傭兵達を襲い、盗賊団のアジト襲撃していた『鉄の怪物』とはマサシの世界の兵器『M1戦車』だった。しかもその戦車に乗っていたのがマサシの入っている会社、ライトシンフォニアに敵対する『傭兵派遣会社 ヘルデストロイヤー』の傭兵だったのだ。マサシの正体を知った傭兵達はマサシ達を取り囲み、絶体絶命の状態へ追い込むのであった。
「こいつを殺せば社長も我々を認めてくださるはずだ!絶対に逃がすなよ!」 「この二人の女はどうしましょう?」 「我々の事を知った以上、生かしておくわけには行かない。一緒に殺せ!」 「「「ハッ」」」
隊長の命令で三人のアサルトスーツの部下達は腰についているマシェット(鉈)を抜き構えた。そんな中、マサシとジゼルは小声で話し合っていた。
(いいか、まず俺がアイツ等の武器を弾く、そしたらお前は丸腰になったあいつ等を攻撃しろ。いいな?) (わかった!) (ちょっと、何の話してるの?) (シンディ、実はね・・・・) 「なにをコソコソ話しているか知らんが、今更作戦を考えてもしても無駄だ。我等ヘルデストロイヤーは女子供でも容赦はしない!殺れ!」
隊長の合図で三人の部下は同時に斬りかかって来た。マサシは背中に隠していたシグザウアーP220を取った。
シグザウアーP220 シグ社がスイス軍の依頼により1975年に開発した、軍・法執行機関向けの自動拳銃。陸上自衛隊でも正式採用されており、自衛隊では「9mmけん銃」とも言われている。手動のセイフティを持たず、デコックのみを行うデコッキングレバーを備え、排莢口にチャンバー部をかみ合わせてスライドとバレルをロックする独自のロックブリーチ・ショートリコイルを採用している。これらは、当時としては画期的なもので、後のさまざまな自動拳銃に影響を与えている。
マサシが素早く銃を構え引き金を引き、傭兵達の持っているマシェットを弾いた。そしてその瞬間、ジゼルが傭兵達に突っ込んだ。
「は、速い!」 「タアッ!」
武器を弾かれ、一瞬ひるんだ傭兵が体勢を立て直そうとした瞬間、ジゼルのパンチが腹部に命中した。傭兵は腹部を押さえそのまま倒れこんだ。
「グフッ!」 「こ、このアマ!!」
もう一人の傭兵がジゼルを取り押さえようとした瞬間、彼女の回し蹴りが傭兵のアゴに命中し、二人目の傭兵はなにもできずに倒れた。
「ク、クソッ!」
三人目が落ちているマシェットを拾おうとした時、マシェットの上に誰かの足がのかった。傭兵が顔を上げると、そこにはシンディの見下ろす姿があった。
「残念でした♪」
そういった瞬間、シンディは傭兵の顔にキックをかました。ガスマスクのレンズが割れるのと同時に倒れた、傭兵は全滅した。
「うう・・・・」
残された隊長は三人の強さに脅え一歩下がった。
「うまくいったな」 「うん、マサシの作戦、大成功だね」 「正直、こんな単純な作戦だ大丈夫なかと思ったけど、うまくいってよかったわ」 「少しは俺を信用してくれよ。でも、俺も正直、不安だったんだ。いきなりふって、お前達が対応できるのかなって」 「あら、アンタだって私とジゼルの事、信用してないじゃない」 「ゴメンゴメン」 「フフフ、それより、コイツ等どうする・・・・・あれ?」 「どうした?ジゼル」 「アイツ等、いないよ」 「「え?」」
マサシとシンディが前を見ると、そこには隊長も倒した三人の部下の姿もなかった。すると、突然機能を停止していたはずのM1戦車が再び動き始めた。どうやら三人が話したいる間に四人とも戦車の中に逃げ込んで再び戦車を動かしたようだ。
「よくもやりやがったな!」 「踏み潰してやる!」
M1戦車はマサシ達に向かって突っ込んできた。
「やべッ!戦車の中に逃げ込みやがった!」 「に、逃げよう!」 「そうだな!二人とも走れ!」
三人は戦車に背を向けて走り出した。ハッチから傭兵が姿を現し、逃げる三人に12.7mm重機関銃を向けた。
