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作品名:ラビリアンファンタジー 作者:ディオス

第67回   第六十六話 静寂の町

ようやくパラメドラに到着した神竜隊。だが、事件の遭ったサリム村に着いた直後に商人の町「ガーリムト」に配置されている中隊から救難信号が送られ、マサシ達は急いで町へ向かった。

「間もなくガーリムトに到着します」
「急いでくれ!」
「ハイ!」

装甲車を走らせる傭兵に急ぐように言うマサシ。サリム村を出て約20分、坂木達の乗る装甲車を先頭に、マサシ達の装甲車、その後ろに軽装甲機動車が2台ついて行く。

「一体何が遭ったのかしら?」

ジゼルがガーリムトで何が起きたのかを考えていると、ユウタが口を開く。

「もしかしたら、ヘルデストロイヤーに襲われているのかもしれないな」
「それは行ってみないと分からないな」

ユウタの予想を聞いて冷静な声でいうレイナ。すると今度はシオンが話しに加わってきた。

「それじゃあ、サリム村を襲った奴が現れたのかも」
「それも考えられるな」

シオンの予想を聞いたユウタが顎に手をつけて考える。

「どちらにせよ、レイナの言うとおり行ってみないと分からない」

マサシがレイナに同意してジゼル達の方を見ると、皆もマサシの方を向き頷いた。

「坂木大尉の乗った装甲車が速度を上げました。こちらも速度を上げますので掴まっていてください」

運転手に言われて椅子に座って手すりに掴まるマサシ達、そのすぐ後に装甲車は速度を上げた。2台の装甲車と2台の軽装甲機動車はガーリムトへ急ぎ向かった。





宇宙。何も無い、ただ多くの星々などは光っているだけ。しかし、その広く何も無い宇宙の真ん中にポツンと小さなテーブルが1つあり、そのテーブルを挟むように男女が椅子に座っていた。それはマサシとジゼルにそっくりな男女、そう、ディアボロスとルシフェルだ。そしてここは虚無宇宙(ゼロスペース)。

「今のところ順調に進んでいるな」
「彼等の目に映る物はあたし達の目にも映るから、彼等がどこまで進んでいるか、何をしているかがよく分かるわ」

そう、ディアボロスとルシフェルはマサシとジゼルの見ているものが見えるのだ。だが、記憶を封印されているマサシとジゼルはその事を知らない、いや仮に記憶を封印されていなくても、その事は知らない。二人はマサシとジゼルの見ている物を見ながらシャンパンを飲んでいる。

「この後に何があるのかしら?」
「さあな、それは俺達にも分からん。だが分かる事もある」
「ええ、彼等が死んだらあたし達も死ぬ、でしょ?」
「そうだ、そうなってしまったら俺達の願いも叶わなくなる」
「彼等を死なせる訳にはいかないわね。どうするの?ただ見てるだけって訳じゃないでしょ?」
「勿論だ、ちゃんと手は打ってある」

ディアボロスがシャンパンのグラスをテーブルに置き、指をパチンと鳴らした。すると、何処からか音が聞こえてきた。その音はディアボロスの後ろから聞こえる、ルシフェルがディアボロスの後ろを向くと、遠くから一人の男がゆっくりと歩いてきた。その男は黒い長髪で、その髪を後ろで束ねている。更に鬼の仮面をつけており、腰には1本の日本刀が納められている。一言で言えば侍だ。そしてその侍はディアボロスの後ろで立ち止まった。

「お呼びですか?ディアボロス様」

侍はディアボロスの方を向いてゆっくりと頭を下げて。

「あら、もう完成したのね?」
「ああ、虚無宇宙でもこれ位の力は何とか使えるようになった」
「それなら、あたしも後で試してみようかしら」

二人はお互いの顔を見て少し不気味な笑いを見せた。

「御用は何でしょう?」
「おっと、スマンスマン。お前に頼みがある。『あっち』に行って俺達と同じ姿をした男女を見張ってほしい。俺とルシフェルはまだあっちは行けない、だがお前なら行けるはずだ」
「見張るとは?」
「それはな・・・・・・」

ディアボロスは侍に何かを話し始めた。広い虚無宇宙で二人の男は一体何を話しているのか、誰も分からない。





一方、マサシ達はガーリムトの入口前で装甲車を止めた。しかし入口には中隊の警備兵がいない。

「どうなってるんだ、警備の奴等がいないぞ・・・・」

警備兵がいないことに少し顔が歪めながら坂木は装甲車を降りて入口に近づいて行く。すると、マサシも装甲車を降りて坂木の下へ歩いて行った。

「警備の人がいないんですか?」
「ええ。以前ここに来た時はしっかり警備をしていたのですが・・・・」
「救難信号が送られてきたんです、何か遭ったのは間違いないでしょうね」
「ハイ、急ぎましょう!」

坂木がマサシの方を向いて言うとマサシは黙って頷き装甲車へ戻っていく。坂木も戻って装甲車を走らせ、マサシ達もそれに続いた。

「どうかしたの?」

装甲車に戻ったマサシにジゼルが尋ねた。

「いつもいるはずの警備の人がいないみたいなんだ・・・・」
「救難信号が送られてきたから町の方に行ったんだろう?」

ユウタがマサシに警備のいない理由を聞くとマサシはユウタの方を向いて口を開いた。

「俺もそう思ってる、でも状況を教える為に一人くらい警備がいてもおかしくないだろう?」
「確かに・・・・」
「やっぱり町で何かあったんだ。急ごう」

マサシがジゼル達の方を向いて言うと揃って頷いた。

「急いでくれ」
「分かりました!」

マサシが運転手に急ぐように言うと運転手は返事をしてアクセルを踏み、坂木の乗る装甲車の後を追った。しばらく走っていると、坂木の装甲車が大きな道の真ん中でゆっくり止まった。マサシ達の乗る装甲車もそれに続くようにゆっくりと止まり、その後ろを走る軽装甲機動車も止まった。

