傭兵達を襲ったヘルデストロイヤーの生物兵器「スペクター」。更にそのスペクターがロードグランの住人達を使って作られたと話すヘルデストロイヤーの補給部隊長ドルイド。神竜隊のメンバーは彼等(ヘルデストロイヤー)の残酷なやり方に新たな怒りを覚えた。
「なんて奴等だ、何の罪もない人達をこんな醜い化け物に変えちまうなんて!」 「力を持つ奴が持たない奴をどうしようと勝手だろ?偉そうに言うんじゃねえ負け犬どもが!」
マサシはヘルデストロイヤーへの怒りを口にする、そんな彼を見てドルイドはスペクターに殺され続けたライトシンフォニアの一員であるマサシ達を負け犬と言い放つのだった。
「お前達だけは絶対に許さない!必ずお前達を倒す!」
マサシは黒龍刀の切っ先をドルイドに向けながらヘルデストロイヤーを倒すと宣言する。そんな時、コンタとユウタがマサシに言った。
「マサシ、今はこいつを倒す事が先だよ」 「そうだぞ、熱くなると正確な判断ができなくなる。冷静になれ」 「わりぃ、つい・・・・」
謝るマサシの隣でジゼルが話に加わってきた。
「でも、あたしもマサシの気持ちが分かる。あたしも聞いてて腹が立ってきたもん」 「私もよ」
ジゼルに続きシオンも自分の苛立ちを訴えた。
「私も同感だ、だが、コンタの言うとおり、まずはこいつを倒す事が先だ」
レイナがスペクターに銃口を向けながら言うと、マサシ達は頷いて再生しきったスペクターを見て構えた。
「おもしれぇ、ここから見物させてもらうぜ!やっちまえスペクター!」
ドルイドはスペクターに命令しながら屋根に座り込み、マサシ達を見て笑うのだった。スペクターはゆっくりと立ち上がり、体から無数の触手を生やした。そしてスペクターは一斉に触手で自分を囲んでいる神竜隊を攻撃した。
「皆避けろ!」
マサシの合図でジゼル達は一斉に攻撃を回避した。触手は地面に刺さり砂埃を上げる。
ガーリムトから数百m離れた高台の崖っぷち。そこからはガーリムトが見える、そしてそこから町を見ている者がいた。鬼の仮面を付け、腰に日本刀を納めている男。そう、虚無宇宙(ゼロスペース)でディアボロスと話していたあの侍だ。
「あの町か、随分と派手にやっているようだな。あそこにいる神竜隊の中にディアボロス様とルシフェル様に瓜二つの者がいるのか・・・・」
侍がブツブツ独り言を言っていると、後ろの方から無数の音が聞こえてきた。
「ん?」
侍が振り向くと、高台の下にある大きな道を無数の戦車と軽装甲機動車、そして無数の傭兵が歩いている。戦車と軽装甲機動車は歩いている傭兵達に合わせてゆっくり走っている。
「アレは・・・・・・ヘルデストロイヤー。成る程、ガーリムトへ向かっているのか。見たところ1個中隊と言ったところか。流石の奴等もあの怪物と戦った後に1個中隊はキツイな・・・・。なら、拙者のやるべき事は1つ」
そう言って侍はゆっくりと高台から降りていく。
その頃、町ではマサシ達とスペクターの戦いが更に激しくなっていた。スペクターの触手攻撃をかわしながら攻撃している。
「クソッ!」 「これじゃあ奴に近寄る事すらできないよ!」
なかなかスペクターに攻撃できずに悔しがるマサシとジゼル。銃を使っているコンタとレイナの攻撃は届いているがあまり効いていない様だ。
「銃でチマチマ攻撃してちゃキリがないよ!」 「確かに、このままではいずれ弾が切れる・・・・」
攻撃が効いていない事で、二人の顔にだんだん不安が出てきている。すると、コンタが大声でマサシ達に語りかけた。
「皆、僕が契約魔法で奴の動きを止めるから、止めた後に一気に攻撃して!」
コンタの声を聞いてマサシ達がスペクターから離れた。そしてコンタは契約魔法の呪文を唱え始めた。
「氷河の使者よ、大地よりその牙をむけ!フリーズファング!!」
コンタがフリーズファングを発動させ、スペクターの足元から何本もの氷柱がスペクターを貫く。そして少しずつスペクターの体が凍り始めた。
「やった!」 「よし皆、一気に攻撃を・・・・」