「クソッ!」
傭兵が重機関銃を撃とうとしている事に気付いたマサシは走りながらシグザウアーを戦車に目掛けて引き金を引いた。しかし戦車の装甲に拳銃で傷を負わせることなんてできるはずがない、そんな事はマサシも知っていた、マサシは戦車本体ではなく、ハッチから顔を出している傭兵を狙ったのだ。逃げている最中に背後から重機関銃なんかで撃たれたら回避できないからだ。弾はハッチのすぐ近くに命中し火花を上げた。
「ウッ」
傭兵は一瞬驚き顔を引っ込めた。
「今だ!二人ともあの岩場に飛び込め!」
マサシの合図でジゼルとシンディが岩場に跳びこんだマサシもそれに続いた。全力で走っていた戦車は曲がる事ができずにそのまま直進して岩場の横を通り越した。
「ふう、危なかった。もう少しで追いつかれて潰されるところだった」 「それで、これかどうするのマサシ?」 「M1戦車に乗り込まれちゃ、簡単には倒せないな、手榴弾も全部使っちまったし・・・・」 「ユニフォリアを倒した時に使った武器は?」 「RPGか?あれもユニフォリアを倒す時に全部使っちまったから、もう残ってない」 「そっか・・・・」 「他に何かアイツと倒せる方法は無いの?早くしないと戻ってくるわよ」 「わかってる。とは言ってもなぁ、どうする・・・・」
マサシが腕を組み考えると、マサシは何かを思い出したような顔をして言った。
「そうだ、『契約魔法』があった!」 「契約魔法?」 「アンタも魔法が使えるの?」
マサシが魔法を使えると知ったシンディはマサシに問いかけた。魔法剣士として興味が湧いてきたのだろう。
「ん?ああ、契約者は一定までレベルが上がると魔法が使えるようになるんだよ」 「契約者?」 「いや、なんでもない、ハハハ・・・・」 「?」
契約者のことを知らないシンディをマサシは笑いながら誤魔化した。
「それで、どうするの?」 「俺が行ってくる、アイツ等の目当ては俺一人だ。俺を見つければ奴等は俺を言いかけてくるはずだ。お前達はここに隠れていてくれ」 「わかったわ」 「じゃあ・・・」 「マサシ」 「ん?」
ジゼルに呼び止められ、マサシは足を止め、ジゼルの方を向いた。
「気を付けて・・・」 「・・・・ああ、わかってる」
そう言ってマサシは岩場を飛び出した。
M1戦車の傭兵達は必死でマサシを探していた。
「隊長、奴の姿が見当たりません」 「諦めるな!なんとしても探し出すのだ」 「ハッ!」 「隊長、7時の方角より生命反応!おそらく秋円でしょう」 「なに?すぐに反転しろ!奴に主砲を打ち込んでやれ!」
M1戦車はマサシに気付き反転し、主砲の照準をマサシに合わせた。
「チッ、主砲で狙ってきやがったか。あんなの喰らったら、いくら契約者の俺でもアウトだ」
マサシは魔法の演唱の為に戦車から距離をとっていた。しかし戦車の主砲は距離があればあるほど狙いやすくなる。演唱をする為に距離をとったのが仇になってしまった。
「主砲発射!!」
隊長の合図で主砲が発射された。マサシは発射された直後、斜め後に大きく跳んだことで直撃は逃れた。
「クソッ!」
主砲に狙われる事を避けるため近くに小さな岩に隠れる事にしたマサシは岩の陰で呪文を唱え始めた。
「雷雲よ、我が意志となり敵を貫く刃となれ・・・」
マサシが演唱している時、M1戦車は重機関銃を撃ちながらジリジリと距離を縮めてきた。マサシの隠れている岩が重機関銃によって少しずつ削られていく。そしてマサシは岩場から跳び、契約魔法を放った。
「来たれ、雷鳴の剣!サンダーソード!!」
マサシが叫ぶと突然M1戦車の真上に紫色の剣が姿を現した。その剣はよく見ると電流でできている、そして剣はその巨大な刃でM1戦車を貫いた。
「「「「グワアーーーーーー!!」」」」