「おかしい・・・・・・どうなってるんだ?」

坂木が助手席の窓から外を見ると、町には誰もいなかった。中隊の傭兵、町の住人も一人もいない。シーンと静まり返っていた。坂木が窓から顔と手を出して後ろにいるマサシを呼んだ。それを見たマサシは装甲車を降りて坂木の下へ歩いて行った。

「静かですね・・・・」

マサシが坂木の下に着くと町の様子を話した。

「これは予想以上に深刻な状態のようです。私達は中隊の拠点に行ってみます、あなた達は町を見回ってきてくれませんか?」
「分かりました。何かあったら無線で知らせます」
「ハイ、こちらも拠点の状況が分かり次第、無線で報告します」
「ええ、お気をつけて」

坂木の装甲車はマサシに見回りを任せると装甲車を走らせて拠点へ向かった。坂木達を見送るとマサシは装甲車に戻った。マサシが戻るのを見てジゼルも装甲車から降りてマサシの下へ走った。

「坂木さん達、どうしたの?」
「中隊の拠点を見に行くってさ、俺達は町を見回るぞ」
「大丈夫なの、坂木さん達は?」
「きっと大丈夫さ。さあ、装甲車に戻ろう」
「うん!」

マサシとジゼルは装甲車に戻った。マサシは見回りの事をユウタ達に話してどうするかを相談し始める。

「そうか、それで俺達はまずどうするんだ?」

ユウタが見回りの事を聞かされてどうするかをマサシに尋ねるとマサシは腕を組んで答えた。

「まずこの辺りを調査しよう。俺とジゼルとネリネは南の市場の方を調査する。ユウタとシオンは後ろの軽装甲機動車の傭兵達と一緒に西の広場の方を調査してくれ」
「分かった」
「任せて」

マサシがユウタとシオンに西の調査を頼み、二人は返事をして頷く。

「コンタとレイナはもう1台の軽装甲機動車の傭兵達と東にある村の入口の方を頼む」
「OK」
「ああ・・・・」

東の方を任されたコンタとレイナも返事をして頷く。

「よし!じゃあ調査開始だ」
「マサシ達は大丈夫なの?三人だけで・・・・」

シオンが心配そうに言うと、マサシが小さく笑って言った。

「大丈夫だよ、心配するな」
「そうだよ、あたしと姉さんもいるから。だよね、姉さん?」
「ええ、私達は大丈夫よ」
「そう?なら大丈夫ね♪」

シオンはジゼルとネリネの顔を見て安心して笑った。そして神竜隊は装甲車を降りて各自調査に向かった。





東ではコンタとレイナが傭兵を四人連れて入口の辺りを調べていた。

「どう?何か見つかった?」
「いえ、これといって気になる物は何もありません」
「そうですか、それじゃあ引き続きこの辺りを調査してください」
「了解しました」

傭兵の一人がコンタに状況を報告して持ち場に戻っていく。すると、レイナがコンタに話しかけてきた。

「コンタ・・・・」
「何?」
「これを見てくれ」

レイナがコンタに自分の手を見せた。彼女に手には銃の薬莢(やっきょう)があった。

「薬莢?」
「ああ、大きさと形状からして口径は5.56mm、突撃銃の薬莢だ」
「うち(ライトシンフォニア)のG36のかな?」
「多分な。それに辺りを調べてみたが、薬莢はこの5.56mmのしかない。つまり・・・・」
「中隊の人達が一方的に撃っていたって事になるね」
「ああ、しかもこの薬莢は入口の近くに落ちていたんだ。つまり村の方から撃っているという事。もしヘルデストロイヤーの襲撃されたのなら、反対側に奴等の使っている銃の薬莢もあるはずだ・・・・」
「でも無い」
「そうだ、つまりヘルデストロイヤーの傭兵が襲撃した可能性は低いという事になる・・・・」
「それじゃあ、やっぱりサリム村の人達を襲った奴の仕業ってこのになるね」
「まだ確信はできないがな、だが可能性はある・・・・」

コンタとレイナが推理していると、一人の傭兵が走って二人の下にやって来た。

「スズキ中尉!月本少尉!」
「どうしたんですか?」
「ちょっとこっちに来てください!」
「「?」」

慌てている傭兵を見て二人は傭兵に案内されて入口から少しはなれた所にやって来た。すると、二人の目には村を囲んでいる柵の一部が壊されているのが目にはいった。

「これは・・・・」
「先ほどこの辺りを調査しているときに見つけました。しかもこれを見てください」

傭兵が地面を指差すと、壊れて柵の一部には小さいが血痕が付いていた。

「血痕だな・・・・」
「ハイ、恐れく、中隊の連中のものかと・・・・」
「コンタ・・・・」
「うん、この柵の壊れ方、人間の仕業じゃないね・・・・」

ガーリムトに着いたマサシ達が見たのは静まり返った町だった。そして入口を調査しているコンタとレイナが見つけた薬莢と血痕。これ等は一体何を表しているのだろうか?


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