マサシが皆に攻撃をするように指示を出そうとしたその時、凍り始めていたスペクターの体が徐々に戻り始めたではないか。マサシ達はそれを見て驚いていた。
「か、体が戻っていく!?」 「どうなってるんだ!?」
驚きながら言うマサシとユウタ。その時、屋根の上でドルイドが座りながら笑って言った。
「ヒャハハハハ!残念だったな!そいつには契約魔法が効かないようにできてるんだ、これでてめぇ等の戦力は大幅に削られたってわけだ!ハハハハハ!!」
マサシ達をあざ笑いしながら見下ろすドルイド。マサシ達は契約魔法が効かない事を知って構え直す。
「契約魔法が効かないとなると、レベル・5で戦うしか・・・・」 「マサシ・・・・!」 「!」
レベル・5を口にしたマサシの名を力強く、そして少し退くような口調で言うジゼル。どうやら黒竜の姿のマサシをまだ恐れているようだ。
「・・・・約束したでしょ?」 「・・・・・・ゴメン」 「二人とも何を話しているの?」
何かを話していいる二人を見てネリネが話しかけてきた。
「いや、何でもない・・・・」 「うん、ゴメンね・・・・」 「・・・・何を話してたかは知らないけど、話はコイツを倒した後にして」
ネリネが注意をして再びスペクターを見て構えた。そんな時、マサシの後ろにいた生き残りに傭兵がマサシに話しかけてきた。
「あ、あのぅ・・・・」 「ん、何です?」 「じ、実は、私達が奴と戦っている時に分かった事なんですが・・・・」 「「「?」」」
何かを知っている傭兵を目だけで見るマサシ、ジゼル、ネリネの三人。
「私の仲間の一人が奴に取り込まれる時に持っていた手榴弾のピンを抜いたんです。それで、取り込まれた後に奴の中で爆発音が聞こえたんです。その直後に奴がとても苦しそうな声で鳴いたんです・・・・」 「!!」
傭兵の話を聞いて一瞬驚きの顔をしたマサシ。
「もしかしたら奴は『外』からの攻撃には強くて『中』からの攻撃には弱いのかもしれない!」 「え?」 「奴の中に攻撃をすればもしかして・・・・・・」 「攻撃するって、どうやって・・・・?」 「取り込まれる瞬間に奴の内部に攻撃するんだよ」 「取り込まれる瞬間って・・・・・・マサシもしかして!」
ジゼルがマサシの考えを察してマサシの顔を見た。
「ああ、俺がわざと奴に捕まって、取り込まれる時に奴の内部に攻撃する」 「そ、そんな!危険だよ!」 「なら他に何か作戦があるのか?」 「そ、それは・・・・・・」
言葉に詰まるジゼル。そんな彼女を笑いながら見てマサシが言った。
「心配するな、俺は死なない。この世界を救う為に、そして・・・・・・お前の為に」 「え・・・・?」
マサシの最後の言葉を聞いて聞き返すジゼル。そしてマサシはスペクターの方へ走り出した。
「マサシ!?」 「何をする気なの!?」
マサシの行動を見て驚くユウタとシオン。
「ほらほらスペクターちゃん!俺を取り込んでみろ!」 「な!?」 「何を言ってるの!?」
マサシのとんでもない言葉を聞いて驚くユウタとシオン。勿論コンタ、レイナも驚いていた。だがジゼルとネリネは黙ってマサシを見守っていた。
「ユウタ、シオン!マサシを信じて!」 「え?」
ジゼルの言葉を聞いてシオンは驚いて声を漏らした。ユウタ達も声こそ出さなかったが驚いてジゼルの方を見た。
「お願い・・・・」
ほんの少し声が小さくなったジゼル。ユウタ達は少し納得が行かずマサシを見た。
「ハハハハ!お前、とうとうイカれたかぁ?」
マサシの行動が分からずにマサシを侮辱するドルイド。
「そんなに取り込まれたいなら、望みどおりにしてやるよ!やっちまえスペクター!」
ドルイドの命令を聞いてスペクターは触手でマサシを捕まえ、ゆっくりと持ち上げた。
「マサシ!」
コンタが触手を狙うと、ジゼルが叫んだ。
「コンタ、ダメ!」 「で、でも、このままじゃ!」 「信じて!」
さっきとは違い今度は力の入った声で言うジゼル。コンタはそんな彼女の顔を見て少し驚き、ゆっくりと銃を納めた。
「くたばれぇ!!」
ドルイドの声が町に響き、スペクターの体に大きな穴ができて。そこが見えず中からは悪臭が漂ってきた。
