・」 「え?」
突然悲しげな声から低い声で話し出したレイナ。
「私の誕生日から数日後、私の人生は大きく変わった・・・・」
誕生日から数日後、セーラー服を着たレイナがマンションの階段を駆け上がって行く。
「来週は授業参観だって事を早く知らせなきゃ。お父さんとお母さん、出席できるかな」
階段を駆け上がり、自分の家の前に着いたレイナ呼鈴を鳴らした。
「お母さん、ただいま!」
母を呼ぶが、返事は無い。
「居ないのかな?」
レイナがドアのノブに手をかけてゆっくり回すと、ドアが開いた。
「鍵が開いてる、無用心ね」
レイナは小さく溜め息をついて家に入った。
「お母さん、鍵開いてた・・・・・・」
リビングに入ったレイナは自分の目を疑った。リビングは酷い散らかりようだった、椅子や植木鉢が倒れており、戸棚の中も荒らされていた。まるで空き巣にでも入られたかのように。
「な、何これ・・・・・?泥棒?お母さんは?・・・・・・そ、そうだ!警察に電話を!」
レイナは慌てて電話の受話器を取り警察に電話をかけようとした、だが繋がらない。よく見ると、電話のケーブルが切られている。
「繋がらない・・・・・・あっ!そうだ、お父さんの部屋に子機があったはず、それなら通じるかも!」
レイナは急いで父の部屋に向かった。そして部屋に着きドアを開けた瞬間、彼女は鼻に手をやった。
「うっ!な、何この臭い!?」
今まで嗅いだ事の無い臭い。レイナは恐る恐る部屋に入って行く。その時、彼女の足に何かの感触があった。ゆっくりと足を上げると、彼女の足の裏が赤くなっていた。
「ヒッ!コ、コレって・・・・」 「血だ・・・・」 「!!」
突然後ろから声が聞こえ、レイナの体は凍りついた。後ろを向こうとした瞬間、彼女の首筋に赤い何かが触れた。
「動くな・・・・」 「・・・・・・」
レイナは恐怖のあまり声も出せなかった。レイナの後ろには赤い刀身の剣を持った赤い髪の女、リーズが立っていた。
「子供・・・・・この家の人間か?」 「あ、あなた・・・・誰?」 「私はリーズ・・・・」 「リーズ・・・・・・あ、あなたは泥棒?」 「泥棒?そんな野蛮な者じゃない。傭兵だ、お前の父に用が有って来たのだ・・・・」 「お父さん?お父さんなら仕事・・・・・・ッ!?」
父の事を話しながら前を見ると、部屋の端の陰になっている所で誰かが倒れている、それはなんと血だらけの父と母だった。
「お、お父さん!お母さん!」
レイナは父と母の下へ駆け寄り必死で二人の体を揺すった。
「お父さん!お母さん!起きてよ!ねえ、起きてよぉ!!」
体を揺すっても二人は動かない、既に息は無かった。
「イヤーーーー!!」
二人が死んでいると理解し悲鳴を上げながら涙を流すレイナ、そんな彼女をリーズは冷たい表情で見ている。そしてレイナはゆっくりとリーズの方を見て泣きながら言った。
「どうして、どうして二人を殺したの!?」
レイナは既にリーズが両親を殺したのだと確信していた。自分を睨み、涙を流しながら叫ぶレイナの顔を見てリーズは静かに口を開けた。
「お前の父は今後、私達の会社に武器の提供する事を断ったのだ。我等を裏切る者には生きる資格はない・・・・」 「たったそれだけの理由で・・・・!」 「お前のような子供には分からんさ。そう言えば、さっき別の部屋でこんな物手に入れたな・・・・」
そう言ってリーズは懐からネリネのゴールドエングレーブのSAAを取り出した。
「あっ!そ、それは私の!」 「ん、お前の?」 「返して!それはお父さんが誕生日にくれた物なの!」 「ほぅ、そうか、そんなに大事な物なら自分で取り返してみろ・・・・」 「なっ!?」 「どうした?大事な物ではないのか?」
リーズは表情を変えずにレイナを挑発するように言うと、レイナはゆっくりと立ち上がった。
「・・・・・・」
立ち上がったレイナは部屋の片隅に置いてある父のゴルフクラブを取った。自分の両親を殺したこの女が許せない、父から貰った誕生日プレゼントをこの女から取り返したい、レイナは心の中でそう思っている。
「・・・・・・うわああああ!」
そしてレイナは叫びながらゴルフクラブを振り上げリーズに向かって走った。だが、リーズはがら空きになっているレイナの脇腹に剣を突き刺した。
「あ・・・・」
一瞬の出来事にレイナは何も出来ずにゴルフクラブを落とした。そして刺された脇腹を押さえてその場にうずくまった。
「い・・・・痛い・・・・痛い・・・・・・」 「安心しろ、急所は外しておいた・・・・」
急所を外した事を告げると、リーズはレイナに背を向けた。
「今回はお前のその勇気に免じて見逃してやる、この銃は戦利品として貰っておく・・・・」 「か・・・・返して・・・・・・」
レイナは血塗れの手を伸ばしてSAAを取り返そうとしたが、今の彼女にはそんな力はない。
「もし、お前が私と同じ傭兵になり、再会する事があればまた相手をしてやる。さらばだ・・・・・」
リーズはそう言い残し部屋を後にした。傷を負ったレイナを残して。
「・・・・・・」 「・・・・・・」
お互いの顔も見て黙っているレイナとリーズ。そんな二人を黙ってみているマサシ達。そしてレイナが再び口を開き話し始めた。
「あの後、お前が急所を外してくれたおかげで私はなんとか一命を取り止めた。だが、両親は死に、肉体的にも精神的にもボロボロだった私はしばらく病院で過ごした・・・・」 「そしてその後にお前はライトシンフォニアに保護されて傭兵となった」 「ああ、両親を亡くし行き場の無い私をエミリア様が拾ってくれたんだ。私の話を聞いたエミリア様は私にお前の事やヘルデストロイヤーの事など詳しく教えてくれた」 「お前と再会したのは、確か4年前だったな?」 「ライトシンフォニアで1年間の傭兵の訓練を終えて、初めての任務でお前と再会した。だが当時の私は契約者ではなく、普通の傭兵だったため、既に契約をしていたお前に勝つ事ができなかった・・・・」 「・・・・・・お前は私に勝つ為に契約を交わしたのか?」 「・・・・・・」
リーズから意味ありげな質問をされて黙り込むレイナ。遂に明かされたレイナとリーズの因。この後、一体どうなってしまうのか!?
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