戦車の中から傭兵達の断末魔が聞こえ、その直後M1戦車は大爆発を起こした。ジゼルとシンディは当然その光景を目にしていた。
「ア、アレが・・・・契約魔法?」 「・・・・・」
シンディが驚いていると、その横でジゼルがなにやら考えていた。
(凄い力・・・・確かにこんな強大な力を手に入れるのだから代償も大きくて当然だよね・・・・)
ジゼルはマサシの得た力と代償の大きさを改めて知るのであった。M1戦車を破壊した後、ジゼルは炎上するM1戦車の前に立っているマサシの下へ走った。
「マサシ!大丈夫?」 「・・・・・ああ」
マサシは深刻な顔をして炎を見て頷いた。
「どうしたの?」 「いや・・・・」 「襲ってきたからといっても、自分と同じ世界の人間を殺したのは・・・・やっぱり辛い?」 「・・・・・いや、そうじゃない、どうして俺の世界の人間がこっちの世界にいるのか考えていたんだ。それに結局、元の世界に戻る方法を聴き出せなかったし」 「そう・・・・」 「それに、辛いっていうのは慣れたよ・・・・傭兵になってすぐにな」 「・・・・・・・」 「ジゼル」 「ん?」
ジゼルはマサシの真剣な顔を見て一瞬驚きマサシの顔を見た。
「ジゼル、これだけは覚えておけ、人を殺してショックを受けないのは異常者だけだ。俺も既にその異常者の仲間入りをしている。お前は絶対に俺のような人間になるなよ、いいな」 「う、うん・・・わかった」
ジゼルの返事を聞き、小さく笑ったマサシ。するとジゼルの後からシンディの声が聞こえた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよジゼル〜!」 「あ、やっとシンディが来たわ」 「ああ。さてと・・・・これから忙しくなるぞ」 「どういうこと?」 「ヘルデストロイヤーの戦車がここにあるって事は、俺の世界とお前達の世界に間でなにかが起こり始めてるって事だ。あるいは、俺の世界で何かヤバイ事が起こっているのか・・・・。とにかく、調べてみる必要がある」 「・・・・・あたしも手伝っていい?」 「え?」
ジゼルはゆっくりと振り返りマサシの方を見た。
「あたし、貴方の世界の事を少しずつでいいから知りたい。だから・・・・」 「・・・・・わかった。手伝ってくれるか?ジゼル」 「うん・・・・」
話が終わり、二人は並びながらシンディの下へ歩いて行った。さっきの二人の声はとても優しく、温かい言葉であった。二人は知らないうちにお互いの気持ちを理解しあっているのだろうか・・・・・。
一方、地球の東京都、ヘルデストロイヤービルでは。
「なに?先遣隊との連絡が途絶えた?」 「はい、どうやら、何者かにやられたようです」
ビルのオフィスで西洋甲冑の男とロボットが話していた。甲冑の男は椅子に座りながら腕を組み低い声で言った。
「ライトシンフォニアはどう動いている?」 「奴等の方でもなにやら不審な動きがあるという偵察隊から報告がありました。こちらの計画(プロジェクト)に感付いたのでは・・・・?」 「わからん、だがあの女の作り上げた組織だ。油断はするな」 「ハッ」 「そろそろお前の出番のようだな、Urs(ウルス)」
男はロボットの事をUrsと呼んでいる。それがロボットの名前のようだ。
「私ですか?」 「そうだ、先遣隊がやられたという事は『あっちの世界』にも我等に匹敵するほどの戦力があるということだ。お前が動く必要がある」 「はい・・・」 「二個小隊を連れてすぐに向かえ、行けUrs」 「ハッ!」
Ursはオフィスを後にした。彼らの言う「あっちの世界」は間違いなくラビリアンを指している。果たしてヘルデストロイヤーの狙いはなんなのか?Ursがマサシと出合った時どの様な事になるのか・・・・・。
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