「あそこが内部に続いている穴か!この時を待っていたぜ!」 「何ィ!?」 「くらえ!ドラゴンズノヴァ!!」
マサシが技の名前を叫ぶと、持っていた黒龍刀の刀身が赤く光りだし、切っ先を穴に向けると切っ先から赤い光線が放たれ、穴の中に入っていく。すると、さっきまでそこが見えなかった穴が赤く光だし、その光はスペクターの体から溢れ出て、次の瞬間、スペクターの体が大爆発を起こした。
「うわあああああ!!」 「キャアアアアア!!」
爆発の風圧と音に驚いて声を出すジゼル達。そしてスペクターの立っていた場所から何かが飛んできた。それはスペクターの触手に捕まっていたマサシだった。
「グガッ!ガハッ!ゴホッ!」
爆風で飛ばされ、地面を転がりながらジゼルの下に戻って来たマサシ。
「マサシ!大丈夫?」 「テテテ・・・・な、何とかな。ハハハハ・・・・」 「『ハハハハ』じゃないわよ!まったくもう!いつもいつも無茶ばっかり!心配する身にもなってよね!!」 「わ、悪い・・・・」
いつにも増して恐い顔で言うジゼルの顔を見て驚くマサシ。だがそんな彼女の目は少しだけ潤んでいた。
「・・・・本当に悪かった」 「・・・・もう!」
ジゼルの頬にそっと手を当て、彼女に謝るマサシ。その時、横から声が聞こえてきた。
「マ〜サ〜シ〜!!」 「ん?・・・・・・ゲッ!ユウタ!」 「こっのぉ、アホ〜!!」
叫んだ瞬間マサシを蹴飛ばすユウタ。
「ダーーッ!!」
蹴飛ばされて3mほど飛んだマサシ。そんな彼を見て少し驚くジゼルとネリネ。ジゼルの隣ではユウタが荒く息を吐いている。そんなユウタの後ろで彼を宥めるコンタ。そしてコンタの後ろで呆れるように見るシオンとレイナ。
「お前という奴はいつもいつも無茶な事ばかり考えやがって!少しはこっちの身にもなってみろ!」 「イッテ〜!蹴飛ばす事ないだろう・・・・」
ジゼルと同じ事を言って怒るユウタ。そんな時、屋根の上から怒り狂う男の声が聞こえてきた。
「てめぇら!よくも俺のスペクターを倒しやがったなぁ!」 「「「!」」」
マサシ達は怒り狂うドルイドを見上げた。彼の手には剣縫うが握られており、マサシ達を狙っている。
「てめぇら屑なんかに俺の名を汚されてたまるか!ここで俺が殺してやる!!」
ガチャ。
「ん?」
何処からか金属音が聞こて気づくコンタ。そんなコンタに気づいたレイナ。
「どうした、コンタ?」 「いや、どこからか金属音が・・・・」 「金属音?」 「うん、拳銃の撃鉄を上げる音。音からして・・・・・・シングル・アクションのリボルバーだね」 「!?」
コンタの言葉を聞いて驚くレイナ。そんな時、ドルイドが再びマサシ達を見て叫んだ。
「何ゴチャゴチャ言ってんだよ!俺のスペクターを倒した事、あの世で後悔・・・・」
その時、ドルイドの背後から銃声が聞こえてきた。そしてドルイドの背中に1つの銃創が生まれた。
「なっ!」
突然背後から攻撃を受けて驚くドルイド。彼は撃たれたときの反動で屋根からすぐ下にあった木箱の上に落ちた。
「だ、だ・・・・れ・・・・だ・・・・?」
何者から攻撃を受けたのかも知らず、ドルイドはそのまま息を引き取った。
「愚か者め、私は町を襲撃しろと言ったが、神竜隊を殺せとは言っていない・・・・」
突然聞こえてきた女の声。屋根の上には、なんと自然の四塔(フォースド・ガイア)の一人リーズが立っていた。よく見ると彼女の右手にはレイナの使っている拳銃と同じ、SAAが握られている。しかもそのSAAはゴールドモデルで彫物(エングレーブ)が施されている。
「貴様、リーズ!」 「久しぶりだな、レイナ・・・・」
リーズの顔を見た瞬間、いつも冷静なレイナが珍しく感情的になり腰の納めてあるブラックパウダーのSAAを抜いてリーズを狙った。リーズもゆっくりとゴールドモデルのSAAをレイナに向ける。遂に対峙したレイナとリーズ、一体彼女達はどういう関係なのか?
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